毎年、下半期になると世界各地で大型のブロックチェーン関連イベントが開かれる。その中でも、8月に日本で開催される「WebX」と、9月に韓国で開催される「KBW(Korea Blockchain Week)」は、来場者数の記録を更新し続け、市場の熱気を象徴する存在となっている。
9月23日、24日の両日、ソウル・広壮洞のウォーカーヒルホテル&リゾートで行われた「KBW 2025」には、主催のWeb3エコシステムビルダーFactblockと仮想通貨取引所Bithumbの呼びかけで、延べ2万8500人が参加した。うち外国人は約1万人で、全体の35%を占めた。前年比76%の成長となる。
出展企業は5200社超にのぼり、展示ブースも2024年の60から110へ倍増。サイドイベントは450件以上がソウル各所で同時多発的に開かれ、江南や梨泰院、聖水といった繁華街では大規模イベントが連日開催された。人気アーティストのIllitやJay Park、Grayらも登場し、フェスティバル色を強めた。公式日程は2日間のみだが、前後を含めると1週間にわたり「都市全体が祝祭化」するのが特徴だ。
世界的プレーヤーが韓国市場に注目
会場では、米国トランプ大統領の長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏と次男エリック・トランプ氏(World Liberty Financial共同創業者)がビデオメッセージを寄せ、「韓国はアジアの暗号資産市場において、米国に次ぐ確固たるリーダーになる」と語った。また、Sui共同創業者のアデニイ・アビオドゥンCPOは、次世代データ可用性プロトコル「Walus」に触れ、「韓国の開発者コミュニティがグローバルな参照モデルを築いてほしい」と期待を示した。
ステーブルコインと決済インフラが主題に
今回のKBWで最も注目を集めたテーマのひとつがステーブルコインだ。米ホワイトハウス出身のBo Hines氏(Tether USAT CEO)は、第4四半期にUSDTを正式ローンチする計画を明かし、「安全で合法的なデジタルドルを誰もが日常的に使えるようにする」と強調した。
Samsung Electronics、Mastercard、PayPalといった世界的企業も参加し、ステーブルコインの成長性を議論。MastercardのAshok Venkateswaran副社長は「東西間の資金移動が大規模化し、より優れた顧客体験につながる」と述べた。Samsungは「Samsung Wallet」を軸に、カード・身分証・免許証などを統合した認証・決済サービスの強みを訴えた。さらに、韓国で携帯決済サービスを展開するDanalは、ウォン建てステーブルコインと実物決済を統合したプラットフォームを披露。11月の正式ローンチに先立ち、発行から利用・決済までを体験できるデモを公開した。
政策側からの後押しも
与党「共に民主党」の閔炳德(ミン・ビョンドク)議員は基調講演で「ウォン建てステーブルコイン導入は通貨主権の観点から急務」と訴えた。資本金5億ウォン以上で発行可能とする法案を巡る安定性懸念については「資本金規模ではなく、100%以上の準備資産と金融当局の継続監督により安定性は担保される」と反論した。本会期終了翌日の25日には、Naverと仮想通貨取引所Upbit運営のDunamuが包括的株式交換を検討しているとのニュースが伝わり、ステーブルコイン関連業界への注目がさらに高まった。
日本「WebX」との共通点と相違点
日韓両イベントに参加した業界関係者は、「WebXは政策当局の国家戦略が出発点となり、そこからグローバルな議論に広がっていく。一方、KBWはグローバルな視点を踏まえつつ、国内市場の動きを中心に語られる印象」と話す。また「日本は数年前から規制が整備され、安定した環境下で投資促進や再整備を進めている。韓国は急拡大した市場をいかに規制の枠組みに取り込むか模索している段階」と分析。年々拡大する規模に「来年はさらにどう進化するか期待している」と付け加えた。
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