WEB3業界動向

セキュリティ・トークン、投資商品からインフラへ─日本が描く次世代金融地図

鬼の猫ちゃん

鬼の猫ちゃん

2
0


大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)で初のセキュリティ・トークン(ST)商品が取引開始されてから、今年で3年を迎える。日本のST市場は、制度とインフラの両面で同時に進展し、発行・流通の規模と質をともに押し上げている。金融庁は暗号資産の規律体系を金融商品取引法(FIEA)中心に再編する検討を本格化し、二重規制の解消と投資家保護の強化を目指す。7月末に公表されたワーキンググループ資料では、市場の成長とイノベーションを促進しつつ、証券規制への一元化と監督・執行の強化を打ち出した。施行は1年以内とされ、制度改革は加速している。


発行額は累計1938億円超

規制動向をにらみ市場は一時的に様子見の局面だが、2024年7月時点の累計発行額は1938億円を突破した。これまで不動産や社債が中心だったが、取引銘柄の多様化や「単なる投資を超える価値提供」の必要性も議論されている。


北尾SBI会長「金利以外の価値を」

SBIホールディングスの北尾吉孝会長は8月22日に大阪で開かれたWebXで「市場は順調に拡大している」と強調。自社のODXに加え、ブラックロック系Securitize JapanやシンガポールのDigitFTなどとの連携で国内外の市場活性化を進めると述べた。北尾会長は「金利以外の付加価値を考える必要がある」と指摘。かつてカゴメが発行した無担保社債で、投資家に野菜ジュースを特典として提供した施策が好評を博した事例を紹介した。X(旧ツイッター)上では「カゴメ愛用者が投資家に転じた」との声も散見されたという。DigiFTについては「世界初のオンチェーン株式インデックスファンド」であり、東芝株ではステーブルコインによる出資や償還が可能と説明。スマートコントラクトにより仲介業者を介さずコスト削減を実現したと語った。日本での合弁会社設立も計画している。


光電融合技術で処理効率化

STの決済インフラとして、NTTが持つ「光電融合」技術にも言及。電子技術と光技術を融合し、データ処理と伝送効率を飛躍的に高める。NTTは2030年までに光通信・光コンピューティングを基盤とするネットワーク、データセンター、デバイスのエコシステムを構築し、電力消費を100分の1に、伝送容量を125倍にする構想を掲げる。NEC、富士通、ソニー、トヨタなども参画する国家戦略プロジェクトだ。


「日本版Web3金融インフラ」への試金石

日本のST市場は発行・流通の実証段階を終え、制度・技術・産業の三位一体で進化する競争局面に入った。金融庁の法制一元化は投資家保護を前提に流通市場の拡大を狙い、ODXはステーブルコインや実物資産のトークン化と組み合わせグローバル流動性を視野に入れる。光電融合やオンチェーンファンドといった試みは「日本版Web3金融インフラ」の実験場となりつつある。


日本はセキュリティ・トークンを単なる投資商品から実体経済・決済・データ基盤を結ぶ新たな金融パラダイムに定着させることができるのか。今後3年が試金石となりそうだ。

#Web3ステーブルコインデジタル円時代STsecurity token
鬼の猫ちゃん

鬼の猫ちゃん

このニュースをシェア

コメント

0件のコメント
コメントがありません。