
評価損益や保有資産を生成AIから確認
オンライン証券を手掛けるマネックス証券は2026年8月19日、ChatGPTやClaudeから証券口座の情報を照会できる「MONEX MCP Server」の提供を開始した。口座を連携すると、評価損益や保有資産、注文状況、入出金履歴などを自然言語で確認できるほか、資産額の推移を確認する「MONEX VIEW」や資産設計を支援する「MONEX VISION」に関連する機能も利用できる。
利用者はマネックス証券との連携に同意したうえで、「現在の資産状況を教えて」「今月の入出金履歴を確認したい」といった質問を入力し、必要な口座情報を呼び出す。これまで証券会社のウェブサイトやアプリ内で個別に確認していた情報へChatGPTやClaudeからアクセスできるようになるため、生成AIは金融情報を検索する手段から、個人の口座データへ接続するインターフェースへと役割を広げる。
ChatGPT向けにはOpenAIの審査・承認を経たプラグインとして公開され、Claudeではカスタムコネクタを通じて接続する。マネックス証券は、OpenAIの審査・承認を受けたChatGPTプラグインとしてMCPサーバーを提供する取り組みについて、同社が調査対象とした主要証券会社の中では初としている。
問い合わせ対応から資産分析、外部AI連携へ
マネックス証券は今回のサービスに先立ち、生成AIの活用範囲を段階的に広げてきた。2025年1月30日に開始した「マネックスアシスタント(β版)」では、同社サービスに関するQ&Aや株価、指数などを質問形式で確認できる機能を提供し、まずは情報検索や問い合わせ対応の領域に生成AIを取り入れた。
2026年6月23日には資産分析サービス「MONEX VISION」を刷新し、生成AIを活用した「パーソナルアドバイス(β版)」を追加した。利用者の資産状況や目標に応じて資産配分、追加購入、リバランス、取り崩しに関する提案を表示する仕組みで、AIの役割を一般的な情報提供から、個人の資産状況を踏まえた分析へと広げている。
MONEX MCP Serverは、その流れを外部の生成AIまで延長する位置付けとなる。2026年3月期第4四半期時点で総口座数約292万口座、預かり資産約10.8兆円を抱える証券事業がChatGPTやClaudeとの口座連携に踏み込んだことで、MCPを介した金融サービスが新興サービス中心の取り組みから、主要ネット証券の顧客接点へ広がる可能性も出てきた。
ウィブル証券が先行、MCP活用は競争段階へ
もっとも、国内証券業界でAIと証券口座を接続する動きはマネックス証券が最初ではない。ウィブル証券は2026年5月に「Webull MCP Server」を公開し、自然言語によるマーケットデータの取得や注文執行、ポジション管理に対応したほか、7月にはChatGPTなどの生成AIと総合口座を連携し、保有資産の確認や注文内容の作成まで対象を広げている。
このため、マネックス証券が掲げる「主要証券会社初」は証券業界全体での初事例を意味するものではなく、同社が2026年8月19日時点で調査した総合証券大手5社と主要ネット証券5社の範囲での位置付けとなる。ただ、先行していた新興系オンライン証券に続き、約10.8兆円の預かり資産を持つマネックス証券が参入したことで、生成AIと証券口座を接続する仕組みが主要ネット証券のサービス競争へ入り始めた点は重要だ。
こうした流れは海外でも進んでいる。OpenAIは金融・企業データとChatGPTを組み合わせる取り組みを広げ、AnthropicもFactSetやS&P Capital IQ、Morningstar、LSEGなど金融情報サービスとの接続を拡充しており、金融分野の生成AIは回答生成そのものより、外部データや業務システムとどこまで安全に接続できるかを競う段階へ移りつつある。
証券会社の競争軸に「AIとの接続性」
オンライン証券はこれまで、手数料、取扱商品、取引ツール、スマートフォンアプリの操作性などを中心にサービスを競ってきた。今後、利用者が普段使う生成AIから証券口座へアクセスする仕組みが広がれば、「どのAIから、どの範囲まで金融情報を扱えるか」という接続性も、証券サービスを選ぶ際の要素になり得る。
各社の設計にはすでに違いが表れている。ウィブル証券が注文執行につながる機能まで展開する一方、マネックス証券は評価損益や保有資産の照会、資産分析との接続を前面に置く。金融口座を扱う以上、認証やアクセス権限、誤操作への対策が欠かせず、AIにどこまで操作権限を持たせるかは利便性と安全性の両面から各社の設計思想が表れる領域となる。
今後はSBI証券や楽天証券を含む他の主要ネット証券が同様の接続方式を採用するかに加え、照会、分析、注文といった機能のどこまでを生成AIに開放するかが焦点となる。生成AIの性能差だけでは差別化が難しくなる中、証券業界では顧客データとAIを安全かつ使いやすく接続する基盤そのものが、新たな競争力として問われていきそうだ。
公式発表:マネックス証券

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