
関連業者への調査検討を報道
高市早苗首相を想起させる名称を使った暗号資産「SANAE TOKEN」を巡り、金融庁が関連業者への調査を検討していると3月3日に報じられました。報道では、発行や運営に関与した事業者について暗号資産交換業者としての登録が確認できず、資金決済法上の位置付けを含め、実態を確認する可能性があると伝えられています。
一方、金融庁は正式な調査の開始や、関係者への聞き取りの有無を明らかにしていません。3月6日の閣議後記者会見で片山財務相は、個別案件の対応状況について回答を避けたうえで、利用者保護の観点から必要な実態把握に努める考えを示しました。
片山財務相は、実態把握と正式な調査は同じではないとの認識も示しています。そのため、当時確認できたのは関連業者への調査検討を伝える報道と、金融庁による一般的な説明までで、行政処分や資金決済法違反が確定した段階ではありません。
高市首相が承認や関与を否定
SANAE TOKENは2月25日、NoBorder DAOが進める「Japan is Back」プロジェクトのインセンティブトークンとして発表され、ソラナブロックチェーン上で取引が始まりました。名称や関連画像には高市首相を想起させる表現が使われていたため、本人や首相事務所との関係を巡って混乱が広がりました。
高市首相は3月2日、自身の公式Xを通じ、SANAE TOKENについて事前に知らされておらず、承認や関与も一切ないと表明しました。自身や事務所が関わる公式プロジェクトではないことを明確にし、誤認しないよう注意を呼びかけています。
否定表明後には、SANAE TOKENの価格が大きく下落したと報じられました。著名な政治家を想起させる名称や画像が市場の関心を集めていたため、本人による関係否定が取引参加者の判断に影響したとみられます。
その後、NoBorderはSANAE TOKENを含むプロジェクトの中止を公式Xで表明しました。ただし、ブロックチェーン上ですでに発行され、分散型取引所などで流通したトークンは、運営側がプロジェクトを中止しても自動的に消滅するものではありません。
発行自体より販売や交換への関与が論点
日本では、暗号資産を発行しただけで、直ちに暗号資産交換業者の登録が必要になるとは限りません。一方、暗号資産と法定通貨の売買、暗号資産同士の交換、その媒介や取次ぎ、利用者資産の管理などを業として行う場合には、資金決済法に基づく登録が必要です。
そのため、SANAE TOKENを巡る法的な論点は、関係事業者が登録されていたかという点に加え、国内利用者を対象とした販売、交換、媒介などの業務にどの程度関与していたかにあります。分散型取引所でトークンが取引されていたという事実だけで、発行関係者が暗号資産交換業を行ったと直ちに判断されるわけではありません。
トークンの設計や発行に関与したとされる事業者は、資金決済法違反には当たらないとの見解を示す一方、金融庁から確認を求められた場合には対応する考えを表明しています。登録義務の有無は、実際の販売方法、資金の受け取り、流動性供給、宣伝、交換への関与などを踏まえて個別に判断されることになります。
今回の問題では、著名政治家を想起させる名称によって公式な関係があるような誤認が生じた点と、トークンの発行・流通に関係した事業者の役割が分かりにくかった点が重なりました。金融庁が具体的な調査や処分を公表した段階ではありませんが、暗号資産交換業の登録制度に加え、発行主体や運営責任を利用者へどこまで明確に示すかという課題を浮き彫りにした事例といえます。

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