
部屋写真を起点に家具配置をシミュレーション
家具・インテリア用品を展開するニトリは2026年8月17日、スマートフォンなどで撮影した部屋の写真を使い、家具の配置やコーディネートを試せる「お部屋の写真deシミュレーション」を発表した。東京大学発のAIスタートアップ、燈と共同開発したサービスで、8月5日からニトリアプリとニトリネットで無料提供している。
利用者が部屋の写真を読み込むと、AIを活用してニトリの商品を配置したイメージを確認でき、写真に写っている既存家具を削除して別の商品に置き換えることも可能だ。対象はテーブル、ソファ、ラグ、照明器具などニトリネットで扱う主要商品約2500点で、今後も順次拡大する予定としている。
家具は商品単体の画像や寸法だけでは、自宅に置いた際の圧迫感や既存家具との相性まで把握しにくい。ニトリも「部屋に収まるか」「今ある家具と合うか」といった購入時の悩みを開発背景に挙げており、実際の生活空間を起点に購入後の姿を可視化することで、商品ページだけでは埋めにくかった情報の差を縮める狙いがある。
ARや3D接客から写真ベースへ拡張
ニトリは以前からデジタル技術を使った家具選びを進めてきた。「NITORI AR」ではスマートフォンを通じて家具を自宅空間に実物大で表示でき、「お部屋deコーディネート」では床や壁、家具の色を設定しながら、カーテンやラグなどを組み合わせた部屋のイメージを確認できる。
加えて、オンラインインテリア相談では専門スタッフが3Dシミュレーターを用い、家具のサイズやレイアウト、コーディネートを提案している。こうした既存サービスが、利用者による商品選択やスタッフとの相談を軸にしてきたのに対し、新サービスは最初の入力を「現在の部屋写真」に置き、買い替え前と買い替え後の空間を同じ画面上で比較できるようにした。
この違いは、単なる操作方法の変更よりも、家具選びの入口を変えた点に意味がある。商品を探してから自宅に置く姿を想像する流れから、自宅の状態を見ながら商品を比較する流れへ移ることで、EC上の商品情報と実際の生活空間がより直接的につながる。
EC拡大でも根強い実店舗需要
こうした機能の背景には、家具・インテリア分野でEC利用が広がる一方、実物を確認して購入したい需要が依然として強いことがある。2024年の「生活雑貨、家具、インテリア」のBtoC-EC市場規模は2兆5616億円、EC化率は32.58%に達し、2019年の1兆7428億円から市場は大きく拡大した。
それでも、2025年12月から2026年1月に全国の男女500人を対象として実施された家具購入に関する調査では、購入先として実店舗を挙げた人が66.6%、インターネット通販は33.4%だった。EC利用が定着しても店舗が優勢なのは、家具ではサイズ感や色味、素材感に加え、周囲とのバランスや設置後の圧迫感まで確認したい需要が大きいためとみられる。
このため家具ECでは、価格や配送、品ぞろえといった従来の競争軸に加え、購入後の状態を画面上でどこまで具体的に想像させられるかが重要になっている。実在する商品を自宅写真に配置する仕組みは、単体の商品画像では伝えにくい空間全体の関係性を補い、購入前の比較方法そのものを変える可能性がある。
AIはオンラインと店舗をつなぐ接客手段へ
ただし、シミュレーション上で自然に見える配置が、そのまま実際の設置可否を示すわけではない。表示される商品サイズにはAIによる推定が含まれるため、ニトリは購入時に設置場所を実測し、商品の実寸を確認するよう案内している。扉の開閉スペースや通路幅、壁の凹凸なども含め、最終的な設置判断には利用者自身による確認が必要になる。
一方で、自宅写真で候補を絞った後にニトリネットで商品詳細を確認したり、店舗で実物を確かめたりする使い方が定着すれば、AIシミュレーションはEC内で完結する機能ではなく、オンラインと実店舗を横断する接客手段としての役割を持つ。とりわけ大型家具では、購入前の不安を減らすことがそのまま購買行動に影響しやすく、シミュレーションの精度や対象商品の広がりが今後の利用定着を左右しそうだ。
家具ECの競争は「ネットで商品を買えるか」という段階から、「購入前に自宅での使用状態をどこまで具体的に見せられるか」へ移りつつある。約2500点の商品を実際の部屋写真に配置できるニトリの取り組みは、AIを検索や推薦に使う流れから、購入直前の迷いを減らす接客領域へ活用範囲を広げる動きとして位置付けられる。
公式発表:ニトリ PR TIMES

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