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USDCについて②  上場が示す「透明性の拡張」と実需への展開


Circle上場と日本展開から見る、2025年のUSDC

前回の記事では、USDCの基本的な仕組みや発行体であるCircleの規制対応、そしてステーブルコイン市場における信頼性について整理しました。2025年に入ってからは、USDCを取り巻く環境にも大きな変化が見られます。中でも注目されるのが、Circleのニューヨーク証券取引所(NYSE)への上場と、日本市場におけるSBIとの提携を中心とした事業展開です。

これらの動きは、USDCそのものの仕組みを変えるものではありませんが、発行体であるCircleの経営情報がより広く公開されるようになったことや、日本を含む各地域でUSDCを利用するための環境が広がっていることを示しています。本記事では、Circleの上場、日本での取り組み、決済・送金・企業利用などへの展開を通じて、USDCがどのように利用領域を広げているのかを整理します。


Circleの上場と企業戦略 ― 「透明性」を企業価値へ

2025年6月、USDCの発行体であるCircle Internet Groupは、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に「CRCL」のティッカーで上場しました。IPOの公募価格は1株31ドルで、初値は69ドルと公開価格を約123%上回り、初日の終値も83ドル台まで上昇しました。その後も株価は大きく変動し、一時は公開価格の6倍を超える水準に達するなど、市場から高い関心を集めました。

CircleはUSDCの準備資産について第三者による証明書を定期的に公開してきましたが、上場企業となったことで、USDCの準備資産に関する情報に加えて、Circle自体の売上や収益構造、事業コスト、リスクなども定期的な開示の対象になります。USDCを利用する企業や投資家にとって、発行体の経営状況を確認できる情報が増えた点は、上場による大きな変化の一つです。

一方、CircleがIPOで調達した資金は、USDCの準備資産そのものに充てられるものではありません。Circleは目論見書で、調達資金の一部を株式報酬に伴う税負担などに使用し、残額を運転資金や一般的な企業目的に充てる方針を示しています。上場によって企業としての情報開示が増えたことは、USDCの仕組みとCircleの経営状況を分けて理解するうえでも重要です。


日本市場での展開 ― SBIとの提携と地域戦略

Circleは日本市場でもUSDCの利用環境を広げています。その中心となっているのがSBIグループとの協業です。CircleとSBIホールディングスは2023年11月、日本国内でのUSDC流通や銀行サービス、Web3関連事業について基本合意を締結しました。

その後、SBI傘下のSBI VCトレードは2025年3月に電子決済手段等取引業者として登録され、同月から一般利用者向けにUSDCの取り扱いを開始しました。Circleは日本法人「Circle Japan株式会社」を通じて国内事業を展開しており、Binance Japan、bitbank、bitFlyerについてもUSDCの取り扱いに向けた計画を公表しています。

さらに2025年6月のCircle上場時には、SBIホールディングスとSBI新生銀行がそれぞれ2,500万ドル、合計5,000万ドルをCircleへ投資しました。2023年から続く業務面での協力に資本面での関係も加わったことで、SBIグループとCircleの連携は一段と深まっています。日本では海外発行のステーブルコインを扱うための制度が整備されており、USDCが実際に利用できる環境も徐々に広がっています。


USDCの実需拡大 ― 決済・送金・企業利用への広がり

CircleはUSDCを暗号資産取引に利用されるトークンとして運営する一方、決済や送金、企業の資金管理など、実際の経済活動で利用できる環境の拡大も進めています。ブロックチェーン上で直接送金できるUSDCは、国境をまたぐ資金移動やオンラインサービスでの決済などで活用されています。

長年のパートナーであるCoinbaseもUSDCの普及を支える主要企業の一つです。Coinbaseの取引サービスやウォレットなどを通じてUSDCを利用できるほか、CircleとCoinbaseはUSDCから生じる収益の一部を共有する関係を構築しています。USDCの流通量が拡大することは、Circleの事業に加えて、USDCを扱う取引所や金融サービスにも影響を与えます。

USDCの用途はRWA(現実資産)のトークン化にも広がっています。Circleは2025年1月、トークン化マネーマーケットファンド「USYC」を発行するHashnoteを買収しました。また、Aave Labsが展開する機関投資家向け市場「Horizon」では、トークン化された資産を担保としてUSDCなどを借り入れる仕組みが提供されています。さらにCircleは、RWAや貿易金融での活用を進めるXDC NetworkにUSDCとCCTP V2を展開する計画も発表しており、USDCと既存の金融資産をブロックチェーン上で接続する取り組みも進んでいます。


今後の展望 ― 上場後に問われる制度対応と実利用

Circleの上場によって企業としての情報開示が拡大し、日本を含む各地域ではUSDCを利用するための環境も整いつつあります。一方、USDCが世界各地で利用されるためには、それぞれの国・地域のステーブルコイン規制への対応が欠かせません。欧州ではMiCA、日本では資金決済法を中心とした制度の下でステーブルコインが扱われており、Circleも各市場に合わせた対応を進めています。

また、USDCの対応サービスやネットワークが増えても、それだけで決済や送金の利用が広がるとは限りません。企業が実際にUSDCを利用する際には、送金コストや法定通貨との交換、会計処理、規制対応なども関わります。今後はUSDCを利用できる場所の拡大とともに、国際送金、決済、企業財務、RWAなどの分野でどの程度継続的に利用されるかが重要になります。

CircleのNYSE上場によって発行企業としての情報開示が広がり、日本ではSBIグループを中心にUSDCを利用するための環境が整い始めました。USDCはステーブルコインとしての基本的な仕組みを維持しながら、取引所での売買から決済・送金、企業利用、オンチェーン金融へと利用範囲を広げています。こうした動きを追うことで、USDCが「デジタルドル」としてどのような役割を担おうとしているのかも見えやすくなります。

次回の記事では、USDCと並んで世界のステーブルコイン市場で大きなシェアを持ち、USDCの誕生にも影響を与えたUSDTについて、その仕組みや特徴、USDCとの違いを詳しく説明します。

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