ニュース

WEB3ガイド

新しい順
【後編】AI × Web3はどう使われているのか ― メリット・課題・現実的な位置づけ

WEB3ガイド【後編】AI × Web3はどう使われているのか ― メリット・課題・現実的な位置づけ

前編では、AIを取り入れているWeb3プロジェクトと、あえてAIを使っていないWeb3プロジェクトの例を見てきました。AIとWeb3が組み合わされることで、すべてが自動化され、より便利で賢い分散型社会が実現する、という期待が語られることもあります。しかし、現実のプロジェクトを一つひとつ見ていくと、AI × Web3は決して万能な組み合わせではなく、明確な利点と同時に構造的な難しさを抱えていることが分かります。 後編では、AI × Web3が実際にはどのような構造で使われているのかを整理し、そのメリットと課題、現時点での現実的な位置づけを確認していきます。 AIはどこで動いているのか ― AIは主にオフチェーンで補助的に使われている まず押さえておくべき重要な点として、AIがブロックチェーン上で直接動いているケースはほとんど存在しません。ブロックチェーンは、取引の検証や履歴の改ざん防止を目的とした仕組みであり、計算コストが非常に高く、処理速度も限られているため、大量の計算を必要とするAIの推論や学習処理をオンチェーンで行うことは現実的ではありません。そのため、現在のAI × Web3プロジェクトの多くでは、役割が明確に分けられています。AIはオフチェーン、つまり通常のサーバー環境や分散計算基盤で動作し、ブロックチェーンはルールの定義、報酬の分配、結果の記録といった役割を担います。 この仕組みを理解していないと、「AI × Web3」という言葉からAIが全てオンチェーンで自律的に動いているような印象を受けてしまいがちです。しかし実際には、ブロックチェーンの制約を前提とした、非常に現実的な設計が採られています。ここに、イメージと実態のズレが生まれやすい理由があります。 AIを使うWEB3プロジェクトのメリット ― WEB3における判断や分析の負担を軽減する役割 AIを取り入れることで、Web3は確かに新しい可能性を得ています。特に効果が期待されているのは、人が時間をかけて行ってきた判断や分析を補助する領域です。 例えばDAOの運営では、提案内容の整理や分類、過去の投票結果との比較、参加者の傾向分析など、運営側・参加者双方にとって負担の大きい作業が存在します。これらをAIが支援することで、意思決定のための情報整理が容易になり、参加のハードルを下げることが期待されています。 DeFi分野でも、市場データの分析や条件に応じた戦略の見直しといった作業は、人が常に対応するのが難しい領域です。AIを使うことで、こうした作業を補助し、リスク管理や運用の効率化を図ろうとする試みが進んでいます。 また、複雑になりがちなWeb3プロトコルにおいて、AIがインターフェースの役割を果たすことで、ユーザーが仕組みを理解しやすくなる可能性もあります。専門的な操作や設定を、自然言語による指示や簡易的な説明に置き換えることで、Web3の利用体験を改善しようとする動きです。注意する点は、これらの多くはAIによる完全自動化を目指しているわけではなく、実際には、人の判断を前提としたうえで、その一部をAIが補助する設計が主流です。 AI × WEB3が抱える共通の課題 ― 透明性と信頼性の確保が大きな課題 一方で、AI × Web3にはいくつか共通する課題があります。まず挙げられるのが、仕組みの分かりにくさです。AIの判断プロセスはブラックボックス化しやすく、「なぜその結論に至ったのか」を説明することが難しい場合があります。これは、透明性を重視するWeb3の思想と相性が悪い場面を生み出します。 特にDAOやDeFiのように、参加者の合意や信頼が重要な仕組みにおいて、判断の根拠が説明できないAIは、不安や不信感を招く可能性があります。誰がAIの判断に責任を持つのか、誤った判断が行われた場合にどう対応するのか、といった問題も簡単には解決できません。 次に、ユーザーが体感できる変化が少ないという点も課題です。裏側ではAIが動いていても、利用者から見ると従来のWeb3と大きな違いが感じられないケースも多く、価値が伝わりにくい状況が生まれています。さらに、AIとWeb3の両方を扱うため、開発や運用コストが高くなりやすい点も無視できません。技術的な難易度が高く、実験段階にとどまっているプロジェクトも多く見られます。 国際的・国内の動き Web3とAIの関係については、政策や規制面での議論が各国で進んでいます。日本の政治関係者がWeb3とAIに関する最新技術や規制のあり方について意見を交わす場面が報じられました。自由民主党の塩崎議員は2023年7月、米国のAI企業を訪問し、日本でもAI規制について体系的に議論を進めていると述べています。また、G7や国際会議の場でもAIとWeb3技術の利点やリスクについて共有が進んでいることが指摘されています。これらの動きは、政策面でも両技術が並行して検討されていることを示しています。 さらに、日本国内でもWeb3とAIをともに推進する姿勢が見られるとされ、AIの社会的活用に対する議論がWeb3分野と重なる部分があるという点も言及されています。こうした議論は、今後の技術開発や規制設計にも影響を与える可能性があります。 AI × WEB3は「なぜ使われているか」を見極める段階にある 現時点でのAI × Web3は、すぐに使いこなす技術というより、どのような場面で使われているのかを理解する段階にあります。プロジェクトを見る際には、「AIが使われているかどうか」ではなく、「なぜAIが必要なのか」「どの部分を補っているのか」を確認することが大事です。 AIがなくても成立する仕組みなのか、それともAIがあることで運用が現実的になっているのか。この違いを意識することで、AI × Web3を過度に期待したり、逆に過小評価したりすることを避けやすくなります。 AIとWeb3は、部分的で補助的な形での融合が始まっています。その現実的な位置づけを理解することが、AI × Web3を正しく捉えるための第一歩と言えるでしょう。 一方、日本でもWeb3やAIに関する政府・関係機関の取り組みが進んでいます。日本政府はAIを一時的な技術トレンドとしてではなく、今後の産業競争力や社会基盤を支える重要な技術として位置づけており、国のAI戦略においても社会全体への継続的かつ責任ある利活用を重視しています。 こうした方針のもと、産業界や研究機関と連携した取り組みが進められており、AIとデジタル技術をどのように制度や経済に組み込んでいくかが継続的に議論されています。 その流れの中で、Web3も単独の技術としてではなく、AIと並ぶ次世代のデジタル基盤の一つとして扱われる場面が増えつつあります。日本の主要企業や自治体においても、AIやWeb3を活用した実証実験や社会実装を検討する動きが報告されており、短期的な成果よりも、中長期的な活用を見据えた取り組みが意識されている点が特徴です。こうした動きからも、日本ではAIを中心としたデジタル技術を今後の社会に不可欠な要素として重視している姿勢がうかがえます。

センチメンタルな岩狸7日前
0
0
【前編】AIとWeb3はどこまで融合しているのか ― 実際のプロジェクトの事例から見える現状

WEB3ガイド【前編】AIとWeb3はどこまで融合しているのか ― 実際のプロジェクトの事例から見える現状

「AI × Web3」という言葉は、ここ1〜2年で急速に広まりました。 SNSやメディアでは、AIエージェント、分散型AI、Web3ネイティブAIといった表現が並び、次の大きなトレンドであるかのように語られています。 しかし、初心者の立場から見ると、「実際にどこでAIが使われているのか」 「従来のWeb3と何が違うのか」など、非常に分かりにくいものでもあります。 本記事では、AIとWeb3の関係を実在するプロジェクトの事例をもとに、現在どこまで融合が進んでいるのかを整理します。前編では、実際にAIを取り入れているWeb3プロジェクトと、あえてAIを使っていないWeb3プロジェクトの両方を紹介し、その違いを明らかにします。 なぜ今「AI × WEB3」が語られるのか このテーマが注目される背景には、生成AIの進化と、Web3が抱えてきた構造的な課題にあります。Web3は、信頼をコードで置き換える技術として発展してきました。仲介者を排しルールをスマートコントラクトで定義することで透明性や検閲耐性を実現してきた一方で、DAOの運営、DeFiにおけるリスク管理、複雑なプロトコルの利用など、実際の運用では多くの判断や管理を人が担う必要がありました。 仕組みは分散化されていても、使いこなすためには高い理解力と手間が求められるため、この人の負担をどう減らすかという課題に対して、AIが補助役として期待されるようになったのです。 実際にAIを取り入れているWEB3プロジェクト 現在、AIを取り入れているWeb3プロジェクトはいくつか存在しますが、共通して言えるのは、一般ユーザー向けの完成されたサービスというより、基盤技術に近い位置づけであるという点です。 > ① SingularityNET(AIマーケットプレイス型) SingularityNETは、AIモデルやAIサービスを分散型ネットワーク上で提供・共有することを目指すプロジェクトです。 ここではAIそのものが価値の中心にあり、開発者は自分のAIを公開し、利用に応じて報酬を得る仕組みになっています。ここでは、ブロックチェーンはAIの利用履歴や報酬分配といった経済圏の管理を担い、AIは実際に価値を生み出す主体として機能します。AIとWeb3の役割分担が比較的明確な例と言えるでしょう。 > ② Ocean Protocol(データ共有型) Ocean Protocolは、AIの学習に必要なデータを安全に共有・取引するための代表的データマーケットプレイスプロジェクトです。 AIモデルはデータがなければ性能を発揮できませんが、データを安全に流通させるインフラは伝統的に整っていませんでした。Ocean Protocolでは、データをトークン化して取引可能にすることで、データ提供者が報酬を得られる仕組みを構築しています。 データの所有権を保ちながらAI学習に利用できる点が評価され、AIとWeb3が関わるプロジェクトの中で代表的なデータレイヤーとして取り上げられています。 > ③ Bittensor(分散型機械学習ネットワーク型) Bittensorは、分散型の機械学習ネットワークを構築するプロジェクトです。参加者はAIモデルや計算リソースを提供し、その貢献度に応じて報酬を受け取ります。 従来の中央集権型AIは大企業が計算リソースとデータを独占していましたが、Bittensorはこのモデルを破り、AIの学習過程そのものを分散型インフラとして構築しようとしています。AIモデルの共有・評価・進化がネットワーク全体で行われる点が、新しいAI×Web3の象徴的な例です。 > ④ Render Network など(分散AIインフラ) Render Networkは、分散型GPUレンダリングとコンピューティングを提供するプロジェクトです。AI生成コンテンツ(画像・動画・3Dレンダリング)は大量のGPUリソースを必要としますが、中央集権クラウドではコストと独占性が課題です。 Render Networkは、世界中の未使用GPUを集めて分散コンピューティング基盤を提供し、AI処理や3Dレンダリングの分散実行を可能にします。 > ⑤ The Graph(Web3索引・AI連携インフラ) The Graphは、ブロックチェーンデータのインデックスおよびクエリプロトコルで、Web3のデータ層として広く使われています。このプロトコル自体はAI専用ではありませんが、多くのAIエージェントやAI型アプリケーションがブロックチェーンデータをAIで分析・活用する際の基盤インフラとして機能します。 実際、複数のWeb3プロジェクトやAI型サービスがThe Graphを基盤として利用しているため、AI × Web3の重要なインフラレイヤーの代表例とされています。 AIを前提にしていないWEB3プロジェクト 一方で、AIを使わずに成立しているWeb3プロジェクトも数多く存在します。 > Unstoppable Domains Unstoppable Domainsは、ブロックチェーン上でデジタルIDやドメインを提供するサービスで、AIは使われていません。焦点はあくまで「所有権」や「検閲耐性」といったWeb3の基本価値にあります。 また、多くの従来型DeFiプロトコルは、あらかじめ定義されたルールに基づいて動作します。 金利計算や清算条件はスマートコントラクトで固定されており、AIによる判断は行われません。 NFTマーケットプレイスも同様で、取引と所有記録の管理が主目的です。価値判断は人間にゆだねられています。これらの例から分かるのは、AIはWeb3の必須要素ではないという事実です。 融合は始まっているが、限定的である 本編で見てきたように、AIとWeb3はすでに接点を持ち始めています。ただしそれは、すべてのWeb3に共通する動きではなく、特定の課題を補うための限定的な融合です。 AIはWeb3を置き換える存在ではなく、あくまで補助役として使われています。では、この組み合わせにはどんなメリットがあり、なぜ難しいのか。 後編では、AI × Web3の仕組みをもう一段掘り下げ、メリットと課題、そして初心者がどう向き合うべきかを整理します。

センチメンタルな岩狸10日前
0
0
海外Web3ゲームは「競技化」へ向かうのか ― eスポーツ・大会型タイトルの最新動向を読み解く

WEB3ガイド海外Web3ゲームは「競技化」へ向かうのか ― eスポーツ・大会型タイトルの最新動向を読み解く

近年、ブロックチェーンゲームを巡る海外の動向に変化が見られます。かつて主流だった「Play-to-Earn(遊んで稼ぐ)」モデルから距離を取り、競技性や観戦体験を重視した「大会型・eスポーツ型」の取り組みが目立ち始めています。 本記事では、海外で進むWeb3ゲームの競技化に関する最新動向を整理し、その背景や、日本市場にとっての示唆を読み解きます。 > 海外Web3ゲームに広がる「大会型」への動き 象徴的な事例の一つが、WEMADEが展開するWeb3ゲーム「Legend of YMIR」です。同社は本作において、世界大会「YMIR Cup World Championship」の開催を発表しました。オンラインとオフラインを組み合わせた形式で、周辺デバイスメーカーや配信プラットフォームとの連携も想定された設計となっています。 この取り組みは、Web3ゲームを従来型eスポーツと同じ土俵で成立させようとする試みと捉えることができます。競技ルール、観戦、配信といった要素をあらかじめ組み込み、大会体験全体を視野に入れた設計がなされている点が特徴です。 同様の動きは他タイトルにも見られます。Immutable基盤で展開される「Illuvium」では、賞金付きの公式トーナメントが実施され、プレイ成績に基づく競争が前面に押し出されています。トークン配布よりも、競技結果やゲーム理解度そのものが価値を持つ構造が採用されています。 さらに、Thirdverseが開発する「XOCIETY」では、今後のロードマップの一つとして、eスポーツ大会のようなオフラインイベントの開催が言及されており、プロゲーマーとユーザーが交流する場の創出が構想されています。 また、Polkadotが関与するeスポーツ大会では、Web3ゲームを競技タイトルとする形に限定せず、既存のeスポーツタイトルを活用しながら、運営やコミュニティ設計、報酬設計にブロックチェーン技術を取り入れるケースも登場しています。ここでは「Web3=ゲーム内容」ではなく、大会基盤や参加体験を支える技術として活用されている点が特徴的です。 これらの事例から、海外ではWeb3ゲームを巡る競技・大会の形が一様ではなく、大会形式、賞金設計、配信手法が多様化していることがうかがえます。 > Web3ゲームはeスポーツ化へ進化しているのか こうした動きの背景には、Play-to-Earnモデルが抱えてきた課題があります。トークン価格への依存、短期的な投機行動、プレイ体験の希薄化といった問題は、多くのWeb3ゲームが直面してきました。 その反省から、近年の海外タイトルでは「稼げるかどうか」よりも、継続的に遊ばれる設計や、観戦に耐える競技性が重視されつつあります。大会やリーグを通じて、プレイヤー同士の技量差が可視化され、視聴者が試合として楽しめる構造を作ろうとする動きです。 特に注目されるのは、公式大会やリーグ制をあらかじめ前提とした設計が増えている点です。単発イベントではなく、シーズン制やランキング、地域予選など、既存eスポーツに近い枠組みが採用され始めています。また、オンラインとオフラインを組み合わせたハイブリッド開催も一般化しつつあります。 とはいえ、これらの動きがそのまま「Web3ゲーム=eスポーツ化」と断定できる段階ではありません。競技性を高める一方で、一般プレイヤーとの距離が広がる可能性や運営コストの増大といった課題も残されています。ただし、海外ではWeb3ゲームの方向性を模索する中で、「競技化」が有力な選択肢の一つとして浮上しつつあります。 > 日本市場にとっての参考点 日本市場に目を向けると、eスポーツ自体はすでに一定の成熟段階にあります。国内リーグや大型大会、配信文化も定着し、競技ゲームを「観る」体験は広く受け入れられています。この環境を踏まえると、海外Web3ゲームの競技化は日本にとっても示唆に富む動きといえるでしょう。たとえば、以下のような取り組みが考えられます。 1. 大会視聴者に対するNFT配布 2. 観戦実績に応じたデジタル特典 3. トークンを用いたファン参加型施策 こうした取り組みを通じて、eスポーツ文化とWeb3要素を組み合わせる余地があると考えられます。 一方で、日本では投機色の強い仕組みに対する慎重な姿勢も根強く、単純なトークン報酬モデルは受け入れられにくい側面があります。その意味でも、海外で進む「競技性・視聴体験重視」の流れは、日本市場との親和性が比較的高い方向性と見ることもできます。 WEB3ゲームは「稼ぐ」から「競う・観る」へ 海外のWeb3ゲーム業界では現在、明確な正解が定まっているわけではありません。しかし、Play-to-Earnに偏っていた時代から競技性や大会体験を軸とした新たな模索が始まっていることは事実です。 これらの動きが一過性に終わるのか、あるいはWeb3ゲームの一つの定番モデルとして定着するのかは、今後の運営成果やユーザーの受け止め方に左右されるでしょう。日本市場にとっても海外事例を踏まえつつどの要素が適合しうるのかを見極めていく段階に入っているといえそうです。

センチメンタルな岩狸19日前
0
0
ブロックチェーンゲームではどのようにお金が動いているのか ― 初心者のためのゲーム経済の基本構造

WEB3ガイドブロックチェーンゲームではどのようにお金が動いているのか ― 初心者のためのゲーム経済の基本構造

ブロックチェーンゲームと聞くと、遊んで稼げる、NFTで儲かるといったイメージを思い浮かべる人は少なくありません。一方で、仕組みがよく分からない、なんとなく危なそうと感じて、距離を置いている人も多いのではないでしょうか。 実際、ブロックチェーンゲームを正しく理解するうえで重要なのは、稼げるかどうかよりも先に、ゲームの中でお金や価値がどのように生まれ、どこへ流れていくのかを知ることです。本記事では、ブロックチェーンゲームの経済構造について整理していきます。 > ブロックチェーンゲームに登場する「価値」の正体 ブロックチェーンゲームの経済を理解するためには、まずゲーム内に存在する価値の種類を押さえる必要があります。多くのタイトルでは、主にNFT、ゲーム内トークン、そして法定通貨という三つの要素が組み合わさって経済が成り立っています。 NFTは、キャラクターや装備、土地といったゲーム内アイテムを、唯一性を持つデジタル資産として表現したものです。従来のゲームでは、こうしたアイテムは運営会社のサーバー上で管理されていましたが、ブロックチェーンゲームでは、ユーザー自身のウォレットに紐づく形で保有されます。この違いによって、NFTはゲーム外のマーケットプレイスでも売買できるようになります。 一方、ゲーム内トークンは、プレイ報酬やゲーム内での消費を目的として設計されることが多い存在です。アイテムの生成や強化、NFTの購入、特定機能の解放など、ゲームを進行させるために使われます。トークンによっては、暗号資産取引所で売買できるものもありますが、すべてのトークンが換金を前提としているわけではありません。 これらに加えて、ゲームの外側には円やドルといった法定通貨があります。多くの場合、ユーザーは最初に法定通貨でNFTやゲームへの参加権を購入し、そこからブロックチェーンゲームの経済圏に入っていきます。この入口があることで、ゲーム内の価値は現実世界の経済ともつながっています。 > 運営会社はどこで収益を得ているのか ― NFT販売と取引手数料が中心 ブロックチェーンゲームの仕組みを理解するうえで、運営会社がどのように収益を得ているのかは重要なポイントです。一般的に、運営会社の収益源は複数に分散されています。代表的なのは、初期NFTの販売や、マーケットプレイスでの取引手数料です。ユーザー同士がNFTを売買する際、その一部が手数料として運営に還元される仕組みは、多くのタイトルで採用されています。 また、ゲーム内でアイテムを生成したり、キャラクターを強化したりする際に必要なコストも、運営の収益につながる場合があります。重要なのは、運営がユーザーの損失そのものから直接利益を得る構造ではないという点です。ユーザー間の取引やゲーム内活動が活発になるほど、結果として運営の収益も安定する設計が意識されています。 この点は、従来のソーシャルゲームにおけるガチャ課金モデルとは大きく異なります。ブロックチェーンゲームでは、ユーザー同士の経済活動が前提となっており、運営はその「場」を提供する役割を担っていると言えます。 > ユーザーのお金はどこへ流れていくのか ― 運営だけでなくユーザー同士の取引にも 初心者が特に混乱しやすいのが、「自分が使ったお金は最終的に誰のものになるのか」という点です。NFTを購入した場合、その代金は一次販売であれば運営に、二次流通であれば他のユーザーに支払われます。つまり、従来のゲームのように、課金したお金がすべて運営に吸い上げられるわけではありません。 また、ゲーム内トークンは使われることで消費されたり、一部がバーン(焼却)されたりします。これにより、トークンの総量が調整され、ゲーム内経済のバランスが保つことが意図されています。マーケットプレイスで発生する手数料は、運営やエコシステムの維持費として使われることが一般的です。 このように、ブロックチェーンゲームでは、お金や価値が運営とユーザー、そしてユーザー同士の間を循環する構造が意識されています。これが「ユーザー参加型の経済圏」と呼ばれる理由です。 > なぜ破綻するゲームが生まれてしまうのか ― トークン供給に偏った経済設計がゲーム崩壊を招く 過去には、短期間で注目を集めたものの、急速に衰退してしまったブロックチェーンゲームも存在します。その多くに共通していたのは、新規参加者からの資金流入に過度に依存した経済設計でした。報酬トークンの供給量が多すぎたり、ゲーム内での使い道が乏しかったりすると、価値は維持できません。結果として、トークン価格の下落が進み、ユーザーが離れてしまいます。 これらのケースでは、ゲームそのものよりも金融的な側面が前面に出ており、「遊び続けたい」と思える体験が不足していました。現在のブロックチェーンゲーム業界では、こうした反省を踏まえ、トークンの役割を抑え、ゲーム性や継続的な体験価値を重視する設計へとシフトが進んでいます。 > 「稼げるか」ではなく「どう循環しているか」を見る ブロックチェーンゲームを理解し、評価するうえで大切なのは、「どれくらい稼げるのか」という短期的な視点ではありません。誰が価値を生み出し、その価値がどのように使われ、どこへ流れていくのか。この循環が自然で持続的かどうかを見極めることが、健全なゲームかどうかを判断する手がかりになります。 ブロックチェーンゲームは、単なる投機の場ではなく、ゲーム体験の中に価値の流れを組み込もうとする試みです。その仕組みを理解することで、過度な期待や不安から一歩距離を置き、より冷静にこの分野と向き合えるようになるでしょう。

センチメンタルな岩狸22日前
0
0
申告漏れ156億円から考える、暗号資産の税金と正しい付き合い方

WEB3ガイド申告漏れ156億円から考える、暗号資産の税金と正しい付き合い方

申告漏れ156億円が示す、暗号資産税務の現実 国税庁は、令和6事務年度に実施した税務調査の結果をまとめたレポートを公表し、暗号資産取引に関する申告漏れ所得が総額156億円に上ったことを明らかにしました。個人の暗号資産取引を中心に調査が行われ、追徴税額は約46億円に達したとされています。この数字は、暗号資産を使っている多くの人が、意図せず税務上のリスクを抱えている可能性を示しています。 > 多くの申告漏れは「知らなかった」ことから始まる とはいえ、申告漏れの多くは悪意によるものではありません。暗号資産の税制は分かりにくく、株や投資信託のように自動で計算・申告してくれる仕組みも整っていないため、「気づいたら申告が必要だった」というケースが少なくないのです。だからこそ、このニュースをきっかけに、あらためて暗号資産と税金の基本を押さえておくことが重要になります。 > 暗号資産の利益は原則「雑所得として課税される」 まず知っておきたいのは、日本では暗号資産で得た利益が原則として「雑所得」に分類されるという点です。暗号資産を円に換えたときだけが課税対象だと思われがちですが、実際には暗号資産同士を交換した場合や、ステーキングやエアドロップで報酬を受け取った場合も、条件次第で課税されます。 > 申告が必要か、まずはチェックしてみよう 自分は申告が必要なのか分からないという人は、まずは次のチェックリストで確認してみてください。ひとつでも当てはまる場合、課税対象になる可能性があります。 ✔暗号資産を日本円に換えて利益が出た ✔暗号資産同士(例:ETH → USDC など)を交換した ✔DeFiでスワップ・流動性提供・利回り運用を行った ✔ステーキングやレンディングで報酬を受け取った ✔エアドロップでトークンを受け取った ✔NFTの売買で利益が出た ✔複数の取引所やウォレットを使って取引している 少額だから、もしくは円に戻していないから大丈夫と思っていても、取引内容によっては申告が必要になるケースがあります。 > チェックに当てはまったら、次にやること ― 1年分の取引を正確に管理する チェック項目に心当たりがある場合は、次のステップを意識してみてください。 ・過去1年分の取引履歴を、取引所・ウォレットごとに確認する ・いつ、いくらで取得し、どの取引で利益が出たのかを整理する ・不安があれば、計算ツールや税理士など専門家の力を借りる 実際の申告で基本となるのは、1年間の取引をすべて振り返り、利益を計算することです。複数の取引所やウォレットを使っている場合でも、最終的にはすべて合算して考える必要があります。この作業は手間がかかりますが、申告の土台となる非常に重要な工程です。 > 計算後は確定申告へ ― ツールや専門家を活用 利益が計算できたら、その金額を確定申告書に雑所得として記載します。現在は、e-Taxを利用すれば自宅からオンラインで申告を行うことも可能です。また、国税庁では暗号資産の税務上の取扱いや損益計算の考え方をまとめた資料を公開しており、申告内容を確認する際の参考になります。 暗号資産の取引量が多い場合や、複数の取引所・ウォレットを利用している場合は、計算や整理が複雑になりがちです。そのような場合は、暗号資産対応の計算ツールを活用したり、税理士など専門家に相談するのも一つの方法でしょう。正確な申告を心がけることが、後々のトラブルを防ぐことにもつながります。 > 申告しなかった場合は? ― ペナルティのリスクを知っておこう もし申告をしなかった場合、どうなるのかも気になるところです。国税庁のレポートが示すように、申告漏れが発覚すると、後から税金を支払うだけでは済みません。本来の税額に加えて、無申告加算税や延滞税が課される可能性があります。さらに、意図的に隠していたと判断されれば、重加算税が適用され、負担は一気に大きくなります。「知らなかった」では済まされないのが、税金の世界の現実です。 正しく申告することが、安心して使い続けるための第一歩 最近では、税務当局も暗号資産取引の把握を強化しています。取引所から提供されるデータや、取引履歴の分析を通じて、個人の取引状況を把握できる環境が整いつつあります。以前は見つかりにくかった申告漏れも、今後は指摘される可能性が高まっていくと考えた方がよいでしょう。 なお、最近では2028年を目安に暗号資産を分離課税を導入するという報道も出ています。もし実現すれば、暗号資産の申告方法や税金の扱いは、今とは大きく変わる可能性があります。それまでは、現行の税制を正しく理解したうえで、現行のルールに従って暗号資産を楽しむことが大切だと言えるでしょう。

センチメンタルな岩狸1ヶ月前
0
0
ブロックチェーンゲームの誕生と進化【後編】 ― 黎明期から現在地までを解説

WEB3ガイドブロックチェーンゲームの誕生と進化【後編】 ― 黎明期から現在地までを解説

NFTブームやPlay-to-Earnの流行を経て、ブロックチェーンゲームはひとつの転換点を迎えています。かつては「稼げるゲーム」というイメージが強かったこの分野ですが、現在は少しずつ違った方向へと進み始めています。では、いま業界はどこへ向かっているのでしょうか。 前編では、ブロックチェーンゲームが生まれた背景や、世界的に注目されるようになった理由、日本市場ならではの特徴について整理しました。後編となる本記事では、ブロックチェーンゲームがこれまでどのように発展してきたのかを時代ごとに整理しながら、その変化と現在の立ち位置を見ていきます。 黎明期 ― CRYPTOKITTIESとNFTの衝撃(2017年) ブロックチェーンゲームの歴史は、2017年に登場したイーサリアムベースのゲーム「CryptoKitties」から本格的に始まったと言われています。CryptoKittiesは、猫のキャラクター一体一体がNFTとして発行され、繁殖・収集・売買が可能という、当時としては非常に革新的な仕組みを採用していました。 このゲームは短期間で爆発的な人気を獲得し、イーサリアムネットワークが混雑してガス代が高騰、取引遅延が頻発するほどの社会現象となりました。この出来事は一時期のブームに留まらず、「NFTはデジタル資産として市場価値を持ち得る」という事実を世界に示した点で非常に重要でした。 CryptoKittiesの成功により、デジタルアイテムに唯一性と所有権を付与できるという概念が一気に広まり、その後のブロックチェーンゲームやNFT市場の基盤が築かれていきました。 PLAY-TO-EARN(P2E)ブームの到来(2020年前後) 2020年前後になると、ブロックチェーンゲームは新たなフェーズへと進みます。それが「Play-to-Earn(遊んで稼ぐ)」という考え方です。中でもAxie Infinityは、ゲーム内で獲得したトークンやNFTを現実の通貨に換金できる仕組みによって世界的な注目を集めました。 特にフィリピンなどの新興国では、Axie Infinityによる収益が平均月収を上回るケースもあり、「ゲームが収入源になる」という現象が現実のものとなりました。こうした動きは、エンタメとしてのゲームを超え、ブロックチェーンゲームが社会的・経済的インフラとして機能し得ることを示しました。 このP2Eブームを支えた背景には、NFT標準規格(ERC-721・ERC-1155)の普及、OpenSeaに代表されるマーケットプレイスの成長、DeFiの拡大によるオンチェーン経済の成熟など、複数の技術的進展が重なっていました。 一方で、トークン価格の上昇に依存した経済設計や、新規参加者の流入を前提とするモデルには限界もあり、次第に持続性への課題が意識されるようになっていきました。 転換期 ― 投機からゲーム性重視へ(2022年以降) P2Eブームが落ち着いた後、ブロックチェーンゲーム業界は大きな見直しのフェーズに入ります。「稼げるかどうか」よりも、「長く遊ばれるかどうか」が重視されるようになり、ゲーム性やUXを中心に再設計する動きが加速しました。 この時期から、NFTやトークンを前面に押し出さない「Web2.5」的な設計が増え、ウォレット作成やガス代といったWeb3特有のハードルをユーザーに意識させない工夫が進んでいます。また、処理速度やコストの問題を解決するため、レイヤー2やゲーム専用チェーンの活用も一般的になりました。 こうした流れの中で、Square Enix、Ubisoft、Nexonといった大手ゲーム企業が本格的にWeb3領域へ参入し始めたことも、大きな転換点と言えるでしょう。ブロックチェーンゲームは、実験的なプロジェクトの段階を越え、商業的に成立する産業へと段階的に移行しつつあります。 現在地と今後の展望 ― ゲーム産業の新しい形へ 現在のブロックチェーンゲームは、以前のような投機色の強い仕組みからは方向転換し、「所有」 「参加」 「貢献」をキーワードにした新しいゲーム体験が模索されるようになっています。NFTは金融商品ではなく、ゲーム内で使われ、育てられ、他者と共有される体験価値として再定義されつつあります。 こうした流れを象徴するタイトルとして、Suiネットワークを基盤に、プレイ体験を重視した設計を進めている「XOCIETY」や、NFTカードを軸に戦略性の高い対戦体験を提供する「Parallel」、既存の人気IPを活用しながらWeb3要素を段階的に取り入れている「MapleStory Universe」などが挙げられます。いずれもプレイヤーがゲームの世界やコミュニティに関わり続けることを前提とした設計が特徴です。今後は、ガスレス化やアカウント抽象化によるUX改善、コミュニティ主導の運営モデル、そして強力なIPを活用した一般ユーザー層への展開などがブロックチェーンゲームの成長における重要なテーマになっていくでしょう。 ブロックチェーンゲームはもはや一部の先進的ユーザー向けの特殊なジャンルではありません。従来のゲーム産業と融合しながら、「デジタル資産を持ち、世界に参加する」という新しい遊び方を提示する存在として、着実に定着しつつあります。一方で、ウォレットやトークン、NFTといった概念は、現時点でも一般的なゲームユーザーにとって分かりにくい部分が多いのも事実です。だからこそ今後は、技術を意識せずに普通のゲームとして楽しめる体験をいかに提供できるかが、より重要になっていくでしょう。 WEB3-ONでも、こうした課題意識をもとに、ブロックチェーンゲームをできるだけ身近に、そして気軽に楽しめるような情報発信やコミュニティ運営を行っています。ブロックチェーンゲームを誰もが自然に触れられるよう、これからもその変化を追い続けていく予定です。

センチメンタルな岩狸1ヶ月前
0
0
ブロックチェーンゲームの誕生と進化 【前編】 ― 世界の潮流から日本市場までを読み解く

WEB3ガイドブロックチェーンゲームの誕生と進化 【前編】 ― 世界の潮流から日本市場までを読み解く

ブロックチェーンゲームはなぜ注目されるのか?世界と日本の動向をわかりやすく解説 ブロックチェーンは暗号資産や分散型金融(DeFi)といった金融領域だけでなく、ゲームを中心としたエンターテインメント領域にも応用が広がっています。その中でも「ブロックチェーンゲーム」は、Web3生態系における代表的なユースケースとして早くから注目を集め、ユーザー参加型のデジタル経済圏を形成する重要な分野として位置付けられるようになりました。 本記事の前編では、世界的視点で見るブロックチェーンゲームの誕生背景や注目される理由、そして日本ではどのように受け入れられたのかをわかりやすく解説します。 従来ゲームの課題から見る、ブロックチェーンゲームが生まれた背景と注目される理由(世界的視点) ブロックチェーンゲームが生まれた背景には、大きく次のような世界的潮流があります。 > デジタル資産を「本当に所有する」ための技術が登場 ブロックチェーンゲームが最初に注目された大きな理由は、ゲーム内デジタル資産をプレイヤー自身が所有できるようになった点です。従来のゲームでは、アイテムはゲーム会社のサーバー上に管理されているため、アカウント停止やサービス終了によって失われる危険性がありました。 NFT(非代替性トークン)の普及により、この問題は大きく変化しました。アイテムやキャラクターなどの資産を、プレイヤーのウォレットに紐づいた唯一のデジタル資産として保有できるようになり、次のような新しい体験が可能になっています。 1. ゲーム内外での売買(二次流通) 2. 外部マーケットでの資産取引 3. 他のゲームやメタバースへの持ち込み このように、デジタル資産は「購入 → 所有 → 取引 → 移転」が技術的に保証された「オープンな資産」へと進化し、ゲーム会社の都合に左右されない新しい所有権モデルが確立されました。 > プレイヤー主導の経済圏形成できるようになったため ブロックチェーンは資産や取引履歴を透明に記録する仕組みを持つため、ユーザー同士がアイテムを売買したり、スキンやキャラクターを制作して販売したり、土地を貸し出すなどの経済活動を公式に行えるようになりました。さらに、独自トークンの導入により、プレイヤーが経済形成や運営に参加するモデルが生まれました。例えば、プレイヤーはゲームの成長に貢献した対価としてトークン報酬を受け取ったり、ガバナンス投票を通じて運営方針の決定に関与したりできます。また、コミュニティが主導するDAO的な運営体制が構築されるケースも増えています。 これにより、企業が一方的に設計した経済圏ではなく、ユーザー自身がゲーム経済を形づくるというWeb3的な世界観が実現しました。 > ゲームの枠を越えて資産を活用できる世界の誕生 ブロックチェーン上で発行されたNFTやゲーム資産は、単一のゲームに閉じません。他ゲームへの持ち込み、DeFiの担保利用、コミュニティによる二次創作ゲームでの使用など、資産がゲームを跨いで使われる「オープンな世界」が構築されています。さらに、ゲーム内で獲得したトークンが取引所へ上場し、NFTがグローバルマーケットで売買されるなど、ゲーム資産は投資対象としても注目されるようになりました。これにより、ゲーム自体が独立した経済圏として成立するという世界的なトレンドが進んでいます。 > コミュニティ主導のゲーム開発を実現したかったため 近年のオンチェーンゲームは、ゲームのルールや状態変化そのものをブロックチェーン上で管理し、誰もがゲームに直接関与できる仕組みが実験されています。例えば、完全オンチェーンゲームの代表例であるDark Forestでは、外部開発者やプレイヤー自身がゲームにプラグインを追加したり、新要素を実装したりすることが可能です。 これは「ゲームのオープンソース化」とも言える文化を生み出し、ブロックチェーンならではの新しいゲーム開発スタイルを確立しつつあります。 日本におけるブロックチェーンゲームの発展 日本においてもブロックチェーンゲームは徐々に広がり、早い段階から注目を集めてきました。特に、日本独自のゲーム文化がブロックチェーンゲームと非常に相性が良いとされています。一方で、国内には特有の課題も存在しており、発展には慎重なステップが求められています。 > 日本がブロックチェーンゲームに注目した理由 ― コレクション文化やIP活用と相性がよい まず、日本ではキャラクター収集やコレクション文化が強く、NFTによるデジタル所有権との親和性が高い点が挙げられます。また、ガチャ文化が長年受け入れられていることから、ランダム性や希少性を伴うNFTへの抵抗感が比較的少ないことも特徴です。 さらに、日本はアニメ・ゲームIPが豊富で、既存IPを活かしたNFT展開が行いやすい土壌があります。同人や二次創作といったユーザー参加型文化が定着していることも、ユーザー主導の経済圏と相性が良く、これらの要素が重なり、日本市場ではブロックチェーンゲームへの関心が早期から高まりました。 > 日本固有の課題 ― 法規制と税制が参入障壁となっている 一方で、日本にはブロックチェーンゲームの発展を難しくする独自の課題も存在します。代表的なのが、資金決済法による厳格なトークン運用のルールで、企業が独自トークンを扱いづらい環境にある点です。加えて、日本の暗号資産税制は含み益に対して課税される仕組みがあり、ユーザー・事業者双方にとって負担が大きいことが課題となっています。 また、NFTやPlay-to-Earnモデルに対する社会的な理解がまだ十分ではなく、「投機的だ」という印象を持たれるケースも少なくありません。これらを踏まえ、日本のブロックチェーンゲームはトークンを前面に押し出す形よりも、ユーザー体験を損なわない設計を優先する傾向にあります。 > 法整備と大手企業の参入による加速 ― 政策改善と大手の動きが市場を押し上げている 2023年以降、日本では政府および大手企業の動きが活発化し、ブロックチェーンゲーム市場の前進が加速しています。自民党のWeb3プロジェクトチーム(Web3PT)が政策改善に取り組み、暗号資産税制の見直しが議論されるなど、制度面での環境整備が進んでいます。企業面では、KONAMI、スクウェア・エニックス、セガといった大手ゲーム会社がWeb3領域に参入し、実際にプロジェクトを展開し始めました。 さらに、Web2とWeb3の中間的な「Web2.5」モデルの作品が増え、一般ユーザーにも自然に受け入れられる土壌が整いつつあります。これらの動きにより、日本のブロックチェーンゲーム市場は慎重ながらも着実に前進している段階にあるといえます。 ブロックチェーンゲームは、デジタル資産の所有やユーザー参加型の経済圏など、従来のゲームにはなかった価値をもたらし、Web3領域の代表的なユースケースとして発展してきています。 日本でも文化的な相性の良さから早期に注目を集めましたが、規制や税制といった国内特有の要因により、世界とは少し異なるペースで発展してきた側面はありますが、近年の法整備の動きや大手企業の参入によって、国内市場はこれまで以上に前向きな成長段階へ移行しつつあると考えられます。 こうした背景を踏まえると、ブロックチェーンゲームは「投機」ではなく「ゲーム体験を拡張する技術」として再評価されていく流れが強まっていくでしょう。 後編では、このような発展がどのような歴史的プロセスを経て進んできたのか、そして今後どのような未来へ向かうのかを年度別により詳しく掘り下げていきます。

センチメンタルな岩狸1ヶ月前
1
0
Web3トークン完全ガイド ― ユーティリティと証券の違いや規制・企業の活用理由を総まとめ

WEB3ガイドWeb3トークン完全ガイド ― ユーティリティと証券の違いや規制・企業の活用理由を総まとめ

Web3の領域では、多くの企業やプロジェクトが「トークン」を活用しています。しかし、一口にトークンといっても用途や法的な扱いは大きく異なり、初心者にとっては少し分かりにくい部分もあります。この記事では、トークンの基本と、よく議論される「ユーティリティトークン」と「証券型トークン」の違い、そして企業がトークンを発行する理由、規制の背景を分かりやすく整理します。 トークンとは?― ブロックチェーン上の「価値や権利」を表すデジタル単位 トークンとは、ブロックチェーン上で発行・管理されるデジタル資産やデジタル権利の総称です。ポイントのようにサービス利用に使えるものから、コミュニティの参加権、ネットワーク運営のための権利、さらには株式に近い性質を持つものまで幅広く存在します。 共通するのは、「インターネット上で価値や権利をやり取りするためのデジタルな単位」であることです。Web3の多くの仕組みは、このトークンの流通によって成り立っています。 ユーティリティトークンと証券型トークンの違い ― 利用目的か投資目的かがポイント トークンを理解するうえで最も重要なのが、「ユーティリティ」と「証券」の違いです。 ユーティリティトークンは、サービス内での利用を目的に発行されます。ゲーム内でアイテム購入に使えたり、手数料の割引に使えたり、一部のプロジェクトではガバナンス投票の参加権として機能する場合もあります。例えばEthereum(ETH)はネットワーク利用料(ガス代)として使われる代表的なユーティリティトークンです。主な役割は「サービスを便利に使うための道具」です。 一方、証券型トークン(セキュリティトークン)は、投資性を持つトークンです。株式や債券と同じように、利益還元や権利を提供する設計になっている場合、金融商品として扱われ、国ごとの証券規制の対象になります。例えば、不動産収益を保有者に分配するタイプの不動産セキュリティトークンは、家賃収益や売却益の一部を受け取れる設計になっており、明確に投資目的の金融商品として扱われます。形式がデジタルであっても、実質が「投資のための権利」であれば証券とみなされます。 両者の境界は「そのトークンを買う人の目的」と「運営側の設計意図」によって大きく左右されます。 なぜ企業はトークンを発行するのか?― 資金調達・利用促進・経済圏形成のため 企業がトークンを発行する理由は複数あります。まず、資金調達の手段としての利用です。従来の株式発行より柔軟に資金を集められることや、トークン販売を通じてユーザーコミュニティを形成しやすい点が重視されています。また、トークンの価値がサービスの成長と連動する設計にすると、ユーザーが「応援しながら参加する」動機を持つようになります。 次に、利用促進のためのインセンティブとしても機能します。トークン所有者に特典を付与したり、投票権や優先利用権を与えることで、プロダクトのエコシステムを活発化させる仕組みです。 さらに、国境を越えた経済圏を構築できる点も大きなメリットです。ブロックチェーン上で流通するトークンは、国や通貨の壁を越えて共通の技術基盤で取引できるため、グローバル展開の重要な基盤になります。 なぜ規制されるのか?― 投資性とリスクを見極めるため トークンが規制される背景には、「投資商品として悪用されるリスク」があります。特に、利益還元を期待させるようなトークン販売は、明確に証券に分類される可能性が高く、適切な開示や投資家保護の仕組みが求められます。過去には、プロジェクト側の説明が不十分なままトークンを販売し、開発が進まず価値が下落した事例もありました。このような事例を防ぐため、各国の規制当局はトークンの分類や販売方法を厳密にチェックする流れになっています。 ユーティリティトークンとして設計していたとしても、実質が投資性を帯びている場合は証券判定を受けることがあり、企業は慎重な設計と説明責任が求められます。 トークンの理解はWEB3の入口 トークンは単に価格が動く「投資対象」というだけではなく、Web3のサービス運営を支える重要な仕組みの一つです。ユーティリティとして機能するもの、資金調達や権利のデジタル化に使われるものなど、その役割は多岐にわたります。 トークンの性質を正しく理解することは、Web3のプロダクトを安全かつ主体的に使うための第一歩です。これからWeb3に触れていく人にとって、最初に押さえておきたい重要なテーマだといえるでしょう。

センチメンタルな岩狸1ヶ月前
0
0
Upbit流出事件が突きつけた取引所セキュリティの現実と、コールドウォレットの重要性

WEB3ガイドUpbit流出事件が突きつけた取引所セキュリティの現実と、コールドウォレットの重要性

47億円規模の不正送金が示した取引所セキュリティの現実と、資産保全の要としてのオフライン管理 2025年11月27日、韓国大手取引所Upbitのホットウォレットから、約445億ウォン(約47億円)に相当の暗号資産が不正送金される事件が発生しました。被害はSolanaネットワーク上で発行された複数のトークンに及び、攻撃者は短時間で複数アドレスに資金を分散させる巧妙な手口を用いていたとみられています。しかし、顧客資産の大半を保管しているコールドウォレットには一切の影響がなかったことが速やかに公表され、セキュリティ体制の中核を担うコールドウォレットの安全性が改めて注目を集めています。 参考:Upbitで約47億円分の資産流出 ― Naver合併直後のインシデントが韓国業界に波紋 | WEB3-ON ホットウォレットの構造とその脆弱性 ― ネット接続が生む利便性と攻撃リスク ホットウォレットは高速な入出金を可能にするため、常時ネットワークに接続されています。その利便性の裏には、外部からの攻撃を受けやすいという構造的リスクが存在します。API経由での不正操作や秘密鍵の流出、異常な送金が通常の処理に紛れ込む可能性など、常に脆弱性が存在します。取引所としては、ユーザーの利便性のために一定量の資産をホットウォレットをに置かざるを得ないものの、攻撃者にとっても「奪える可能性がある資産」が集中する領域であるため、魅力的な標的でもあります。 コールドウォレットによる資産保全とその限界 ― オフライン管理の強みと運用次第で生じる弱点 一方で、コールドウォレットはオフライン管理を基本としており、ネットワーク経由の侵入がほぼ不可能な点が最大の強みです。Upbitは平時から顧客資産の大部分(報道では約 90%以上)をコールドウォレットに保管しているとされています。複数署名の要求や権限分散型の鍵管理、ネットワーク非接続の署名デバイスの利用など、一般的に取られる多層的な管理は、高いセキュリティを実現する方法として広く認知されています。(※今回の事件でなぜコールドウォレット側の資産が無事であったのか、運用のどの部分が有効に働いたのかについては、Upbitから詳細な技術的説明が公表されているわけではないため「適切な運用が機能したとみられる」という表現に留めることが妥当でしょう。) ただし、コールドウォレットが「絶対安全」というわけではありません。過去には秘密鍵の紛失や内部関係者による不正、署名デバイスの物理的な盗難など、運用ミスや内部統制の欠如によってリスクが顕在化した事例も存在します。安全性はウォレットの種類そのものではなく、そのウォレットをどのように設計し運用し管理しているかに強く依存しています。 今後のセキュリティの新たな気人と技術的選択肢 ― 「どれだけホットに置くか」が信頼性評価の指標になる可能性も 今回の事件をきっかけに、取引所の運用方針を評価する指標として「ホットウォレットにどれだけの資産を置いているか」という点が、より注目を集める可能性があります。もちろん、言うまでもなく最も重要なのは「ハッキングを許さないセキュリティ体制そのもの」であり、ホット・コールドの比率だけで安全性を判断できるわけではありません。しかし、外部からの攻撃を直に受けるホットウォレットの特性を踏まえれば、そこに過度な資産を置く運用は、リスク管理が十分でないのではないかという疑念を招きやすい側面があります。これに対し、コールドウォレットの割合を明確にし、安全性を最優先する方針を打ち出す取引所は、ユーザーから信頼を得やすくなるという見方もあります。今後は、取引所が安全性を証明するために、ホットとコールドの管理費率や運用体制を積極的に開示する動きが進む可能性があります。 技術面では、鍵管理の高度化が進んでいます。秘密鍵を複数に分散して署名を行う MPC(マルチパーティ計算)、ネットワークから完全に隔離された環境で署名を行うオフライン署名、鍵管理を専門とするHSM(ハードウェアセキュリティモジュール)など、攻撃面への耐性を高めるアプローチが拡大しています。こうした取り組みは、従来のコールドウォレットが抱えていた物理管理の課題を補完し得るものとして注目されています。 安全性が取引所の信頼の鍵に 今回のUpbit流出事件は、取引所にが常に抱えるセキュリティリスクを改めて浮き彫りにしました。同時に、コールドウォレットがネットワーク攻撃遺体して最も強固な防御手段の一つであることも再確認される機会となりました。ホットウォレットが利便性を、コールドウォレットが安全性を担うという役割分担は今後さらに明確化し、どれだけ多くの資産を安全に隔離して管理できるかが、今後の取引所の信頼性を左右する重要な要素となっていくと考えられます。

センチメンタルな岩狸1ヶ月前
0
0
おオラクル入門 ― ブロックチェーンの「オラクル」が生み出す実用性 【後編】

WEB3ガイドおオラクル入門 ― ブロックチェーンの「オラクル」が生み出す実用性 【後編】

WEB3の裏側を支えるオラクル:ユースケースから攻撃事例、複数プロジェクトの役割、未来技術まで オラクルは表に出てくる華やかなアプリケーションではありません。しかし、その裏側では多くのWeb3プロジェクトが依存しており、「影のインフラ」として静かに存在感を増しています。前編では、オラクルがそもそも何を解決する技術なのか、そしてブロックチェーン単体では扱えない外部データをどのように取り込んでいるのかを整理しました。後編となる本記事では、そこから一歩踏み込み、オラクルが実際のWeb3サービスにどのような価値をもたらしているのか、具体的なユースケース、過去の攻撃事例、そして今後期待される技術進化までを、前編で触れた内容を踏まえながら立体的に解説します。 前編はこちら オラクルが支えるユースケース ― WEB3の「裏側」で動く見えない基盤 オラクルは、DeFi、GameFi、NFT、RWAといったさまざまななWeb3アプリケーションに組み込まれています。前編でも触れた通り、ブロックチェーンはオンチェーン情報しか扱えないため、外部の価格、指数、天候、スポーツ結果、ランダム性などのデータを利用するあらゆるアプリケーションは、オラクルなしには成立しません。 DeFiのレンディング市場では、担保価値の計算に外部価格データが利用されています。AaveやCompoundなど主要プロトコルは、ほぼすべての市場でChainlinkの価格フィードを利用しています。Chainlinkは複数の取引所やデータ企業から情報を収集し、市場の偏りを抑えた形でオンチェーンに配信します。これにより、自動清算の基準が安定し、不正清算や異常値による損失を防ぐことができます。 GameFi領域では、価格とは異なるタイプのデータが使われます。中でも「Chainlink VRF(Verifiable Random Function)」は、暗号学的に検証可能な高品質な乱数を提供するため、ガチャ結果、戦闘判定、アイテムドロップなど、ゲームの公正性を担保する用途に広く採用されています。PolygonなどEVMチェーンの多くのゲームでVRFが採用され、すでに業界標準になっています。 RWA分野では、リアルタイム性の高い外部データが求められています。米国債をトークン化するOndo Finance、株価連動のデリバティブ、金や商品を扱うプロトコルなどでは、NASDAQ、CME、Bloomberg系データなどのリアルタイム情報を扱えるPythやAPI3が利用されています。特にPythは、Jump TradingやJane Streetといった大手マーケットメーカーがデータ提供者として参加し、1秒未満のレイテンシで価格を更新する仕組みを提供しており、高速性が求められるデリバティブ市場で強みを発揮します。 参考: Chainlinkで実現するスマートコントラクトの77のユースケース 「クリプトモン」,ChainlinkのVRFシステムを導入 複数のオラクルプロジェクトが並存する理由 ― データの扱い方と思想の違い オラクルといえばChainlinkが代表格ですが、業界にはPyth、Band Protocol、API3、UMAなど複数のプロジェクトが存在します。これは単なる競争ではなく、各プロジェクトが異なる設計思想とアーキテクチャを持っているためです。 Chainlinkは「分散性」を最重視し、多数のノードオペレーターが複数ソースから取得したデータを集約する仕組みを採用しています。長い実績と信頼性があり、もっとも多くのプロトコルで採用されています。一方、Pythは高速性とリアルタイム性を重視し、「取引所から直接データを取得する」構造によって極めて低いレイテンシを実現しています。先物やデリバティブなどの高速取引領域で力を発揮する設計です。 API3は「ファーストパーティ・オラクル」を掲げ、データ提供者自身がデータをオンチェーンへ配信するモデルを採用しています。中間者を排除し透明性を高める設計で、特に企業利用が進んでいます。 このようにプロジェクトごとに得意領域が異なり、ユースケースごとに適したオラクルが変わるため、複数のオラクルが並存する状況が生まれています。 攻撃事例に見るオラクルの脆弱性 ― 「間違ったデータを送られたら終わり」という宿命 外部データを扱うという構造上、オラクルは攻撃者に狙われやすいという弱点があります。過去の重大インシデントを見ると、この性質がよく理解できます。 2020年に発生したbZx攻撃では、攻撃者がDEXの低流動性な取引ペアを操作して価格を歪め、その誤った値をオラクルが参照したことで自動清算に不具合が発生し、数百万ドルの損失につながりました。 2022年には、Mango Markets(Solana)で発生した攻撃も広く知られています。こちらも低流動性のスポット市場を利用して価格を吊り上げ、そのオラクル値を担保価値として利用して巨額の借入を行うという手法が取られました。 さらに最近では、分散型デリバティブ取引所 KiloEx がオラクル操作を受け、約700万ドル規模の損失を出したことが報じられています。攻撃者は複数チェーンの価格フィードに介入し、意図的に低い価格をオラクルに報告させることでレバレッジ取引を不当に成立させました。Tornado Cash経由で隠匿された資金が使われるなど手口も巧妙で、オラクルのアクセス制御が不十分な場合、攻撃が跨チェーンで連鎖しうることを示した象徴的なケースです。 オンチェーンゲームでも、十分に安全でない乱数を利用してガチャやレアアイテムの排出確率が操作された事例が存在し、こうした問題を受けてChainlink VRFの導入が加速した歴史があります。オラクル自体はただのデータ配信装置に見えますが、裏返せば「誤ったデータが入った瞬間にプロトコル全体を崩壊させうる」ポイントでもあり、その設計には高度な慎重さが求められます。 参考: bZx Protocol Exploit – Sep 14, 2020 – Detailed Analysis – ImmuneBytes Mango Markets Mangled by Oracle Manipulation for $112M - Blockworks 分散型取引所のKiloEx、オラクル操作攻撃で700万ドルを失う オラクルが向かう未来 ― ZKとAIによって「賢いデータ」へ進化する オラクル技術の進化で特に注目されているのが、ゼロ知識証明(ZK)とAIの活用です。ZKオラクルは、オフチェーンのデータが正しいことを暗号学的に証明しながらオンチェーンに渡す仕組みで、2021年以降、研究が急速に進んでいます。すでにStarkWareやSpace and TimeがZKベースのオラクル開発に取り組んでおり、「データの正当性を事前に保証するオラクル」が現実味を帯びてきました。 また、AIを用いた異常値検出や不正データ補正も注目領域です。API3やChainlink Labsは、AIを活用したデータ検証機構の開発に言及しており、オラクルは単なるデータ供給源から、「データ品質の保証まで行うインフラ」へと進化する可能性があります。このように、オラクルはWeb3全体の信頼性の基盤を支える技術としてさらに重要性を増やしていくでしょう。 オラクルはWEB3の静かな中心 オラクルは地味に見えますが、Web3の多くのサービスが依存する“静かな中心”とも言える存在です。価格、乱数、天候、株価、イベント情報など、現実世界のあらゆるデータをブロックチェーンに繋いで初めて成立するアプリケーションは無数にあります。 前編と後編を通してオラクルの全体像を振り返ると、ブロックチェーン単体では完結しない世界を安全につなぐために、オラクルという技術がどれほど重要な意味を持つかが見えてきます。今後さらにWeb3が実社会へ浸透していくほど、オラクルの信頼性や設計思想は、プロジェクトの価値を決める重要な基盤になっていくでしょう。

センチメンタルな岩狸2ヶ月前
0
0
オラクル入門 ― Web3を現実世界とつなぐ見えない基盤 【前編】

WEB3ガイドオラクル入門 ― Web3を現実世界とつなぐ見えない基盤 【前編】

ブロックチェーンは高い信頼性と耐改ざん性を備えていますが、外部の情報を自力で取得できないという根源的な制約を抱えています。これは欠陥ではなく、コンセンサスの再現性(determinism)を保ち、セキュリティと分散性を維持するために「意図的に閉じた仕組み」として設計されているためです。しかし、実際のアプリケーション開発では、暗号資産の価格、天候、スポーツの結果、高品質なランダム性など、チェーン外のデータが必須となるケースが数多く存在します。そこで重要になるのが、外部データをブロックチェーンに届ける「オラクル」という仕組みです。 本記事の前編では、オラクルの基本概念、その必要性、構造や種類までを整理して解説します。 ブロックチェーンの限界とオラクルの役割 ― チェーンは強固だが、現実世界とつながるにはオラクルが不可欠 ブロックチェーンのスマートコントラクトは自律的に動作しますが、あくまで「チェーン上にすでに存在する情報」だけを使って処理を行います。コンセンサスを成立させるためには、すべてのノードが同じ入力に基づいて同じ結果を出さなければならないという性質上、外部APIやインターネットへのアクセスがあると、この「再現性」は損なわれます。つまり、ブロックチェーン単体では天気、為替レート、スポーツのスコアといった基本的なデータすら取得できず、外部情報を前提とするアプリケーションをそのまま構築することはできないのです。 実際、DeFiでは借入金の清算判断を行うには暗号資産の価格を使う必要があります。スポーツ結果に応じてNFTの状態を変えるアプリを作るなら、試合のスコアがなければ処理を開始できません。また、ゲームで利用されるランダム性はオンチェーンで生成する方法があるものの、公平性や検証性を重視するなら、外部オラクルによる「高品質」なランダム性が使われることが増えています。さらに、RWA(現実資産のトークン化)では、市場データの参照が不可欠になります。こうした事情を踏まえると、オラクルは現在のWeb3エコシステムを支える欠かせない基盤だと言えます。 オラクルとは何か ― 外部情報を安全にブロックチェーンに届ける橋渡し オラクルとは、外部世界のデータを取得して、それをスマートコントラクトへ安全に届ける仕組みのことを指します。単にデータを転送するだけでなく、そのデータの信頼性を検証したり、複数の提供元から集めて平均化したり、署名や暗号技術で検証するなどのプロセスを経て、ブロックチェーンが外部情報と安全に連携できるようにします。 オラクルを構成する関係者は大きく次の三つに分かれます。 1. データ提供者:API業者、取引所、気象サービスなど 2. オラクルネットワーク:データを取得し、検証・集約を行うノード群 3. スマートコントラクト:集約されたデータを受け取り、アプリケーション処理を行う ただし、すべてのプロジェクトがこの構造に当てはまるわけではありません。たとえばPythはデータ提供者が直接ネットワークに値を投稿する仕組みを採用し、API3は「ファーストパーティ・オラクル」を理念としています。ここで説明しているのは、あくまで代表的なモデルとしてのイメージです。(後編でより詳細に取り上げます。) 特に重要なのは「検証プロセス」です。もし誤った価格データや偏った数値がスマートコントラクトに渡されてしまえば、DeFiでは不必要な清算や、本来起こるべき処理がされないリスクがあります。スマートコントラクトは与えられた入力のみを基に動作するため、オラクルの信頼性がそのままWeb3サービスの信頼性に直結します。 中央集権型オラクル VS 分散型オラクル ― 設計思想の違いと、それぞれの長所・短所 オラクルには大きく分けて中央集権型と分散型の二つがあります。中央集権型オラクルは、単一のデータ提供者が情報を取得し、ほぼそのままブロックチェーンへ届ける形式です。実装が簡単で、処理が速く、コストも小さいため、小規模なアプリケーションやテスト用途では適しています。しかし、一社のAPIが止まればデータが止まり、提供者が改ざんすればそのままチェーンに反映されるため、単一障害点を抱えやすいという弱点があります。 これに対して分散型オラクルは、複数の独立したノードがそれぞれ外部データを取得し、それらを検証・集約した上でブロックチェーンに届けます。Chainlink、Pyth、Band Protocol、API3 などが代表例です。単一のデータ提供者に依存しないため改ざんに強く、金融サービスの基盤として利用する場合には極めて重要な仕組みになります。ただし、ネットワーク全体での合意や集約が必要になるため、構成が複雑化し、処理速度やコスト面で課題が生じることもあります。 両者は優劣の問題ではなく、用途やリスク許容度に応じた使い分けが重要です。特に多額の資金が動くDeFi分野では、安全性の観点から分散型オラクルが事実上の標準となっています。 オラクルが機能しないと何が起こるのか ― 誤データや停止がもたらすリスクと過去の事例 オラクルが誤作動したり遅延したり停止したりすると、Web3サービス全体に連鎖的な問題が発生します。誤った価格データによって不必要な清算が発生したり、逆に正しく行われていた清算が遅延したりすることがあります。オラクルネットワークの停止によって取引が一部あるいは完全に不可能になるケースもあります。 過去のインシデントでは、DEXの価格が操作され、それを参照したプロトコルが多額の損害を受けるケースが複数発生しました。これはオラクル自体の脆弱性というより、「どのデータを参照する設計にするか」という設計の問題でもあります。スマートコントラクトは入力値をそのまま信じて処理を進めるため、オラクルの品質はWeb3全体の安全性を左右する「見えない生命線」と言えます。(後編でより詳細に取り上げます。) 参考:分散型取引所のKiloEx、オラクル操作攻撃で700万ドルを失う オラクルはWEB3の根幹を支える重要なインフラ 本記事の前編では、オラクルが必要となる背景、基本的な仕組み、中央集権型と分散型オラクルの違い、そしてオラクルが抱えるリスクについて整理しました。オラクルは、スマートコントラクトが現実世界と接続するための基盤であり、現代のWeb3サービスを支える重要なインフラです。 後編では、具体的なユースケースを取り上げながら、各オラクルプロジェクトがどのように活用されているのか、またどのように差別化されているのかを掘り下げていきます。

センチメンタルな岩狸2ヶ月前
0
0
エアドロップ入門― Web3時代の「新しい報酬」の形

WEB3ガイドエアドロップ入門― Web3時代の「新しい報酬」の形

エアドロップ入門 エアドロップの仕組み・成功例・減少理由まで、今を総まとめ 暗号資産やDeFiの世界では、ここ数年で「エアドロップ(Airdrop)」という言葉をよく耳にするようになりました。アプリを使ったり、コミュニティに参加したりと、プロジェクトの成長に貢献したユーザーに対して、無償でトークンを配布する仕組みのことです。最近では、ポイント制度やオンチェーンアクティビティを活用した手法が一般化し、Web3プロジェクトがユーザーを巻き込むための重要なインセンティブとして定着しつつあります。 なぜエアドロップが行われるの? エアドロップは、プロジェクトが「ユーザーと一緒に成長する」ための仕組みとして機能しています。初期段階から利用してくれたユーザーにお礼を示すだけでなく、トークンを持つこと自体が参加している実感につながり、コミュニティ形成を促します。さらに、多くの人にトークンを配布することで分散性が高まり、特定の少数だけがプロジェクトを支配するような状態を避けられるという利点もあります。こうした理由から、特にDeFiの領域では、エアドロップはプロジェクト初期の大切な施策として扱われてきました。 最近は「ポイント制のエアドロップ」が主流に 以前は「ある日にスナップショットを撮り、その時点の保有者にトークンを配布する」というシンプルな方式が主流でしたが、最近ではユーザーの行動を積み重ねるポイント型の仕組みが中心になっています。オンチェーンでの利用頻度や複数チェーンでの行動、さらにはタスクをクリアしてポイントがもらえるクエスト形式など、少しゲーム要素を取り入れたモデルも増えています。これにより、ユーザーはアプリを使うほどポイントがたまり、プロジェクト側にとっても、実際に利用してくれるユーザーが増やしやすくなるため、お互いにとってメリットの大きい形になりました。 歴史を作った象徴的な事例 エアドロップのインパクトを語るうえで、Uniswapの事例は外せません。2020年の大型エアドロップはDEX利用者の定着に大きく貢献し、その後のエコシステム発展を後押ししました。その仕組みとしては、Uniswapを使ったことがあるユーザーに「400 UNI」を配布し、瞬く間に「数万円~数十万円相当」になるケースもあり、コミュニティでは驚きの声が広がりました。 Optimismは2022年から複数回にわたりエアドロップを実施しました。実際にL2を使っていたユーザーを評価するという方針が好評で、プロジェクトへの信頼感が高まりました。特に初回のエアドロップ時はネット上で大きな盛り上がりがあり、SNSでは「OP祭り」と呼ばれるほど話題になりました。 Arbitrumはアドレス数が多かったこともあり、配布は慎重に行われましたが、それでも発表と同時にTwitter(現 X)が沸騰しました。「どれくらいもらえた?」という報告でタイムラインが埋まり、一気にユーザーと開発者が増えるきっかけになりました。 また、Zora・Friend.tech・LayerZeroなど、まだトークンを出していない段階からポイント制度だけ先に始める例も増えています。ユーザーは「将来なにかあるかも?」と期待しながら使いやすく、プロジェクト側は初期のアクティビティを集めやすいため、今の潮流として非常に人気のあるモデルです。 最近では、ビットポイントとMidnightが連携し、NIGHT(ナイト)トークンのエアドロップが予定されているとの話題も出ています。NIGHTはMidnightネットワークで使われるトークンで、ガバナンスやステーキングなどに関わる基本的な役割を担うものとされています。 ただし、まだ正式に確定したスケジュールが出ているわけではなく、「実施予定だけど詳細は未定」という段階のため、確実に配布されるとは限りません。興味がある人は、公式発表をフォローしつつ続報をチェックしておくと良いでしょう。 そして今、「エアドロが減りつつある」という声も 一方で、最近は業界関係者やコミュニティからよく聞かれるのが、「昔ほど簡単にはエアドロップがもらえなくなっている」という声です。その背景にはいくつか原因があります。 報酬だけを目的に使うユーザーが増えた エアドロップが有名になりすぎて、報酬をもらったら離脱するユーザーが増加しています。これにより、プロジェクトは本来の目的である「長期的に利用してくれるユーザー」を見分けづらくなりました。 市場環境が変わり、トークンを配ってもすぐ売られやすい エアドロップ直後に大量売りが発生することが増え、プロジェクトにとって価格面のリスクが高くなっています。そのため、プロジェクト側はエアドロップの配布が市場に悪影響を及ぼすことに慎重になるケースも増えています。 不正(Sybil攻撃)が増加 多数のアカウントを作成し、配布量を不正に増やそうとする行為も少なくありません。対策コストも上がり、安易なエアドロップは実施しづらくなっています。 参考:The Battle Against Airdrop Sybil Attacks: Insights From LayerZero and ether.fi Strategies 過度な配布がもたらす持続性の懸念 プロジェクトによっては、あまりにもトークンをばらまくとその後の価格安定や流動性維持が難しくなるという戦略的なリスクを見越して、「明言はしない」 「将来を保証しない」といった慎重なスタンスを取るところが出てきています。 参考:エアドロップは人気を失いつつある?Web3は持続可能な価値の新しい道を探求している エアドロップは「入り口」として賢く活用しよう エアドロップは、Web3ならではの「ユーザーと一緒に育つ仕組み」として、多くのプロジェクトを後押ししてきました。ポイント制度の普及によってユーザーの行動がより正確に評価されるようになり、今後も大切なインセンティブであり続けることは間違いありません。DeFiに触れるきっかけとしても、エアドロップを狙うのは良い入り口です。 ただし、本文でも触れたように、最近では環境が変化し、以前ほど確実に受け取れるとは限らなくなっています。だからこそ、過度な期待に頼らず、プロジェクトの実態やリスクを理解しながら、適度な距離感でうまく付き合うことが大切です。エアドロップはあくまで「きっかけ」として活用し、自分にとって価値のあるプロジェクトを見極めながらWeb3を楽しんでみてください。

センチメンタルな岩狸2ヶ月前
0
0
DeFi時代のDEX規制事情 ― 米国・EU・日本の動向を徹底解説

WEB3ガイドDeFi時代のDEX規制事情 ― 米国・EU・日本の動向を徹底解説

前回の記事では、ブロックチェーン上で銀行のような役割を果たす「分散型金融(DeFi)」について紹介しました。今回取り上げる分散型取引所(DEX)は、そのDeFiの中でも特に重要な要素で、暗号資産の交換やスワップを中央管理者なしで自動的に行えるという点が最大の特徴です。しかし、この「人がいない」 「運営主体が不明確」という仕組みは、規制面では大きな論点になります。 この記事では、米国・欧州(EU)・日本の3つの地域で、DEXがどのように受け止められ、どんな規制や議論が起きているのかを、具体的な事例を交えながらわかりやすく整理します。 なぜDEXは規制の対象になりやすいのか ― スマートコントラクト取引と規制のジレンマ DEXは、注文から決済までの一連のプロセスがすべてスマートコントラクト上で完結するため、従来の「取引所」という枠組みと微妙にズレが生じます。こうした構造により、規制当局は複数の観点から注意を向けています。例えば、*レバレッジ取引や証拠金を扱う場合は商品・*デリバティブ規制の対象になり得ますし、扱うトークンの中に証券として判断されるものが含まれる可能性もあります。また、中央管理者がいないという特徴は、KYC・AMLの観点での*マネーロンダリング対策や、利用者保護の仕組みをどう確保するかという問題にもつながります。このように複数の視点が重なり合うことで、DEXは「どの法律で扱うべきか」「誰を規制対象とすべきか」といった根本的な議論が、各国で継続的に行われる状況になっています。 *レバレッジ取引: 少ない資金で大きな金額の取引を行う仕組み *デリバティブ規制:価格に連動する先物やオプションなどを扱う際に適用される金融規制 *マネーロンダリング対策:犯罪資金の流れを追跡するため、取引の匿名性を制限する仕組み 米国:「個別事例で線引き」が進む一方、執行方針は変化中 米国では、SEC(証券取引委員会)とCFTC(商品先物取引委員会)という複数の監督当局がそれぞれの権限でDEXやトークンを精査しており、ルールは裁判や個別の行政処分を通じて徐々に形作られています。実例として、CFTCは2024年にUniswap Labsの特定レバレッジ型商品を問題視し、行政処分と和解を行いました。この事例は、「プロダクトの設計や運営実態次第では、分散的なプロトコルでも既存の金融規制が適用されうる」ことを示しています。 一方でSECはトークンの「証券性」を中心に調査を行ってきましたが、2025年にはUniswapに対する一部の調査が終了しており、すべてが一律に厳罰化するわけではないことも示されています。規制の実務は「個別判断」が基本で、ケースごとに結果が異なる点に注意が必要です。 参考: CFTC Issues Order Against Uniswap Labs for Offering Illegal Digital Asset Derivatives Trading | CFTC SEC Closes Investigation Into Uniswap Labs, Marking a Key Victory for DeFi Industry さらに2025年には、司法省(DOJ)の執行方針にも大きな変化がありました。報道によれば、DOJは暗号関連プロジェクトの開発者への刑事対応を慎重化する方向性を示しており、これが実務上の「プロジェクト・開発者」への影響を和らげる可能性があります。ただし金融規制は依然としてSEC/CFTC等の行政ルートで運用されているため、営利的なサービス提供やユーザー向け機能の有無によってリスクは残ります。 参考:US DOJ to back off money transmitter cases in shift backed by crypto | Reuters 欧州(EU):MICAで枠組みは整理されるが、完全分散型DEFIはまだ「未定」 EUでは、暗号資産市場の包括的な枠組みであるMiCA(Markets in Crypto-Assets Regulation)が施行され、市場全体を整理する方向で制度設計が進んでいます。(Level2/3 技術基準が確定済み、または検討中である。)しかし、MiCA自体は「完全に分散化されたDeFiプロトコル」を直接規制する前提では作られていません。そのため、DEXのスマートコントラクトそのものをどのように扱うかという点は、依然として議論が続いています。 さらに、EBA(欧州銀行監督局)とESMA(欧州証券市場監督局)が共同で出した報告では、DeFiに関する技術的・市場的リスク(例:マネーロンダリングのリスクやICTリスク、MEVの影響など)を整理しており、監督当局はこれらのリスクに対する監視を強めています。特にMEV(Maximal Extractable Value)は、トランザクションの順序操作などを通じてユーザーに不利益を生じさせ得る具体的リスクとして指摘されており、技術的な緩和策や監督上の注意点が議論されています。これらの分析は、EU当局がDeFiを「技術面」と「制度面」の両側面で注視していることを示しています。 実務上は、どの部分に「中央性(centralised element)」が残っているかが重要な判断軸です。例えば、ユーザー向けのフロントエンドを運営する企業や、運営・アップデートを担う組織が明確に存在する場合、そこに既存の暗号資産サービス規制(CASP等)や開示義務が及ぶ可能性が高くなります。一方で、本当に分散化されていて運営主体が存在しないプロトコルについては、どの法律が適用されるかをめぐる実務的判断が各国で分かれるため、統一的な解釈はまだ整っていません。 参考: ESMA75-113276571-1510 MiCA Level 2 and 3 measures The EBA and ESMA analyse recent developments in crypto-assets | European Banking Authority 日本:金融庁が整備を進める一方、法的位置づけの明確化が進行中 日本では金融庁(FSA)が暗号資産やステーブルコイン、RWAなどに関する分析・ガイダンスを継続的に公表しており、業界に対して最新の考え方や課題認識を提示し続けています。FSAは技術的な理解を深めながら、利用者保護や市場の健全性を重視した検討を進めている段階です。 報道では、2025年以降に暗号資産の金融商品としての位置づけを再整理する議論が進んでいます。具体的には、暗号資産に対してインサイダー取引規制を適用する可能性や、法改正を通じて定義や監督枠組みを明確化する案が議論されており、2026年の法案提出を目標としていると報じられています。これが実現すれば、DEX関連トークンの扱いがより明確化する可能性があります。 実務上は、日本で活動する事業者はFSAの公開資料を定期的に確認しつつ、トークンの法的性質評価、インサイダーや情報開示への対応、国内事業者・カウンターパーティとの契約や運用ルールの見直しなどを念頭に置くことが求められます。 参考: 金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」(第1回)議事録:金融庁 日本、暗号資産のインサイダー取引を禁止する方針:日経 - TodayOnChain Japan considers new cyptocurrency rules, Asahi newspaper reports | Reuters DEXは、中央管理者を持たずスマートコントラクトが自動で取引を処理するという構造ゆえに、各国で「どの法律を適用すべきか」が共通の論点になっています。米国ではSEC・CFTCが個別事例を通じて適用範囲を明確化し、EUはMiCAにより枠組みを整えつつ、完全分散型DeFiの扱いは依然として未確定です。日本は2025年以降の法改正に向け、暗号資産の位置づけを再整理する議論が加速しています。いずれの地域でも、中央性がどこに残っているか、利用者保護をどう担保するかが共通した焦点で、DEXは今後も規制実務の最前線に位置づけられ続けるといえます。

センチメンタルな岩狸2ヶ月前
1
0
[DeFi] はじめてのDeFi ― 暗号資産とステーブルコインで始める分散型金融

WEB3ガイド[DeFi] はじめてのDeFi ― 暗号資産とステーブルコインで始める分散型金融

ブロックチェーンが金融を根底から変えつつある中で、その中心的な役割を担っているのが「DeFi(分散型金融)」です。銀行や証券会社などの仲介を介さず、コードによって取引を自動化するこの仕組みは、以前は一部のテックコミュニティに限られていました。しかし近年では、ウォレットひとつで誰でも世界中の金融サービスにアクセスできるまで広がり、さらに不動産や国債といった現実世界の資産(RWA)までもがブロックチェーン上で扱われ始めています。 本記事では、DeFiの基礎から仕組み、代表的なサービス、メリット・リスク、そして今後の方向性までを整理し、DeFiがこれからどこへ向かうのかをわかりやすく解説します。 DEFIとは? ― 「信頼」をコードに置き換えた分散型金融の仕組み DeFi(ディーファイ)とは「Decentralized Finance(分散型金融)」の略で、銀行や証券会社といった仲介機関を介さずに、ブロックチェーン上で金融サービスを提供する仕組みを指します。インターネットとウォレットさえあれば、世界中どこからでも資金の送受信や貸借、投資などが可能になるという点が特徴です。これまで中央機関に依存していた「信用」や「取引のルール」を、スマートコントラクトと呼ばれるプログラムによって自動的に実行します。 つまり、DeFiは「信頼をコードに置き換えた金融」ともいえる存在で、金融の仕組みそのものをよりオープンで透明な形へと進化させています。 CEFIとの違い ― 中央集権型と分散型を分ける本質的なポイント DeFiを理解するには、まず従来の金融「CeFi(Centralized Finance:中央集権型金融)」との違いを押さえることが大切です。CeFiでは銀行や取引所といった組織が資金を預かり、取引や送金の管理を行います。ユーザーはその信頼性に依存する形でサービスを利用します。一方DeFiでは、資金の管理を担うのはユーザー自身であり、取引のルールはスマートコントラクトがブロックチェーン上で自動実行します。そのため、CeFiは組織の信頼によって成り立ち、DeFiはプログラムの透明性と公開性によって信頼を担保します。中央の管理者がいない分、誰もが対等な立場で取引できるのがDeFiの最大の特徴です。 DEFIを支える技術と仕組み ― スマートコントラクトが築く自律的金融ネットワーク DeFiの基盤を支えているのは、スマートコントラクトと呼ばれる自動実行型プログラムです。これは「特定の条件が満たされたら自動的に取引を行う」コードであり、人の手を介さず契約を実行します。こうした仕組みを動かす基盤が、Ethereumをはじめとするスマートコントラクト対応型のブロックチェーンです。さらに、DeFiでは資産を表すトークンが利用され、それらを保管・操作するためにウォレット(MetaMaskなど)が使われます。また、ブロックチェーン外の情報を取り入れるために「オラクル」と呼ばれる仕組みも導入されており、市場価格や現実世界のデータをオンチェーン上に反映させることができるのです。 これらの技術が組み合わさることで、DeFiは中央の機関を必要とせず、透明かつ自律的に動作する金融ネットワークを実現しています。 代表的なDEFIサービスとユースケース ― ステーブルコインからRWAまで広がるエコシステム 現在のDeFiエコシステムには多様なサービスが存在します。その中心となるのが、価格が安定したステーブルコインです。これらはドルなどの法定通貨に価値を連動させ、他のサービスの基盤通貨として使われています。 取引を行う際には、中央管理者がいない「分散型取引所(DEX)」が利用されます。代表的なものとしては、UniswapやSushiSwap、PancakeSwap、Balancerなどが挙げられ、近年ではdYdXやGMXといったデリバティブ系DEXも存在感を高めています。また、資産を貸し出して利息を得る「レンディングサービス」(Aave、Compound)や、資金をプールして報酬を得るイールドファーミング、ステーキングなども代表的なユースケースです。 近年では、不動産や国債、金など現実世界の資産をトークン化(RWA)してDeFiに組み込む動きも広がっており、その代表的なプロジェクトとしてはOndo FinanaceやRealTなどが挙げられます。Ondo Financeは、アメリカ国債やマネーマーケットファンドといった伝統的な金融資産をトークン化し、オンチェーンで取引・保有できるようにするプロジェクトです。ユーザーは、従来なら金融機関を通じてしかアクセスしづらかった安全性の高い資産に、クリプトウォレットから直接アクセスできます。ユーザーは、従来なら金融機関を通じてしかアクセスしづらかった安全性の高い資産に、クリプトウォレットから直接アクセスできます。 RealTは、アメリカの不動産を細分化し、トークンとして保有・売買できる仕組みを提供しているプラットフォームです。投資家はトークンを保有することで、その物件から生まれる家賃収入の一部(プロトコルが定める形で)をオンチェーンで受け取ることができます。 こうしたRWAプロジェクトの登場によって、デジタルと現実世界の境界が徐々になくなり、ブロックチェーン上で「現実の金融」が動く時代が近づいています。 DEFIのメリット・デメリット ― 自分で管理する楽しさとリスク DeFiの最大の魅力は、誰もが制限なく金融サービスにアクセスできる点です。銀行口座を持たない人でも、ウォレットひとつで送金・投資・融資が可能になります。また、取引は24時間365日止まらず、ブロックチェーン上で全ての履歴が公開されるため、高い透明性と効率性を備えています。 一方で、リスクも存在します。スマートコントラクトのバグやハッキングによる損失、トークン価格の急変動、さらには詐欺的なプロジェクトも後を絶ちません。加えて、法的な枠組みや消費者保護がまだ整っていないため、利用には一定のリテラシーと注意が求められます。つまりDeFiは、金融をより自由でオープンにする一方で、個人が「自己責任」で行動する領域でもあるのです。 DEFIの今後の規制・RWAとの関係 ― 規制とRWAで広がるDEFIの新しい世界 今後のDeFiを語るうえで重要なのは、規制とRWAの動向です。各国ではステーブルコインの裏付け資産や取引透明性を求める規制整備が進んでおり、DeFiも監査やライセンスといった制度的な枠に近づきつつあります。こうした流れは、信頼性の確保という観点では大きな前進です。同時に、RWAのトークン化によって、不動産や国債といった実物資産がブロックチェーン上で扱われるようになれば、DeFiは単なる暗号資産の金融を超え、現実経済と直接結びつく存在になります。 今後はCeFiとDeFiの中間に位置する「CeDeFi(セデファイ)」のようなモデルが広がり、分散性と安全性、規制遵守のバランスを取った新しい形の金融が登場するでしょう。DeFiはまだ発展途上ですが、確実に「信頼」や「価値」のあり方を変えつつあります。こうした変化の積み重ねが、誰もがより自由に経済活動へ参加できる未来をつくり始めています。 参考:CeDeFi(セントラライズド・ディファイ) 暗号資産における意味 | Tangem DeFiはまだ新しい領域ですが、金融の常識を大きく変え始めています。だれもが自由に金融サービスへアクセスできるようになり、RWAの拡大や規制整備が進むことで、より使いやすく安全な環境へ近づいています。これからのDeFiは、「よりオープンで、公平で、便利な金融」を実現するための重要な柱になるでしょう。

センチメンタルな岩狸2ヶ月前
0
0
【USDT特集 2】 Tether、安定性と規制対応に焦点を当てた事業拡大へ ― RWAとデジタルドルが動かす次の経済フェーズ

WEB3ガイド【USDT特集 2】 Tether、安定性と規制対応に焦点を当てた事業拡大へ ― RWAとデジタルドルが動かす次の経済フェーズ

前編では、USDTの誕生背景からステーブルコイン市場における現在の位置づけまでを整理しました。今回の後編では、その延長として、USDTの実際の活用事例、Tether社の事業展開および資本政策を踏まえ、今後の展望までの一連の流れを詳しく見ていきます。 現実経済に溶け込むUSDTのユースシーン USDTは、前編(1–2)で触れたインフレや通貨下落へのヘッジ手段に加え、国際送金、労務支払い、企業の資金運用など、より実務的で日常に近い場面でも採用が広がっています。単なるトレード用トークンではなく、実需に根ざしたユースケースが増えているのがいまの特徴です。 > フリーランス・リモートワーカーの報酬支払い 国をまたぐ報酬支払いでは、通貨や銀行インフラの違いがハードルになりがちです。こうした問題に対し、USDTを報酬の受取手段として導入するプラットフォームが増えています。実例として、国際人材プラットフォームのDeelは契約者向けの出金オプションにUSDTを追加しており、銀行口座がない人でもウォレットがあれば受け取れる仕組みを提供しています。また、Bitwageなどの給与支払いサービスもUSDT(複数ネットワーク)を使った支払いオプションを用意しており、即時決済や低コスト化の利点をアピールしています。 参考:How to Withdraw Money Using Digital Currency Transfer – Deel > モバイルマネーや決済アプリとの連携 USDTの利用は暗号資産取引所の枠を越え、モバイル決済やメッセージングアプリのエコシステムへと広がっています。TetherはKaiaブロックチェーン上にUSDTをネイティブ展開し、LINE NEXTとも協業して、LINEのミニDAppやウォレット機能でUSDTを扱える環境づくりを進めています。これにより、既にLINEが普及している日本や東南アジアのユーザーが、特別なアプリを別途導入せずにドル建ての価値を保持・送金できる可能性が高まりました。 同様に、OobitとTON Foundation(およびTether)の連携は、モバイル決済アプリを通じて暗号資産による実店舗決済やP2P送金を簡単にする取り組みとして公表されています。OobitはTONエコシステムの統合や店舗でのTap&Payといった機能を目指しており、Tetherとの協業はステーブルコインを日常決済に接続するひとつの例です。 参考: LINE NEXTとKaia DLT財団、テザーと連携──USDTをMINI Dappでの決済手段に TetherはTONファウンデーションおよびOobitと提携し、暗号決済ソリューションを共同で構築します。 > 暗号資産取引・DeFi・国際送金で拡大するUSDTの実需 取引所の流動性面では、USDT建てペア(BTC・USDT など)が非常に高い取引量を誇り、USDT自体も大きな時価総額を維持しています(主要マーケットデータでは2025年時点でおおむね1~2千億ドル規模の時価総額)。このため、取引所間の資金移動やアービトラージ、短期の流動性供給手段として広く使われています。 DeFi領域でもUSDTは重要な役割を果たします。レンディング・流動性プールにおけるUSDTの供給・借入は市場の動きを左右する大きな要素であり、一時的に流動性が不足する事例も観測されています。例えばAaveのUSDTプールでは、一件の大口借入・引き上げで利用率(utilization)が上昇し、92%台に達したという報告があり、プロトコル運用上のリスク要因として注目されました。こうした事象は、USDTが単なる交換手段に留まらず、ブロックチェーン上の資金循環の中心になっていることを示しています。 国際送金の観点では、従来の銀行送金が数日かかったり高コストだったりする一方で、ステーブルコインを使うと決済時間が数分〜数十分に短縮され、コスト面でも大幅な削減が報告されています。会計・コンサル系の調査でも、条件によってはコストを大幅に下げられる可能性が示されており、特に銀行インフラが脆弱な地域では実効的な代替手段になり得るとされています。(ただし実効性はネットワークやオン・オフランプの仕組みに依存) 参考: Aave’s USDT pool hits 92.8% utilization after $115M whale withdrawal Stablecoins Revolutionize Cross-Border Payments, KPMG Report Finds | Binance News on Binance Square TETHERの事業展開 ― RWAと実物資産への進出 TetherはUSDT発行というコア事業にとどまらず、現物資産(RWA)のトークン化や、実物資産への出資・インフラ投資にも動いています。代表例としては以下の通りです。 1. Tether Gold(XAU₮):1トロイオンスの金を裏付けとするトークンで、複数のマーケットデータではその時価総額は数十億ドル規模として計上されています。ブロックチェーンを通じて金保有の流動性を高める試みです。 2. 再生可能エネルギー ・ マイニングのインフラ投資:2023年、Tether はエルサルバドルの「Volcano Energy」プロジェクトに参加し、再エネを活用したマイニング・インフラ構築に関わる旨を発表しました。これは資金運用の多角化とサステナビリティ対応の一環と見られます。 3. 実物資産への出資:2025年にはカナダのElemental Altus(鉱山・ロイヤリティ関連)に対する株式取得が公表され、金やハードアセット分野でのプレゼンス強化が進んでいます。 参考:Elemental Altus Is Pleased To Announce Tether Investments As New Cornerstone Shareholder これらの動きから、単なる「ステーブルコイン発行業者」から、トークン化された現物資産やインフラ運営を含む広義のデジタル金融インフラ企業へと業態を拡張しようとしていることが読み取れます。 資本政策・企業価値に関する議論 報道では、Tetherが資金調達を検討しており、投資家との交渉次第では非常に高い評価額(報道ベースで数百億〜数千億ドル規模)になるという見方も出ています。ただし「企業価値が確定した」といった断定的な表現は避けるべきで、複数メディアは「交渉中」 「報道によれば」といった前提で報じています。資金調達や評価額に関する数字は時点によって変わるため、最新の公表資料や信頼できる報道ソースで随時確認する必要があります。 参考:Tether Limited - Wikipedia USDTの展望 ― RWAと規制整備が鍵になる 今後注目すべきポイントは大きく2つあります。1つはTether自身や他発行体によるRWA(不動産・金・インフラ等)のトークン化と、それを裏付けとした新たなステーブルコイン商品群の動向です。もう1つは規制・監査の国際的な標準化です。会計・監査・ライセンス面の要請が強まれば、発行者の開示や外部監査の実施、地域別ライセンス取得の動きが加速します。これらが揃うかどうかで、USDTの「現実経済への組み込み度」は大きく左右されるでしょう。 ドルのデジタル化、現実経済を動かすフェーズへ USDTは、国際送金・給与支払い・モバイル決済・資産運用といった多層的な金融インフラに接続する段階へと進化しています。Tether社自身も、RWAのトークン化や再エネ投資などを通じて、実体経済とデジタル資産の橋渡しを試みています。今後、各国でステーブルコイン規制が明確化し、外部監査や開示体制が整うことで、USDTの信頼性と制度的地位はさらに強化される可能性があります。2026年以降、RWA裏付け型USDTや地域別ライセンス拡大が進めば、USDTは「ドルのデジタル表現」を超えて、グローバルな決済・資産インフラの一角を担う存在へと発展していくでしょう。

センチメンタルな岩狸2ヶ月前
1
0
【USDT特集 1-2】 ― 「デジタルドル」が直面する規制と新たな挑戦

WEB3ガイド【USDT特集 1-2】 ― 「デジタルドル」が直面する規制と新たな挑戦

前編では、USDT(Tether)の誕生から仕組み、そして裏付け資産の構成までを見てきました。 2014年に登場したUSDTは、10年以上にわたりステーブルコイン市場を主導してきた存在であり、現在では暗号資産市場の「デジタルドル」として確固たる地位を築いています。 本記事の後編では、USDTを取り巻く各国の規制動向、新興国を中心とした実需の広がり、そしてTether社が抱える課題を取り上げ、世界のデジタル経済におけるUSDTの現在地を掘り下げます。 USDTの規制動向 ― USDTを取り巻くルールの現状 USDTは世界で最も流通量の多いステーブルコインであるため、各国の金融当局もその動向に注目しています。 米国では、ステーブルコイン専用の包括的な法規制は整備中ですが、SEC(証券取引委員会)やCFTC(商品先物取引委員会)、各州金融当局が個別に監督を行っています。特にニューヨーク州の金融サービス局(NYDFS)では、Tether社に対して資産報告の正確性や透明性を求める動きが強まっています。 EUでは、2024年に施行された「MiCA(Markets in Crypto-Assets Regulation)」 により、USDTのような電子マネートークン(EMT)の発行者はライセンス登録や準備資産の開示など厳格なルールに従う必要があります。これに伴い、Tether社はフランスやドイツなど一部の欧州地域でUSDTの提供を制限しています。 日本では、2023年6月に改正資金決済法が施行され、ステーブルコインの発行主体は「銀行」「信託会社」「登録制の資金移動業者」に限定されました。そのため、現時点では海外発行のUSDTは国内で直接流通はしていませんが、Tether社も各国の法制度に適応しようとする姿勢を強めており、将来的には日本市場での取引・導入が可能になるのではないかという期待感も広がっています。また、JPYCの発行や三菱UFJ信託銀行の「Progmat Coin」など、円建てステーブルコインの実証実験が進んでおり、国内の制度整備と技術開発が並行して進んでいます。 その他、シンガポールやスイスなどの暗号資産フレンドリーな国ではライセンス取得が前提に比較的自由な運用可能ですが、中国やインドなどでは暗号資産全般に強い制限があり、USDTの利用は制限されています。 参考: What the New York Department of Financial Services guidance means for stablecoins EU Approves 53 Crypto Firms Under MiCA Legislation USDTの市場的地位 ― 新興国が支えるデジタルドルのリアルな需要 2025年11月時点で、USDTの発行残高はおおよそ1,830億ドル規模と推定され、ステーブルコイン市場全体の約70%前後を占めています。これはUSDCやDAIなど、他の主要ステーブルコインを大きく上回る規模で、取引所・分散型金融(DeFi)・国際送金の主要な基軸通貨として活用されています。 USDTがここまで拡大した理由は、単なる取引ツールにとどまらず、世界の資金フローを支える「デジタルドル」として機能している点にあります。特に、法定通貨の価値が不安定な国々(トルコ、アルゼンチン、ナイジェリアなど)では、インフレや通貨切り下げのリスクを回避する手段としてUSDTの利用が拡大しています。トルコではBTCTurkなどの取引所でUSDTの取引量がリラ建てペアを上回る日もあり、給与や送金にも利用されています。アルゼンチンでは、長期インフレ下でUSDTが資金保全手段としてP2Pプラットフォーム上で広く用いられています。ナイジェリアでも、国内送金や輸入決済にUSDTを活用する企業・個人が増えています。 参考: Tether price today, USDT to USD live price, marketcap and chart | CoinMarketCap stablecoins_the_emerging_market_story_091224.pdf USDTが抱える課題とTETHER社の新展開 USDTが抱える主な課題は、透明性の不十分さと規制リスクです。Tether社は定期的に国際監査法人BDOによるアテステーション報告を公表していますが、これは完全な会計監査ではなく、依然として資産裏付けの正確性について懸念が残ります。 規制面では、米国でのステーブルコイン法制化の議論が2025年に大きく進展しました。同年時点では、GENIUS法案やSTABLE法案の2件が審議されており、GENIUS法案は「承認を受けた発行者による発行」を前提とし、銀行に限らず一定条件を満たした非銀行系事業者にも発行を認める柔軟な枠組みを採用しています。また、発行者の規模に応じて連邦または州レベルで登録・監督を受ける二層構造の監督体制が特徴です。この法案は「承認を受けた発行者による発行」を前提としつつ、銀行に限らず、一定の条件を満たした非銀行系事業者にも発行を認める内容です。 これにより、ステーブルコイン発行に関する明確な法的基盤が整いつつあり、USDTの米国内での位置づけにも影響を与える可能性があります。 Tether社はステーブルコイン事業に加え、再生可能エネルギーやRWAへの投資など、新たな事業領域への拡大を進めています(詳しい内容は次回の記事で紹介します)。こうした取り組みを通じて、Tether社は単なるステーブルコイン発行企業から「デジタル金融インフラ企業」への進化を目指しています。 参考:【2025年最新】ステーブルコイン市場の動向・二極化する市場と、米国・日本の規制アプローチ 世界を動かす「デジタルドル」USDT、透明性と規制対応が問われる次のフェーズへ USDTは、暗号資産市場を支える「デジタルドル」として、世界で最も広く利用されているステーブルコインです。その一方で、透明性や監査体制に対する懸念、各国で進む規制との整合性といった課題も抱えています。今後、USDTがグローバルな決済・資金移動の中心であり続けるためには、透明性の確保と規制適応の両立が不可欠であり、その動向はステーブルコイン市場全体の信頼性にも大きく影響するでしょう。 次回の記事では、実際にUSDTが活用されている事例や、Tether社が展開する新たな事業戦略(RWA投資・エネルギー事業など)に焦点を当て、ステーブルコインが「通貨の未来」としてどう進化していくのかを探ります。

センチメンタルな岩狸2ヶ月前
0
0
【USDT特集 1ー1】 ― 「世界初のステーブルコイン」誕生とその仕組み

WEB3ガイド【USDT特集 1ー1】 ― 「世界初のステーブルコイン」誕生とその仕組み

暗号資産の中でも、ビットコインやイーサリアムとは異なり、価格の安定性を特徴とするのが「ステーブルコイン」です。そのステーブルコインの歴史の中で、最初に登場したのがUSDT(Tether)です。 USDTは2014年に誕生し、以来10年以上にわたってステーブルコイン市場をリードしてきました。現在では、暗号資産市場全体の基軸通貨的な存在となっており、日々数十兆円規模の取引に使われています。 取引所間の送金をはじめ、DeFi(分散型金融)やインフレが進む新興国での実際の決済利用まで、USDTの用途は世界中で拡大を続けている一方で、「裏付け資産の透明性」や「各国での規制対応」 をめぐっては、長年にわたり議論が続いてきました。 本記事では、USDTの誕生背景から仕組み、各国の規制動向、そして直面する課題を2回に分けて整理し、なぜこの通貨が世界のデジタル経済に欠かせない存在となったのかをわかりやすく解説します。 USDTとは ― 「1USDT=1ドル」を目指す世界初のステーブルコイン USDT(Tether)は、1枚あたり1米ドルの価値を維持することを目的に設計された世界初のステーブルコインです。発行主体は英領ヴァージン諸島に拠点を置くTether Limited(テザー社)で、その親会社は暗号資産取引所「Bitfinex」を運営するiFinex Inc.です。USDTの開発は2014年、Brock Pierce、Reeve Collins、Craig Sellarsの3名によって「Realcoin」という名称でスタートしました。その後、同年10月にはビットコインのOmni Layerプロトコル上で最初のトークンが発行され、11月に現在の名称である「Tether」へ名称が変更されました。 開発当初の目的は、暗号資産と法定通貨をつなぎ、ブロックチェーン上で安定した価値交換を実現することでした。特に、取引所間の資金移動やドル建ての決済をより迅速かつ効率的にすることを目指して設計されています。 Tether社は、発行済みUSDTの総量を裏付ける資産(主に現金、短期国債など)を保有していると説明しており、理論上、ユーザーが1USDTを1米ドルで償還できる仕組みです。2014年の発行以来、USDTは市場で急速に拡大し、現在では時価総額・流通量ともに世界最大のステーブルコインとなっています。 参考: ステーブルコイン開発の歴史 What Is Tether? The Company Behind USDT | CoinMarketCap USDTの仕組みと裏付け資産 Tether社は、「1USDT = 1米ドル」の価値維持するため、発行済みUSDTに相当する資産を準備金(リザーブ)として保有しています。この準備金には、現金や米国の短期国債をはじめ、オーバーナイトリバースレポ、マネーマーケットファンド、銀行預金など、流動性が高く安全性の高い資産が含まれています。 2025年第1四半期の監査報告によると、2025年3月31日時点のTether社の準備資産総額は約1,492.7億ドルに達し、発行済みUSDT(約1,436.8億ドル)を上回っています。そのうち現金同等の流動性資産は全体の約81%強を占め、特に米国短期国債だけで約985.2億ドルにのぼります。 一方で、Tether社は一部担保付きローン(Secured Loans)やRWAへの投資にも回しており、必ずしもすべて現金で裏付けされているわけではありません。こうした構成によって、「ドルとほぼ同等の価値」を保ちつつ運用益も確保するというバランスを取っています。Tether社は資産内容を四半期ごとに「アテステーション(保証報告)」として公表しており、2025年1Qの報告書では、監査法人BDO Italiaが「重要な誤りなく公正に提示されている」と意見を付けています。こうした定期的な開示体制により、透明性と市場の信頼確保を目指しています。 参考: Tether Approaching $120B in U.S. Treasuries, Confirms Quarterly Operating Profit Over $1B, and Strengthens Global USD₮ Demand in Q1 2025 - Tether.io Tether Releases Q1 2025 Financial Attestation Under El Salvador Oversight 10年以上にわたり市場を支えてきたUSDTは、いまや「ブロックチェーン経済の土台」と呼ばれる存在です。その安定性と即時性は、取引所だけでなく、金融アクセスが制限された地域においても新しい経済活動を生み出しています。一方で、世界各国の規制当局はその影響力の大きさに注目し、ステーブルコインの枠組みを再定義しようとしています。次回の後編(1-2)では、USDTをめぐる各国の法整備、世界におけるUSDTの位置づけ、そしてTether社が抱えている課題について紹介します。

センチメンタルな岩狸2ヶ月前
0
0
USDCについて② ― 上場が示す「透明性の拡張」と実需への展開

WEB3ガイドUSDCについて② ― 上場が示す「透明性の拡張」と実需への展開

前回の記事では、USDCの基本的な仕組みや発行体であるCircleの規制対応、そしてステーブルコイン市場における信頼性について整理しました。2025年に入ってからは、USDCを取り巻く環境に大きな変化が見られます。中でも注目されるのは、Circleのニューヨーク証券取引所(NYSE)への上場と、日本市場におけるSBIとの提携を中心とした事業展開です。これらの動きは、USDCの透明性や信頼性を企業戦略としてどのように活用しているかを示す重要な動きといえます。 本記事では、Circleの上場による企業戦略の変化、日本での取り組み、USDCの決済・送金・企業利用などの実需拡大、さらに今後の課題について整理し、USDCが世界的なデジタルドルとしての地位をどのように強めているのかを見ていきます。 CIRCLEの上場と企業戦略 ― 「透明性」を企業価値へ 2025年6月、USDCの発行体であるCircle Internet Groupは、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に「CRCL」のティッカーで上場しました。これは米国で初めて上場したステーブルコイン発行企業として注目を集めており、同社は上場によって透明性と規制遵守をさらに強化する方針を示しています。 IPOの公募価格は1株あたり31ドルで、上場直後は初値から約20%上昇しました。その後、株価は公開価格の最大で約6倍にまで上昇し、現在も高い水準で安定して推移しています。今後12か月のアナリスト予想では、平均目標株価は約165.43ドル(現在比+約60%)とされています。強気派は230ドル、慎重派は80ドル台を目安としており、見通しは分かれています。調達資金は、国際展開の加速、準備金監査体制の拡充、各国規制への対応などに活用される予定です。上場企業となったことで、Circleは四半期ごとの財務情報開示や内部統制の強化が求められ、ステーブルコイン市場全体の信頼向上にもつながると期待されています。 参考: サークルがNYSEに上場。初値から20%上昇、終値は公開価格の約3倍に(あたらしい経済) Circle’s stock should be worth less than half what it is now, analyst says - MarketWatch Circle Is US's First Publicly Traded Stablecoin Issuer. Now What? 日本市場での展開 ― SBIとの提携と地域戦略 Circleは上場と同時期に、アジア市場での存在感を一気に高めています。その中心にあるのが、SBIホールディングスとの資本・業務提携です。2025年初頭、SBIホールディングスおよびSBI新生銀行は、合計で約5,000万ドルをCircleに出資し、両社は日本国内でのUSDC流通と利用拡大を目指す共同事業を開始しました。この協業により、SBI傘下の暗号資産取引所SBI VC Tradeが金融庁のステーブルコイン規制枠組みの下でUSDCの取扱い承認を取得しました。3月には正式にUSDCの取り扱いが開始され、さらにBinance Japan、bitFlyer、bitbankなどの大手取引所でも、USDCの上場が検討されていると報じられています。 また、Circleは日本法人「Circle Japan株式会社」を設立し、現地規制に沿った運営体制を構築中です。この一連の動きは、単なる市場進出ではなく、日本をグローバルな金融インフラ構築の拠点と位置づける戦略的展開といえます。 参考: SBI、米Circle社IPOで5000万ドル出資 ステーブルコインUSDC事業強化へ 国内初、SBI VCトレードが「USDC」取り扱い開始 | CoinDesk JAPAN USDCの実需拡大 ― 決済・送金・企業利用への広がり Circleの戦略は、USDCを単なる取引用トークンにとどめるものではありません。現在、USDCを決済・送金・企業財務管理の分野での活用が各地で拡大しています。特に、即時決済・低コスト・高い透明性を実現できるUSDCは、国際送金における新たな選択肢として注目されています。 長年のパートナーであるCoinbaseは、Circleの株式を保有しており、USDCを基盤としたWeb3関連の決済ソリューションにおいて協業を進めています。Coinbaseのアプリや取引プラットフォーム上でもUSDCを直接利用できる仕組みが整備されており、企業や金融機関によるUSDC活用の幅を広げています。 一方、CircleはRWA(現実資産)のトークン化やデジタル証券発行に関するプロジェクトを推進しています。具体例として、RWA発行会社Hashnoteを買収し、さらにXDCネットワークとの提携によりUSDCおよびCCTP V2を通じてリアルアセットのブロックチェーン化を支援しています。また、Aave Lavsの「Horizon」プラットフォームを通じて、企業や金融機関はトークン化資産を担保にUSDCを借り入れることも可能となっています。 Circleは将来的に、USDCを「デジタル経済のインターネット・レイヤー」に位置づける構想を掲げています。これは、USDCを通じて企業がグローバルに資金を移動し、会計・決済・財務をより効率的に連携させることを目指すビジョンです。 参考: USDC Stablecoin Issuer Circle Acquires Hashnote, a $1.3B Tokenized RWA Firm Circle Announces Acquisition of Hashnote Coinbase Is Driving Adoption of Circle's USDC for Payments, Financial Services: Bernstein 今後の展望 ― 上場後に問われる制度対応と信頼の深化 Circleの上場は、USDCの「透明性」をより明確に示す大きな一歩となりました。ただし、まだいくつかの課題も残っています。例えば、 各国で異なるステーブルコイン規制(欧州のMiCA、日本の金融庁ガイドラインなど)への対応や、第三者監査の標準化、さらにCBDC(中央銀行デジタル通貨)との共存といった制度面での調整が今後の焦点になるとみられます。 また、上場企業になったことで、Circleは定期的な財務情報の公開や内部管理の強化が必要になります。こうした取り組みは、USDCの信頼をさらに高めることにつながると期待されています。 これからUSDCが「世界中で使えるデジタルドル」として定着していくためには、技術・ルール・運営の3つをバランスよく発展させていくことが大切です。Circleの上場は、そのためのスタートラインに立ったともいえるでしょう。 参考:Circle, Coinbase shares soar as Senate clears path for stablecoin regulation | Reuters 透明性と信頼性で進化するUSDC Circleの上場は、ステーブルコインが「透明性」や「信頼性」を重視する新しい段階に入ったことを示しています。USDCは、単なる取引用トークンの枠を超えて、決済や企業利用など実際の経済活動にも活用が広がっています。一方で、各国の規制対応や監査体制の整備、CBDCとの関係など、解決すべき課題も少なくありません。それでも、Circleが掲げる「世界で使えるデジタルドル」というビジョンは、デジタル金融のインフラづくりに向けた重要な一歩といえるでしょう。 次回の記事では、USDC誕生に影響を与えたUSDTについて詳しく説明します。

センチメンタルな岩狸2ヶ月前
0
0
[ステーブルコイン] USDCについて ① ― 透明性が生むステーブルコインの信頼

WEB3ガイド[ステーブルコイン] USDCについて ① ― 透明性が生むステーブルコインの信頼

ステーブルコイン市場は、ブロックチェーンを基盤としたデジタル通貨の中でも「価格の安定」と「決済での利便性」を両立する存在として急速に拡大しています。その中でも米ドル連動型のUSDC(USD Coin)は、高い透明性と信頼性を前面に打ち出し、成長を続けるデジタル資産市場において独自の地位を確立してきました。 本記事では、USDCの発行体であるCircleの事業モデルや規制への対応、そして市場での役割と今後の課題について整理し、ステーブルコインの信頼性を支える仕組みを考察します。 USDCの誕生背景と発行体 ―「透明性の欠如」への問題意識から生まれたプロジェクト USDCは米国企業のCircleと暗号資産取引所Coinbaseが中心となって立ち上げたプロジェクト「Centre(センター)コンソーシアム」から生まれ、2018年に発行が始まりました。Centreはガバナンスや技術仕様を定める共同体として設計され、当初はCircleとCoinbaseが共同でUSDCの発行・普及を進めていましたが、後に発行責任はCircleに一本化される方向に移行しています。 誕生の背景には、既存の主要ステーブルコイン(特にUSDT=Tether)に対する透明性や裏付け資産の懸念がありました。USDTは市場流動性で優位に立つ一方で、準備資産の構成や監査の透明性で繰り返し批判を浴び、これに対してUSDCはより厳格な裏付け・監査体制を示すことで差別化を図った経緯があります。 参考: 「USDC」発行の米サークル、売却に向けリップルおよびコインベースと協議か=報道 実現フェーズに入ったデジタル通貨~ステーブルコイン・トークン化預金の相違点・導入時の検討ポイント~ USDCの仕組みと構造 ―「1 USDC = 1 USD」を支える準備金の運用と開示 USDCは「1 USDC = 1 USD」の価値を維持するために、発行体が準備金を保有する仕組みを採っています。Circleは準備金として米ドル現金や米国短期国債などの高流動性・低リスク資産を中心に保有する方針を公表しており、その状況は定期的な報告や透明性レポートで開示されています。 準備金の検証については、外部会計事務所による月次の確認が行われており、Circleはこうした報告書を公開することで、準備金の健全性に関する説明責任を果たしています。具体的には、準備金の内訳(現金、短期国債、コマーシャルペーパー等)や総額と発行済みUSDCの比率が開示されます。ただし「監査」と「確認」は法的な厳格さで差があるため、実務上は第三者の信頼できる定期報告の有無が市場の信頼を左右します。 加えて、Circleはグローバルにカストディ(準備金保管)や運用を分散させることで、一箇所の金融機関リスクに依存しない体制をとることを明示しています。この分散管理により、銀行破綻や資金凍結といった単一点リスクの低減が図られています。 参考:Transparency & Stability - Circle 規制対応と信頼の獲得 ― 法整備がUSDCモデルと親和する理由 USDCの成長と信頼獲得は技術的仕組みだけでなく、規制対応の積み重ねに負うところが大きいです。米国では近年ステーブルコイン規制が急速に整備され、2025年に成立したとされるGENIUS Act(Guiding and Establishing National Innovation for U.S. Stablecoins Act)などの動きは、発行体に対して高品質流動資産での裏付け・資金分別・月次の証明・AML(マネーロンダリング対策)遵守を求める点でUSDCの事業モデルと親和性が高く、結果的にUSDCの法的な位置づけと業務基盤の安定化に寄与しています。 Circleは各地域でのライセンス取得や現地法人の設立を進めており、例えば、Circle SingaporeやCircle Japanといった地域法人を通じて、現地ルールに沿った提供体制を構築しており、これが国際展開とローカル規制遵守の両立につながっています。さらに、透明性の観点では、CircleはTransparency Report(準備金の公開)や外部による確認作業を継続して公表することで、発行体としての説明責任を果たしている点が評価されています。ただし、規制の細部(どの資産を許容するか、資産運用で得た利回りの扱いなど)は地域ごとに差があり、これが国際展開の課題となっている点は注意が必要です。 参考: Stablecoins: Issues for regulators as they implement GENIUS Act Circle Expands USDC Access in Japan 市場での立ち位置と課題 ― 監査・国際規制・CBDCとの共存がカギ 市場ではUSDCは「透明性を重視する」勢力の代表と見なされており、取引所での流通や機関投資家の利用においてはUSDT(Tether)との差別化が進んでいます。実際、USDTは市場シェアで上回る場面が多いものの、その準備資産の一部にリスク資産が含まれる点が批判されてきました。一方でUSDCは保守的な準備資産構成と公開報告により、金融機関や規制当局に受け入れられやすい立ち位置を築いています。 とはいえ、課題も依然として残されています。1つ目は、準備金の「完全性」と「実証(第三者監査)」の双方をどのように制度的に担保するかが、引き続き注目されています。2つ目は、GENIUS Actのような厳格化はUSDCに追い風となる一方で、利回り提供(rewards)や取引所との収益配分など、商業モデルと規制の調整が必要です。(規制が商業モデルを制約する可能性) 3つ目は、国際展開の障壁です。各国で許容される準備資産の範囲、AML/KYC基準、税処理、そしてMiCAなど地域法令との整合性が求められ、これらを満たしつつスピード感を持って事業を展開するのは容易ではありません。4つ目の課題として、CBDC(中央銀行デジタル通貨)との共存も検討課題です。CBDCは国家発行のデジタル通貨であり、ステーブルコインとは異なる政策目的を持つため、将来的な役割分担や相互運用性をどう設計するかが問われます。 参考: USD Coin vs. Tether Statistics 2025: Market Trends, Compliance • CoinLaw The Loophole Turning Stablecoins Into a Trillion-Dollar Fight | WIRED 「信頼されるデジタルドル」への道をどう築くか USDCは、しっかりとした準備金の管理と高い透明性を保つことで、ステーブルコインへの信頼を高めてきました。アメリカを中心に進む規制の整備もUSDCの仕組みとよく合っており、今後は金融のインフラとしてさらに重要な役割を担う可能性があります。その一方で、第三者による本格的な監査の仕組みづくりや、国ごとのルールとのすり合わせ、CBDC(中央銀行デジタル通貨)との共存など、まだ解決すべき課題も残っています。世界中で安心して使える「デジタルドル」を実現するためには、技術・法律・運営のバランスをとりながら進化していくことが大切です。

センチメンタルな岩狸2ヶ月前
1
0
[ステーブルコイン] ステーブルコインが変える世界 ― グローバルマネーの再編とデジタル経済の未来

WEB3ガイド[ステーブルコイン] ステーブルコインが変える世界 ― グローバルマネーの再編とデジタル経済の未来

ブロックチェーンの世界は今、ステーブルコインが静かに、しかし確実に存在感を高めています。ステーブルコインとは、法定通貨に価値を連動させた暗号資産の一種で、価格変動が少ないのが特徴です。この「安定したデジタルマネー」が、国際決済や金融の仕組みそのものを変えようとしています。 この記事では、ドルを中心とした国際通貨体制との関係、Web3やリアル資産のトークン化(RWA)などでの活用、企業や政府による制度化の動き、そして国家通貨と民間デジタルマネーが共存する未来像に焦点を当てながら、ステーブルコインが描く新しいお金の姿を追っていきます。 ステーブルコインはドルの力を強めるのか、それとも揺るがすのか 現在発行されているステーブルコインの役9割は米ドルに連動しています。つまり、ブロックチェーンの世界でも「ドル経済圏」が広がっているのです。 一方で、これはドルの影響力をさらに強める動きと見る人もいれば、各国の通貨主権を脅かすリスクと考える人もいます。特に、インフレや為替不安のある新興国では、地元通貨よりもステーブルコインを使う方が安心だという声も増えています。デジタル空間の中で、ドルの存在感はこれまで以上に強まっていると言えるでしょう。 広がるステーブルコインの活躍 ― WEB3、RWA、ゲームなど ステーブルコインの使い道は、もはや投資だけにとどまりません。Web3決済では、NFTの売買やDeFiサービスでの送金に活用されています。さらに注目されているのがRWA(リアルワールドアセット:現実資産のトークン化)の分野です。例えば、シンガポールのUBSやトークン化企業Sygnumは、不動産や国債などの実物資産をブロックチェーン上でトークン化し、その配当や利息の支払いをUSDCなどのステーブルコインで行う実証を進めています。また、MakerDAOも米国債などの実物資産を担保にしたステーブルコイン運用を行っており、RWA市場は既に数十億ドル規模に拡大しています。これにより、国境を越えた投資や資産運用がよりスムーズに行えるようになっています。 参考:UBS, PostFinance and Sygnum Conduct Cross-Bank Payments on Ethereum ゲーム業界でも、ステーブルコインは新しい経済圏を生み出しています。Sky Mavis(Axie Infinity)やGala GamesなどのPlay-to-Earn(遊んで稼ぐ)型ゲームでは、報酬や取引の決済にステーブルコインを採用する動きが進んでいます。トークン価格の変動に左右されずに補修を受け取れる仕組みが整い、プレイヤーが安心して参加できる環境が生まれています。 参考:Coins to watch in 2022: To Infinity and Beyond - Axie Infinity rules the Play-2-earn space 民間企業と政府の協業事例 ― VISA、PAYPAL、JPYC、CIRCLE・TETHER ステーブルコインをめぐる動きは、グローバル企業から日本のスタートアップまで、決済や送金の新しいインフラを築こうとする動きが広がっています。その先には、民間と政府が協調してつくる次世代の通貨エコシステムが見え始めています。 > Visa ― ステーブルコイン決済の本格導入へ Visaはここ数年、ブロックチェーンを活用した決済技術に力を入れています。2025年には、USDC(米ドル連動型ステーブルコイン)を自社の決済ネットワークに正式導入し、EthereumやSolanaなど複数のブロックチェーンを跨ぐ清算を実現しました。これにより、従来の国際送金よりも高速かつ低コストでの決済が可能になっています。 Visaの幹部は「ブロックチェーンはカードネットワークの延長線上にある次世代の決済基盤」と語っており、今後はステーブルコインを国際決済の標準インフラとして位置付けていく構えです。 参考:Visa - Visa Expands Stablecoin Settlement Support > PayPal ― 「PYUSD」でデジタルドル決済を推進 2023年、PayPalは自社ブランドの米ドル連動型ステーブルコイン「PYUSD」を発表しました。このコインは米ドル預金と短期国債で100%裏付けされており、常に1:1で米ドルに換金できます。2025年には、ブロックチェーンを活用した国際送金や小口決済にも活用が広がり、既存のPayPalアカウント間での送金にも対応しています。さらに、決済インフラ大手Fiservとの提携を通じて、商業決済ネットワークでの活用も進んでいます。こうした取り組みにより、ステーブルコインが「実際に使えるデジタルドル」として日常の決済の中に浸透し始めています。 参考: Press Release: PayPal Launches U.S. Dollar Stablecoin - Aug 7, 2023 PayPal Drives Crypto Payments into the Mainstream, Reducing Costs and Expanding Global Commerce > JPYC ― 日本発の円建てステーブルコイン 日本でもステーブルコインの実用化に向けたチャレンジが進んでおり、その代表格がJPYC株式会社です。同社は日本円と1:1で連動する円建てステーブルコイン「JPYC」を発行し、2025年10月には本格的に市場へ投入されました。JPYCは、円の信頼性とブロックチェーンの利便性を両立させるモデルとして注目されており、既にクレジットカードの返済手段としての導入が発表されています。その流れの中で同社は「デジタル円」の民間版としてのポジションを狙っており、政府の資金決済法改正や関連制度整備が王位風邪となっています。 参考: 日本初のステーブルコインJPYC始動 関連銘柄が急騰 【国内初(※1)】クレジットカード返済方法に、日本円建ステーブルコイン「JPYC」が導入されます。 > Circle・Tether ― 世界のステーブルコイン市場を支える二大軸 米Circle Internet Group社は、USDCの発行体として、金融機関や政府との連携を広げています。特にVisaとの提携を通じて、企業間取引(B2B)や国際清算におけるUSDCの利用が進んでおり、既存の決済ネットワークにステーブルコインを統合する動きが加速しています。2025年には、MastercardやFIS(金融サービスソリューション企業)との提携も発表され、銀行や加盟店がUSDCを使ってグローバル決済や清算を行える仕組みが整っています。 参考: Stablecoin Giant Circle Is Launching a New Payments and Remittance Network EEMEA | Mastercard Newsroom 一方で、Tether(USDT)は現在、世界最大の流通量を誇るドル連動ステーブルコインです。2025年時点で発行総額は1,200億ドルを超え、USDCを上回る規模となっています。USDTは取引所やDeFi、国際送金などで最も広く利用されており、特に中南米や東南アジアでは、インフレ回避やドル代替として生活レベルで使われ始めています。Tether社は裏付け資産の透明性を高めるため、監査報告書を四半期ごとに公開し、規制対応にも注力しています。 参考:Tether Approaching $120B in U.S. Treasuries, Confirms Quarterly Operating Profit Over $1B, and Strengthens Global USD₮ Demand in Q1 2025 - Tether.io こうした民間の動きに合わせて、各国政府も制度整備を加速しています。シンガポール、香港、韓国、日本では、ステーブルコインの裏付け資産・償還義務・ライセンス制度などを定めた法制度が順次整備されつつあります。政府の関心は、規制というよりも安全で信頼できるステーブルコイン市場を構築することへと移行しています。 新しい通貨インフラとしてのステーブルコイン ステーブルコインの魅力は、誰もがアクセスできる開かれた金融システムを実現できる点にあります。銀行口座を持たない人でも、スマートフォン一つでデジタルマネーを利用できることがこの仕組みの最大の強みです。 また、ブロックチェーン技術によって国境や通貨の壁を越えて資金を送金できる新しいマネーインフラが実現のものとなっています。各国では、中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)と、民間企業が発行するステーブルコインの役割分担を意識した制度設計が進められており、公的通貨の安定性と民間のイノベーションを両立させる取り組みが進む中で、次世代の決済インフラとしての形が徐々に整ってきています。 変わりゆく通貨の形 ― デジタルマネーがもたらす次の時代へ ステーブルコインは、「投資や投機の対象」から「実際に使える通貨」へと進化しています。国が発行する通貨と、民間が生み出すデジタルマネーが共に流通し、世界中の人々が瞬時に価値をやり取りできる環境が整いつつあります。こうした動きは、単なる技術革新ではなく、私たちがお金の使い方や価値のあり方を見つめ直すきっかけにもなっています。各国がCBDCの整備を進め、民間がステーブルコインを発行することで、「国家通貨と民間デジタルマネーが共存する新しい通貨体制」が少しずつ形になり始めています。 ステーブルコインは、グローバル経済の仕組みそのものを静かに、しかし確実に変えています。それは、お金の概念そのものが国境を越えて再定義される時代の幕開けと言えるでしょう。

センチメンタルな岩狸2ヶ月前
0
0