
暗号資産といえば、まず思い浮かぶのはビットコインですよね。しかし、ビットコインには大きな弱点があります。それは価格の変動が激しいということです。1日で10%以上も価値が上下することがあり、投資対象としては魅力的でも、通貨として日常的に使うには不安定すぎるのです。この問題を解決するために誕生したのが、「ステーブルコイン(Stablecoin)」です。名前の通り、価格が安定しているコインであり、その安定性は暗号資産の世界に新しい経済基盤をもたらす重要な要素となっています。
この記事では、ステーブルコインについて、仕組みや種類、そして実際の活用例まで詳しく紹介していきます。
1.ステーブルコインの基本構造
ステーブルコインには、主に3つのタイプがあります。
① 法定通貨担保型:米ドルやユーロなど、法定通貨を実際に保管し、それと同等のコインを発行するタイプです。USDT(Tether)、USDC(USD Coin)など、これらは銀行口座などに現金や国債を預け、その裏付けのもとに発行されます。
② 暗号資産担保型:イーサリアムなどのほかの暗号資産を担保としてロックし、その上で新たなコインを発行します。代表的なものとしてはDAI(MakerDAO)があります。価格変動する資産を担保にするため、一定の安全率(例えば150%以上)を保つ仕組みが採用されています。
③ アルゴリズム型:担保を持たず、供給量の調整(発行と焼却)によって価格を一定に保とうとするタイプです。理論的には魅力的ですが、過去にはTerraUSD(UST)の崩壊のように失敗例もあり、現在は慎重な議論が続いています。
2.「1ドル=1コイン」を維持する仕組み
ステーブルコインは、価格が1ドルを上回ったり下回ったりしたときに、裁定取引(アービトラージ)を通じて安定を取り戻します。例えば、USDCの価格が1.02ドルまで上がった場合、発行体は新しいコインを発行して市場に供給し、価格を下げます。逆に0.98ドルに下がった場合には、コインを回収して供給量を減らし、価格を引き上げます。こうした自動的・制度的な調整により、1ドル=1コインの価格が維持されています。
3.ステーブルコインの実際の活用例
ステーブルコインは、単なる投資ツールではなく、実際の経済活動にも活用されています。
- 海外送金:従来の銀行送金よりも手数料が安く、数分で送金可能。
- 取引所での基軸通貨:暗号資産同士の取引において、USDTやUSDCが「ドルの代わり」として使われます。
- オンライン決済:一部の企業やサービスでは、ステーブルコインでの支払いを受け付けています。
- DeFi(分散型金融):レンディング、ステーキング、ファーミングなど、さまざまな金融サービスの基盤として活用されています。
さらに近年では、日本国内でもステーブルコインの導入が本格化しています。その代表例が、JPYC株式会社による円建てステーブルコイン「JPYC」です。
2025年10月に発行が予定されているこのコインは、1JPYC=1円を目指して設計されており、ブロックチェーン上で日本円のように使える決済手段として注目されています。JPYCは銀行口座を介さずに個人間・企業間での送金や決済を可能にし、ガス代(手数料)を最小限に抑える設計が特徴です。また、法令に準拠した形での発行が進められており、国内でのデジタルマネー利用を拡大させる動きの一環とされています。
このようにステーブルコインは、国際送金から国内決済まで、リアルな経済活動とブロックチェーン技術を結びつける存在として、世界的にもその役割を広げつつあります。
参考:円建てステーブルコイン「JPYC」、2025年10月27日から発行へ
ステーブルコインは暗号資産の実用化を支える「安定の土台」
ステーブルコインは、価格の安定を実現することで、暗号資産を投機の対象から「実際に使える通貨」へと進化させた存在です。法定通貨との連動によって信頼性を確保し、ブロックチェーンの特性を活かすことで、スピーディーで低コストな取引を可能にしています。今やステーブルコインは、暗号資産市場を支える基盤として、DeFi(分散型金融)や国際送金、オンライン決済など、さまざまな分野で欠かせない存在となっています。
「価格の安定」というシンプルな発想から始まったこの仕組みは、これからのデジタル経済を支える重要な柱として、今後さらに存在感を高めていくでしょう。
次回は、日本国内でのライセンスの種類についても詳しく解説します。

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