
A350など4機で9月15日開始
大韓航空は2026年9月11日、米スペースXの低軌道衛星通信サービス「スターリンク」を利用した機内Wi-Fiを、9月15日から一部の航空機で無料提供すると発表した。通信設備の改修を終えたエアバスA350-900型機3機とボーイング777-300ER型機1機の計4機で先行する。
対象機材は米州、欧州、東南アジアなどの中・長距離路線を中心に投入し、一部の短距離路線でも運航する。スターリンク搭載便では、ファースト、ビジネス、エコノミーの全座席クラスから無料で接続できる。大韓航空によると、東アジアのフルサービスキャリアがスターリンクを採用するのは初めてという。
乗客は端末を機内モードに切り替えて機内Wi-Fiネットワークを選択し、専用ポータル「wifi.koreanair.com」にアクセスする。搭乗券に記載された氏名と座席番号を入力して広告を視聴すれば接続でき、会員登録や有料プランの購入は求められない。利用の可否は運航機材によって決まるため、サービス開始直後は搭乗便が対象機材で運航されるか確認する必要がある。
有料・用途別だった機内通信を無料の高速サービスへ
大韓航空はこれまで、対応機材でパナソニック・アビオニクスやViasatの機内Wi-Fiを有料提供してきた。国際線の長距離便では、インターネットプランが1便20.95ドルまたは2時間10.95ドル、メッセージ専用プランが1便5.95ドルに設定されている。動画は原則480p以下で、クラウドサービスも利用制限の対象だった。
スターリンク搭載便では時間制や用途別の課金がなくなり、ウェブ閲覧やメッセージ、音楽再生に加えて、OTT動画のストリーミング、オンラインゲーム、ファイル転送、クラウド型の共同作業ツールも利用できる。従来は料金や通信機能によって限られていた用途が広がることで、長距離便での過ごし方も、コンテンツ視聴から業務まで大きく変わる可能性がある。
こうした通信環境を支えるスターリンクは、高度約550キロメートルを周回する多数の低軌道衛星でネットワークを構成する。静止軌道衛星より地表に近いため通信の遅延を抑えやすいが、利用方法には機内特有の制約も残る。音声・ビデオ通話とSNSのライブ配信は、機内の快適性や航空保安への配慮から制限され、安全性に問題のあるサイトや違法サイトへのアクセスも規制される。
グループ5社への導入計画が実用段階に
今回のサービス開始は、大韓航空が2025年12月に公表したグループ導入計画の具体化に当たる。同社は当時、アシアナ航空、ジンエアー、エアプサン、エアソウルを含む韓進グループ傘下5社へスターリンクを順次導入し、早ければ2026年第3四半期以降に提供を始める方針を示していた。
大韓航空との統合を控えるアシアナ航空も、9月15日から一部の長距離路線でスターリンクによる無料Wi-Fiを始める。開始時点の対象はA350-900型機9機とA330-300型機1機の計10機で、その後は残る同型機を含む保有機材へ順次拡大する計画だ。両社が同時期に同じ通信基盤へ移行することで、統合後の機内サービスをそろえる動きも実用段階に入る。
大韓航空は2027年末までに、運航中の自社機の大半へスターリンクを広げる。改修前の航空機では従来の有料Wi-Fiを継続するため、無料サービスの普及速度は、機体改修と日々の運航をどこまで円滑に両立できるかに左右されそうだ。
無料高速Wi-Fiが航空会社の競争軸に
世界の航空業界では、エールフランスやユナイテッド航空、エミレーツ航空などがスターリンクの採用を進めており、機内Wi-Fiを有料の付加サービスから無料の基本サービスへ移す流れが広がっている。エミレーツ航空では、サービス開始から7カ月後の2026年7月までに接続回数が100万回を超え、機内でも動画やSNSを利用したいという需要の大きさが表れた。
大韓航空にとって次の焦点となるのは、対象機材を増やすペースと、予約時や搭乗前にスターリンク対応便を確認できる案内の整備だ。無料で安定した接続が幅広い路線に定着すれば、機内Wi-Fiの料金と通信品質は、座席や機内食と並んで航空会社のサービス水準を比較する要素として存在感を増すことになる。
公式発表:大韓航空

コメント