
ウォレットを使った還付モデルを共同開発
日本円建てステーブルコイン「JPYC」を発行するJPYC株式会社と、免税電子化システムを手がける株式会社日本免税は2026年3月3日、訪日外国人向けの消費税還付にJPYCを活用するモデルの構築に向け、業務提携に合意したと発表しました。
両社は、2026年11月1日に始まる外国人旅行者向け消費税免税制度のリファンド方式を見据え、税関による持ち出し確認後に、還付額を利用者のWeb3ウォレットへ送付する仕組みを検討します。
新制度では、訪日旅行者が商品を購入する際に消費税を支払い、出国時に国外へ持ち出すことが確認された後、免税店から消費税相当額の還付を受けます。従来の購入時免税から事後還付へ移ることで、不正転売などを抑える狙いがあります。
カードや銀行口座に依存しない還付を想定
リファンド方式では、免税店が旅行者へ還付金を送る方法を整備する必要があります。クレジットカードへの返金や海外口座への送金を利用する場合、店舗側では返金先情報の取得や管理、手数料、問い合わせ対応などが発生する可能性があります。
JPYCと日本免税が構想するモデルでは、利用者が指定したウォレットへ日本円建てステーブルコインを送付します。カード番号や銀行口座情報を店舗で管理する必要を減らし、税関の確認結果に基づく還付処理をブロックチェーン上で行う設計を想定しています。
両社は、カードの解約や番号変更によって返金できなくなるケースや、海外送金の着金まで時間を要する課題の緩和につながると説明しました。ブロックチェーン上に送付履歴が記録されるため、還付状況を確認しやすくする狙いもあります。
ただし、発表されたのは還付モデルの共同構築に関する提携です。具体的な提供開始日、対応ウォレット、利用するブロックチェーン、手数料、本人確認方法などは示されていません。
日本免税の特許技術を還付システムへ活用
日本免税は、消費税の還付方法や返金設定、免税購買データの活用に関する複数の特許を保有しています。両社は、これらの技術をJPYCによる還付システムへ組み込む方針です。
発表によると、特許第7671098号はポイントやデジタル価値を利用した還付、特許第7671106号は返金設定の不備を検知して利用者を案内する仕組み、特許第7671099号は免税購買データと行動データの活用に関係しています。
還付先をウォレットに設定する場合、アドレスの入力ミスや対応ネットワークの違いが送付エラーにつながる可能性があります。日本免税が保有する技術は、こうした設定上の問題を検知し、還付手続きを完了しやすくする用途での活用が想定されています。
受け取ったJPYCについては、オンチェーン上で外貨建てステーブルコインへ交換する利用方法も構想されています。ただし、交換には対応サービスや流動性が必要となり、利用可能な機能は国や地域、ウォレット、ネットワークによって異なる可能性があります。
JESTAを見据えた本人確認との連携構想
両社は、日本版ESTAとも呼ばれる電子渡航認証制度「JESTA」と、デジタルウォレットを将来的に連携させる構想にも言及しました。
旅行者の渡航情報やパスポート情報とウォレットを結び付けることができれば、店頭での本人確認から還付先の設定までを一つの流れにまとめられる可能性があります。ただし、JPYCによる還付とJESTAの連携は両社が示した将来構想であり、政府が採用を決定した制度ではありません。
日本免税の石井邦知CEOは、リファンド方式への移行を免税体験を見直す機会と位置付けました。JPYCの岡部典孝代表は、免税還付への活用が日本円ステーブルコインの実需拡大につながるとの考えを示しています。
リファンド方式では、免税店が旅行者へ確実に還付するための運用体制が必要になります。JPYCを利用するモデルが実用化されれば、ステーブルコインが暗号資産取引の枠を越え、訪日旅行者向けの行政・商取引手続きへ組み込まれる事例となります。今後は、制度要件に沿った本人確認や送付管理、ウォレットを持たない旅行者への対応を含め、実際の店舗で運用できる仕組みに落とし込めるかが重要になります。
公式発表:JPYC PR TIMES

コメント