高市早苗首相は21日、政府人事を大幅に刷新し、松本尚衆院議員(自民党、千葉13区)を新たなデジタル大臣に任命した。前任の平将明氏の辞任を受けた人事であり、医療分野出身者がデジタル庁のトップに就くのは設立以来初めてとなる。デジタル庁はこれまで、ブロックチェーンやWeb3を含む日本のデジタル産業政策全般を統括してきた。
医師からデジタル庁トップへ
松本氏は1962年生まれ。日本医科大学救命救急センター長や教授を歴任し、救急・外傷外科の専門医として知られる。その後、政界に転じ、外務大臣政務官や防衛大臣政務官などを務めた。医療現場で培った経験をもとに、災害対応や地域医療政策に深く関わってきた経歴を持つ。人気医療ドラマ「コード・ブルー」のモデルとなった人物としても知られ、「現場主義」のリーダーシップと国民目線の政策推進に定評がある。
「国民がデジタル化の恩恵を実感できる社会へ」
就任会見で松本大臣は「医療現場での経験を政策に活かし、国民一人ひとりがデジタル化の恩恵を実感できる社会を実現したい」と述べた。また「首相からは、社会全体のデジタル化を強力に推進するよう指示を受けた」と語り、デジタル庁の実行力強化に意欲を示した。SNS上では「医療現場で発揮されたリーダーシップがデジタル行政でも生かされることを期待する」との声がある一方、ITやデジタルガバナンス分野での専門性不足を懸念する意見も上がっている。
政策転換のシグナル
今回の人事は、日本のデジタル政策が「システム・プラットフォーム中心の平時体制(平時代)」から、「現場対応力と国民体感型のデジタル化(松本時代)」へと転換するシグナルとみられている。特に行政手続きの簡素化、医療データの連携、地域基盤のデジタルインフラ整備などが重点課題に挙げられ、医療現場に根ざした発想が政策形成に反映される可能性が高い。
デジタル・金融政策への影響は限定的
専門家の間では、今回の人事によって暗号資産や金融庁の政策方針が大きく変わる可能性は低いとの見方が一般的だ。高市政権下では依然として「親暗号資産」路線が維持されており、金融審議会で進むデジタル資産の税制緩和策も来年にかけて継続される見通しだ。ステーブルコイン市場では、JPYC社による資金移動業ライセンス取得後の第1次発行が27日に金融庁支援のもと実施される予定であり、信託銀行主導による新たな発行体制の整備も進行中である。

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