
Aptos(アプトス)は、トランザクションの並列実行とMove言語を採用するレイヤー1ブロックチェーンです。Metaでブロックチェーンプロジェクト「Diem」に携わった開発者らが設立したAptos Labsを中心に開発され、2022年10月にメインネットが稼働しました。
ブロックチェーンでは、利用者やアプリケーションが増えるにつれて処理の遅延や手数料の上昇が起こる場合があります。Aptosはトランザクション処理、合意形成、データ保存などを分離して改良できる構造を採用し、ネットワークの処理能力と開発者・利用者双方の使いやすさを高めることを目指しています。
この記事では、Aptosの並列実行、合意形成、Move言語の仕組みを整理し、2025年時点で公表されていた企業サービスや大阪・関西万博での活用事例を紹介します。
Block-STMによるトランザクションの並列実行
Aptosの技術的な特徴の一つが、トランザクションを並列に実行する「Block-STM」です。トランザクションを一件ずつ順番に処理する方式では、特定のアプリケーションに利用が集中した際に、ネットワーク全体の処理が遅れる可能性があります。
Block-STMでは、複数のトランザクションを並列に処理したうえで、同じデータを書き換える競合が発生した場合に、その影響を検出して再実行します。これにより、取引結果の整合性を維持しながら処理を効率化する仕組みです。
高い処理能力と短い待ち時間は、多数の操作が継続的に発生するゲームやソーシャルサービス、決済関連アプリケーションなどで重要になります。ただし、実際の利用時の速度はネットワークの混雑状況やアプリケーションの設計にも左右されるため、理論上の性能だけで評価するのは適切ではありません。
AptosBFTとMove言語が支えるネットワーク設計
Aptosでは、バリデータが取引の順序と実行結果に合意するため、ビザンチン障害耐性を備えたコンセンサスプロトコルを使用しています。一般にAptosBFTと呼ばれる仕組みで、一部のバリデータに障害や不正な動作が生じた場合でも、一定の条件下でネットワークの合意を維持できるように設計されています。
スマートコントラクトの開発には、MetaのDiemプロジェクトから受け継がれたMove言語を採用しています。Moveではトークンなどのデジタル資産を「リソース」として扱い、意図しない複製や破棄を防ぎやすい点が特徴です。所有権やアクセス権限をコード上で明確に表現できるため、資産を扱うアプリケーションの開発に適した設計となっています。
Aptosは、利用者が取引手数料を直接負担しなくてもよいスポンサードトランザクションなど、アプリケーションの操作負担を抑える機能も提供しています。こうした機能を活用すれば、開発者は秘密鍵やガス代に不慣れな利用者を想定したサービスを設計しやすくなります。
ウォレットやDeFiから企業サービスへ活用が拡大
Aptos上では、ウォレット、分散型金融、NFT、ゲームなどのサービスが展開されています。例として、ウォレットのPetra、ウォレットや分散型取引所を提供するPontem、レンディングプロトコルのAries Marketsなどが挙げられます。
開発者向けにはハッカソンや助成プログラムも実施されており、ネットワークの処理性能を示すことに加え、利用者が継続的に使用するアプリケーションをどれだけ増やせるかが、エコシステム拡大の重要な要素となります。
企業サービスへの導入例として、韓国ロッテグループ傘下のDaehong Communicationsは、子会社が運営するモバイルバウチャーサービス「Giftiel」に2025年7月からAptosを統合しました。同社が同年9月に発表した内容によると、統合後のバウチャー発行数は500万件を超え、利用者は130万人を上回りました。
日本では、Aptosが大阪・関西万博の「EXPO2025デジタルウォレット」を支えるブロックチェーン基盤に採用されました。Aptos Labsの2025年8月25日の発表では、同年8月18日時点で50万件を超える新規アカウントが作成され、Aptos上で437万件を超えるトランザクションが処理されたとしています。
これらの数値は、ウォレットの登録数やオンチェーン処理件数を示すものであり、すべての登録者が暗号資産を日常的に使用していることを意味するものではありません。一方、一般消費者向けのバウチャーや国際イベントのデジタルサービスに利用された事例は、AptosがDeFiやNFT以外の用途でも運用されていることを示しています。
Aptosを評価する際に確認したいポイント
Aptosは、Block-STMによる並列実行、Move言語による資産管理、利用時の負担を軽減する機能を組み合わせたL1ブロックチェーンです。技術面では高スループットや低遅延を重視していますが、ブロックチェーンとしての評価は処理速度だけで決まるものではありません。
今後の普及には、開発者数やアプリケーションの充実度に加え、実際の利用者が継続して使用するサービスを増やせるかが関係します。2025年に公表されたGiftielやEXPO2025デジタルウォレットの事例は、Aptosの技術が一般利用者向けサービスでどのように使われるかを確認できる事例といえるでしょう。

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