WEB3ガイド

[ステーブルコイン] ステーブルコインの規制と信頼 【Part2:韓国・シンガポール・香港】編

アジアで進むステーブルコイン制度化

前編(Part 1)では、米国・欧州・日本を中心に、ステーブルコインが「信頼」と「透明性」を基盤に制度化されていく動きを追いました。その流れはアジアにも広がっています。韓国、シンガポール、香港では、ステーブルコインを金融システムにどう組み込み、イノベーションと金融安定を両立させるかを巡る議論が進んでいます。

興味深いのは、3地域が同じ方向へ一斉に進んでいるわけではない点です。韓国では制度設計を巡る議論が続き、シンガポールでは規制枠組みの具体化が進められています。香港では2025年8月にステーブルコイン法が施行され、ライセンス審査の段階へ入りました。制度整備の進み方を比較すると、アジアで「信頼できるデジタル通貨」を構築する方法にも違いが見えてきます。


韓国 ― ウォン建てステーブルコインを巡る制度設計

韓国では、ウォン建てステーブルコインを含むデジタル資産の包括的な制度整備に向けた議論が進んでいます。政府や国会では複数の法案や制度案が検討される一方、中央銀行であるBank of Korea(BOK)は、民間発行のウォン建てステーブルコインが金融政策や資本移動に与える影響を注視しています。

BOKは2025年6月の金融安定報告書でもステーブルコインの潜在的なリスクを取り上げました。ウォン建てステーブルコインそのものを否定する姿勢ではありませんが、韓国銀行側からは銀行を中心とした段階的な導入を支持する発言も出ています。制度を急速に広げれば、非銀行事業者による通貨類似サービスが金融システムへ与える影響も検討する必要があるためです。

このため韓国では、発行主体、準備資産、償還、内部統制などの具体的なルールをどこまで求めるかが制度設計の焦点となっています。米国や欧州で法整備が進むなか、国内の金融政策との整合性をどのように確保するかが韓国独自の論点になっています。


シンガポール ― SCS規制で「信頼できる発行体」を選別

シンガポールでは、Monetary Authority of Singapore(MAS)が2023年8月、Single-Currency Stablecoin(SCS)に関する規制枠組みの最終方針を公表しました。対象はシンガポール国内で発行され、シンガポールドルまたはG10通貨に連動するSCSです。

MASが示した枠組みでは、準備資産の構成や保管、額面での償還、資本要件、情報開示などを発行者に求める方針です。一定の基準を満たすステーブルコインには「MAS-regulated stablecoin」という表示を認める考えも示されました。単に価格が1ドル前後で推移しているかを見るのではなく、発行者の財務や準備資産まで含めて信頼性を確認する発想が制度の中心にあります。

シンガポールでは、MASが進めるProject Guardianなどを通じ、トークン化された金融資産やデジタル金融市場の実証も進められています。SCS規制そのものとは別の取り組みですが、ステーブルコインが将来、トークン化資産の決済や国際的な資金移動に利用される可能性を考えると、発行規制と市場インフラの整備を並行して進めている点は注目されます。


香港 ― ステーブルコイン法施行でライセンス審査へ

香港では2025年8月1日、「Stablecoins Ordinance」が施行され、法定通貨参照型ステーブルコインの発行に関するライセンス制度が始まりました。香港で対象となるステーブルコインを発行する事業者などにはHKMAのライセンスが必要となり、準備資産の管理、額面での償還、リスク管理、AML/CFT対策などが求められます。

HKMAは制度開始後にライセンス申請を受け付け、2025年9月30日までに銀行、テクノロジー企業、金融機関などから計36件の申請を受けました。当時は審査段階であり、最初のライセンスは2026年初頭をめどに限定的に付与する方針が示されていました。法律を整える段階から、実際にどの企業へ発行を認めるかを選別する段階へ進んだことになります。

一方、中国本土では民間ステーブルコインに対する慎重姿勢も伝えられました。2025年10月には、Ant GroupやJD.comなどが香港で検討していたステーブルコイン関連計画について、中国当局の意向を受けて一時停止したと海外メディアが報じています。香港がデジタル金融市場の拡大を目指すなか、本土側の通貨・金融管理との距離感も市場の注目点になっています。


3地域に共通する「信頼」の条件

韓国、シンガポール、香港では制度の進展度に違いがありますが、議論の中心には共通する要素があります。特に重視されているのが、ステーブルコインの価値を支える準備資産、利用者が額面で償還できる仕組み、発行者の財務・リスク管理、AML/CFTへの対応です。

ステーブルコインは価格を一定に保つことを目的としていても、その信頼性は名称や仕組みだけで決まるものではありません。誰が発行し、どのような資産を保有し、利用者から償還請求を受けた際にどのように対応するのかまで制度化することで、初めて金融サービスとしての信用が形成されます。

3地域を比較すると、ステーブルコイン規制の競争は「規制を厳しくするか緩くするか」という単純な構図から、利用を認めながらどこまでリスクを管理できる制度を作れるかという競争へ移っていることが分かります。


制度の違いがアジアのデジタル金融競争を左右

ステーブルコインを巡るアジアの動きは、一つの制度モデルへ収束しているわけではありません。韓国は金融政策への影響を見極めながら制度案を詰め、シンガポールは発行体の信頼性を重視したSCS枠組みを整えています。香港はライセンス制度を施行し、実際の発行事業者を選ぶ段階へ進みました。

今後、各地域で発行されたステーブルコインが国際送金やトークン化資産の決済に利用されるようになれば、制度間の違いは事業者の参入先や資金の流れにも影響します。アジアのステーブルコイン市場で問われるのは発行数の多さより、利用者と金融機関が継続して利用できる信頼性をどこまで制度として築けるかになりそうです。

Web3ステーブルコインStablecoin仮想通貨暗号資産ブロックチェーンBlockchainblockchainステーブルコイン政策韓国シンガポール香港規制MASSCSHKMA

このニュースをシェア

コメント

0件のコメント
コメントがありません。