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USDCについて② ― 上場が示す「透明性の拡張」と実需への展開

センチメンタルな岩狸

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前回の記事では、USDCの基本的な仕組みや発行体であるCircleの規制対応、そしてステーブルコイン市場における信頼性について整理しました。2025年に入ってからは、USDCを取り巻く環境に大きな変化が見られます。中でも注目されるのは、Circleのニューヨーク証券取引所(NYSE)への上場と、日本市場におけるSBIとの提携を中心とした事業展開です。これらの動きは、USDCの透明性や信頼性を企業戦略としてどのように活用しているかを示す重要な動きといえます。

本記事では、Circleの上場による企業戦略の変化、日本での取り組み、USDCの決済・送金・企業利用などの実需拡大、さらに今後の課題について整理し、USDCが世界的なデジタルドルとしての地位をどのように強めているのかを見ていきます。


Circleの上場と企業戦略 ― 「透明性」を企業価値へ

2025年6月、USDCの発行体であるCircle Internet Groupは、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に「CRCL」のティッカーで上場しました。これは米国で初めて上場したステーブルコイン発行企業として注目を集めており、同社は上場によって透明性と規制遵守をさらに強化する方針を示しています。

IPOの公募価格は1株あたり31ドルで、上場直後は初値から約20%上昇しました。その後、株価は公開価格の最大で約6倍にまで上昇し、現在も高い水準で安定して推移しています。今後12か月のアナリスト予想では、平均目標株価は約165.43ドル(現在比+約60%)とされています。強気派は230ドル、慎重派は80ドル台を目安としており、見通しは分かれています。調達資金は、国際展開の加速、準備金監査体制の拡充、各国規制への対応などに活用される予定です。上場企業となったことで、Circleは四半期ごとの財務情報開示や内部統制の強化が求められ、ステーブルコイン市場全体の信頼向上にもつながると期待されています。

参考:

サークルがNYSEに上場。初値から20%上昇、終値は公開価格の約3倍に(あたらしい経済)

Circle’s stock should be worth less than half what it is now, analyst says - MarketWatch

Circle Is US's First Publicly Traded Stablecoin Issuer. Now What?


日本市場での展開 ― SBIとの提携と地域戦略

Circleは上場と同時期に、アジア市場での存在感を一気に高めています。その中心にあるのが、SBIホールディングスとの資本・業務提携です。2025年初頭、SBIホールディングスおよびSBI新生銀行は、合計で約5,000万ドルをCircleに出資し、両社は日本国内でのUSDC流通と利用拡大を目指す共同事業を開始しました。この協業により、SBI傘下の暗号資産取引所SBI VC Tradeが金融庁のステーブルコイン規制枠組みの下でUSDCの取扱い承認を取得しました。3月には正式にUSDCの取り扱いが開始され、さらにBinance Japan、bitFlyer、bitbankなどの大手取引所でも、USDCの上場が検討されていると報じられています。

また、Circleは日本法人「Circle Japan株式会社」を設立し、現地規制に沿った運営体制を構築中です。この一連の動きは、単なる市場進出ではなく、日本をグローバルな金融インフラ構築の拠点と位置づける戦略的展開といえます。

参考:

SBI、米Circle社IPOで5000万ドル出資 ステーブルコインUSDC事業強化へ

国内初、SBI VCトレードが「USDC」取り扱い開始 | CoinDesk JAPAN


USDCの実需拡大 ― 決済・送金・企業利用への広がり

Circleの戦略は、USDCを単なる取引用トークンにとどめるものではありません。現在、USDCを決済・送金・企業財務管理の分野での活用が各地で拡大しています。特に、即時決済・低コスト・高い透明性を実現できるUSDCは、国際送金における新たな選択肢として注目されています。

長年のパートナーであるCoinbaseは、Circleの株式を保有しており、USDCを基盤としたWeb3関連の決済ソリューションにおいて協業を進めています。Coinbaseのアプリや取引プラットフォーム上でもUSDCを直接利用できる仕組みが整備されており、企業や金融機関によるUSDC活用の幅を広げています。

一方、CircleはRWA(現実資産)のトークン化やデジタル証券発行に関するプロジェクトを推進しています。具体例として、RWA発行会社Hashnoteを買収し、さらにXDCネットワークとの提携によりUSDCおよびCCTP V2を通じてリアルアセットのブロックチェーン化を支援しています。また、Aave Lavsの「Horizon」プラットフォームを通じて、企業や金融機関はトークン化資産を担保にUSDCを借り入れることも可能となっています。

Circleは将来的に、USDCを「デジタル経済のインターネット・レイヤー」に位置づける構想を掲げています。これは、USDCを通じて企業がグローバルに資金を移動し、会計・決済・財務をより効率的に連携させることを目指すビジョンです。

参考:

USDC Stablecoin Issuer Circle Acquires Hashnote, a $1.3B Tokenized RWA Firm

Circle Announces Acquisition of Hashnote

Coinbase Is Driving Adoption of Circle's USDC for Payments, Financial Services: Bernstein


今後の展望 ― 上場後に問われる制度対応と信頼の深化

Circleの上場は、USDCの「透明性」をより明確に示す大きな一歩となりました。ただし、まだいくつかの課題も残っています。例えば、 各国で異なるステーブルコイン規制(欧州のMiCA、日本の金融庁ガイドラインなど)への対応や、第三者監査の標準化、さらにCBDC(中央銀行デジタル通貨)との共存といった制度面での調整が今後の焦点になるとみられます。 また、上場企業になったことで、Circleは定期的な財務情報の公開や内部管理の強化が必要になります。こうした取り組みは、USDCの信頼をさらに高めることにつながると期待されています。 これからUSDCが「世界中で使えるデジタルドル」として定着していくためには、技術・ルール・運営の3つをバランスよく発展させていくことが大切です。Circleの上場は、そのためのスタートラインに立ったともいえるでしょう。

参考:Circle, Coinbase shares soar as Senate clears path for stablecoin regulation | Reuters


透明性と信頼性で進化するUSDC

Circleの上場は、ステーブルコインが「透明性」や「信頼性」を重視する新しい段階に入ったことを示しています。USDCは、単なる取引用トークンの枠を超えて、決済や企業利用など実際の経済活動にも活用が広がっています。一方で、各国の規制対応や監査体制の整備、CBDCとの関係など、解決すべき課題も少なくありません。それでも、Circleが掲げる「世界で使えるデジタルドル」というビジョンは、デジタル金融のインフラづくりに向けた重要な一歩といえるでしょう。

次回の記事では、USDC誕生に影響を与えたUSDTについて詳しく説明します。

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