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USDCについて ①  Circleの準備金と規制対応から見るステーブルコインの信頼性


USDCはどのように「1ドル」の価値を支えているのか

USDCは、米Circleが発行する米ドル連動型ステーブルコインです。1USDCを1米ドル相当として利用できるよう設計されており、暗号資産取引やオンチェーン決済、国際送金など、ブロックチェーン上で米ドルの価値を移転する手段として利用されています。

発行が始まったのは2018年9月です。Circleは当初から、流通するUSDCに対応する準備資産を保有し、その内容を外部から確認できる仕組みを重視していました。その後、CircleとCoinbaseが共同運営していたCentre ConsortiumがUSDCのガバナンスを担いましたが、2023年にCentreは独立組織としての役割を終え、Circleが発行とガバナンスを担う現在の体制へ移行しています。

USDCの信頼性を考えるうえで重要なのは、価格が米ドルと連動する仕組みそのものです。ステーブルコインは名称に「安定」を掲げていても、その価値を維持する方法は銘柄によって異なります。USDCの場合、その中心にあるのが米ドル建ての準備資産と、1対1での償還を支える金融インフラです。


準備金の大半を米短期国債などで運用

Circleが米証券取引委員会(SEC)へ提出した資料によると、2025年6月末時点でUSDC準備金の約87%は「Circle Reserve Fund」に置かれ、残りは複数の銀行に現金として保有されていました。Circle Reserve FundはBlackRockが運用する米国の政府系マネー・マーケット・ファンドで、資産はBNYが保管しています。

同ファンドの主な投資対象は、残存期間3カ月以下の米国債、米国債を担保とする翌日物レポ取引、現金です。USDCの発行残高に対応する資産を高い流動性を持つ金融商品で保有することで、利用者から償還要求が発生した際に米ドルへ戻せる体制を構築しています。

準備資産の存在をCircle自身が説明するだけで終わらせず、第三者による確認も行われています。CircleはUSDCの準備金についてBig Fourの会計事務所による月次のアテステーションを公表し、準備資産の価値が流通するUSDCと同額以上であるかを確認しています。Circle Reserve Fundについては日次、準備金全体や発行・償還状況についても定期的に情報を公開しています。アテステーションは財務諸表全体を対象とする監査とは目的や対象範囲が異なるため、両者を区別して見る必要があります。


SVB破綻で表面化した準備金の保管リスク

準備金が存在し、その内容が公開されていても、ステーブルコインの価格が常に完全に安定するとは限りません。それを示したのが、2023年3月に米Silicon Valley Bank(SVB)が経営破綻した際のUSDCです。

Circleは当時、USDC準備金のうち33億ドルをSVBに預けていたことを明らかにしました。同行の破綻を受けて資金へのアクセスに不透明感が生じると、USDCは一時的に1ドルを下回りました。その後、米当局がSVBの預金者を保護する措置を示し、Circleも準備金が利用可能になると発表したことでドルとの連動を回復しています。Circleはこの出来事を受け、銀行パートナーの拡充や準備金管理体制の見直しを進めました。

この事例から分かるのは、USDCの信頼性を考える際には準備金の総額に加え、「何を保有しているか」「どこで保管しているか」「必要なときに償還できるか」という点まで確認する必要があることです。Circleによる継続的な情報開示は、リスクそのものをなくす仕組みというより、利用者がこうしたリスクを確認しやすくする役割を持っていると考えられます。


GENIUS Act成立、各地域でも規制対応を進める

米国では2025年7月18日、決済用ステーブルコインの連邦規制を定めるGENIUS Actが成立しました。同法は、認可を受けた発行体に対して対象となる流動性資産による裏付けや準備資産構成の月次開示、マネーロンダリング対策などを求める枠組みを設けています。USDCが従来から採用してきた準備資産の管理や情報開示と重なる部分も多く、米国でステーブルコイン事業を展開するうえで規制上の基準が明確になる方向へ進みました。

Circleは米国外でも規制対応を進めています。欧州では2024年7月、フランス当局から電子マネー機関のライセンスを取得し、EUの暗号資産市場規制「MiCA」に準拠したUSDCの発行を開始しました。シンガポールではCircle Singaporeが金融管理局(MAS)からMajor Payment Institutionライセンスを取得しています。

日本でも2025年3月、SBI VCトレードがUSDCを取り扱うための規制上の手続きを完了し、同月26日から一般向けの取り扱いを本格的に開始する方針が示されました。CircleはCircle Japan KKを設け、国内の登録事業者との連携を通じてUSDCの流通拡大を進めています。国ごとに法制度が異なるなか、発行体自身の管理体制に加えて、各地域でどの事業者を通じて利用できるかもUSDCの普及を左右する要素となります。


透明性はUSDCを評価するための基盤

USDCは、米ドル建ての高流動性資産による裏付け、準備金の定期開示、第三者によるアテステーションを組み合わせて1ドルとの連動を支えています。2018年の発行開始時から透明性と規制対応を重視してきた方針は、ステーブルコインを金融サービスへ広げていくCircleの事業戦略にもつながっています。

一方、2023年のSVB破綻時には、十分な準備資産を持っていたとしても、その保管先へのアクセスが不透明になればUSDCの価格に影響が及ぶことが示されました。ステーブルコインの「安全性」は発行残高と準備金の数字だけで判断できるものではなく、資産構成、保管先、償還経路、規制対応を合わせて見る必要があります。

USDCにおける透明性の価値は、「リスクがない」と示すことより、利用者が発行体の状態を継続して検証できる点にあります。ステーブルコインが決済や送金など金融インフラへ利用範囲を広げるほど、こうした検証可能性と実際の償還能力が、信頼を支える重要な要素になっていくと考えられます。

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