
コンビニのレジでJPYC決済を検証
ブロックチェーン関連サービスを手掛けるHashPortは8月6日、ローソン、KDDIと連携し、ローソン高輪ゲートウェイシティ店で円建てステーブルコイン「JPYC」を使った店頭決済の実証実験を実施したと発表しました。利用者が「HashPort Wallet」に表示したバーコードを店舗で提示し、既存のPOSレジを通じて支払いを処理する仕組みで、コンビニのPOSレジを使ったステーブルコイン決済の実証は国内初としています。
実証には参画企業の関係者が参加し、POSシステムとの接続状況に加え、レジでの操作手順、決済速度、ウォレットの使いやすさなどを確認しました。利用者側ではノンカストディアル型のHashPort Walletを使用し、店舗側の決済処理には企業・店舗向けサービス「HashPort Wallet for Biz」の機能を活用することで、既存のレジ運用にステーブルコイン決済を組み込めるかを検証しています。
普及の鍵を握る既存決済網との接続
ステーブルコインは法定通貨などに価値を連動させるデジタル資産であり、価格変動の大きい暗号資産と比べ、送金や決済に利用しやすいとされています。しかし、利用者同士で送金できる環境が整ったとしても、それだけで日常的な支払い手段として定着するわけではありません。小売店のPOSや売上管理、決済代行、会計処理と接続し、既存の店舗業務を大きく変えずに運用できる仕組みが必要になります。
今回の実証では、POSレジから送信された購入金額などの情報を決済ゲートウェイとHashPortのシステムが受け取り、JPYCの残高確認と決済処理につなげました。専用端末や店頭掲示用のQRコードを追加せず、通常のレジ業務に組み込む方式を採用したことで、店舗側の設備負担を抑えながらステーブルコインを受け付けられる可能性を検証しています。
さらに、利用者がブロックチェーン上の取引手数料を別途準備しなくても決済できるガスレス方式も採用されました。暗号資産に不慣れな利用者でも操作しやすい環境を整える狙いがあり、HashPort、KDDI、ローソンが7月10日に締結した基本合意を、実店舗での決済まで具体化した形です。
決済速度に手応え、操作性には課題
実証参加者からは、バーコードを表示してから2~3秒程度で決済が完了し、既存のコード決済と比べても実用化を検討できる速度だったとの評価が出ています。また、POSレジ、決済アグリゲーター、ウォレットが連携し、レシートの支払い方法欄に「ステーブルコイン」と印字されたことは、ブロックチェーン上の決済が既存の店舗システムで処理されたことを示す象徴的な場面となりました。
一方で、利用者はバーコードを表示した後、ウォレット上で決済を承認する必要があるため、一般的なコード決済より操作が一段階増えます。実証ではわずかな差に見える待ち時間や追加操作であっても、来店客が集中するコンビニではレジの処理能力や利用者の離脱に影響する可能性があり、商用化に向けては操作手順の簡素化が課題になります。
加えて、一般利用へ拡大する場合には、決済速度や使いやすさだけを確認すれば足りるわけではありません。初めて利用する人への案内、通信障害や操作ミスへの対応、決済の取り消し、返品や返金まで含めた運用設計が求められます。レジ担当者がブロックチェーンに関する専門知識を持たなくても処理できる体制を構築できるかも、店舗展開を左右する重要な論点です。
店舗対応だけでは広がらない利用市場
記者の視点から見ると、この実証の意義は、コンビニでJPYCによる商品購入が成立したことだけにあるわけではありません。ステーブルコインを既存の小売決済網に接続できれば、店舗は新たな専用機器を大量に導入せず、従来のキャッシュレス決済に近い運用で受け付けられる可能性があります。そのため、技術面の検証というより、小売現場への実装条件を探る試みとして見る必要があります。
ただし、利用できる店舗が増えたとしても、消費者がJPYCを保有する機会や、既存の決済手段から乗り換える理由が乏しければ、利用は限定的になると考えられます。クレジットカードやコード決済が広く普及している日本では、還元率、手数料、決済速度、利便性のいずれかで既存サービスを上回る価値を示せなければ、日常利用への移行は難しいでしょう。
そのため今後は、給与や送金、ポイント、デジタルコンテンツの取引などを通じて受け取ったステーブルコインを、日常の買い物で自然に使える循環を構築できるかが焦点になります。店頭決済はその出口に当たるため、ステーブルコインを受け取る場面と使う場面を一体で整備できるかが、市場拡大の方向性を左右します。
複数方式の比較が商用化を左右
ローソンは8月17日、ローソンゲートシティ大崎アトリウム店でも、USDC、USDT、JPYCを使った別方式の決済実証を予定しています。こちらではネットスターズの決済基盤を活用し、複数のステーブルコインや異なるウォレットを既存POSへ接続する計画です。
同じ小売事業者が複数の事業者や方式を検証することで、特定のウォレットや通貨に依存せず、店舗運営に適した仕組みを比較できるとみられます。ステーブルコインごとに個別の決済環境を構築するのではなく、現在のコード決済と同様に、共通の接続基盤を通じて処理できるかが、商用化に向けた重要な論点となります。
今後は全国展開の時期そのものより、実証で得られた結果を店舗運営へどのように反映するかが注目されます。決済速度、店舗側の精算、手数料、返金、利用者保護を既存の決済手段と遜色のない水準まで整えられれば、ステーブルコインは投資や送金に使われるデジタル資産から、日常の消費を支える決済手段へ近づくことになります。
公式発表:HashPort PR TIMES

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