米上院の民主党議員12人は、暗号資産(仮想通貨)市場の構造を規律する7本柱の包括的規制フレームワークを発表した。トークンの分類から分散型金融(DeFi)の監督強化まで幅広くカバーし、これまで停滞していた立法議論が本格化する見通しだ。
共同提案者にはルーベン・ガレゴ、マーク・ワーナー、カーステン・ジリブランド、コーリー・ブッカー各上院議員が名を連ねる。声明では「世界の暗号資産市場規模が4兆ドルに達する中、規制の空白を放置できない」と指摘。投資家保護、規制の抜け穴解消、さらにトランプ大統領とその家族による暗号資産関連事業を通じた利得行為の防止を柱に据えた。
具体策としては、商品先物取引委員会(CFTC)に証券以外のトークンの現物市場監督権限を付与し、証券か否かを判断する手続きを整備。トークン発行者の情報開示義務、取引所やカストディ事業者向けの専用規則、市場操作防止や消費者保護を強化する規定も盛り込む。米国居住者向けにサービスを提供するプラットフォームには金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)への登録を義務付け、銀行秘密法やマネーロンダリング防止(AML)規制の網に組み込む方針だ。
民主党はDeFiを「不正資金流通の主要経路」と位置付け、新たな監督手段の導入を強調。ただしプロトコル開発者への登録義務適用は明確にしておらず、開発者保護を明記した共和党案と対照的だ。また、ステーブルコイン発行者による金利付与行為を直接・間接的に禁止する条項も盛り込んだ。トランプ大統領が署名した「ジーニアス法」施行後もリワード型プログラムが横行している現状を踏まえたものとみられる。
最も注目されるのは倫理条項だ。議員とその家族による暗号資産プロジェクトへの関与や利益取得を禁じ、保有状況の公開を義務化する案を提示。民主党は「トランプ氏が前例のない形で暗号資産を私益追求に利用した」と批判し、金融規制当局への予算増額や超党派的代表性の確保を求めた。この提案は、7月に下院を通過した共和党主導の「クラリティ法案」とも連動する。両案はいずれもトークン定義や監督権限の明確化を狙うが、DeFiや倫理規制を巡る立場は異なる。共和党は迅速な法制化を重視する一方、民主党は「十分な協議なくして拙速に進められない」としている。
市場関係者は「両党がそれぞれ具体的な青写真を示したことで、上院銀行委員会を中心とする超党派協議が一気に加速する可能性がある」と指摘。立法のスピード、倫理条項、DeFi規制範囲で妥協点を見いだせるかが焦点となる。
コメント