
60票が必要な手続き採決、暗号資産規制の停滞打開なるか
米上院銀行委員会デジタル資産小委員長のシンシア・ルミス議員、ティム・スコット上院銀行委員長、ジョン・ブーズマン上院農業委員長は2026年9月14日、米国の暗号資産市場構造を定める「Digital Asset Market Clarity Act(CLARITY法案)」の最終草案を公表しました。上院では翌15日午後2時15分(米東部時間、日本時間16日午前3時15分)に、法案の審議入り動議に対する討論終結動議を採決する予定です。
採決で問われるのは法案本体の可否ではなく、本会議で審議を始めるための手続きです。討論終結動議の可決には原則60票が必要ですが、共和党の議席は53にとどまるため、同党議員が全員賛成しても、民主党または無所属議員から少なくとも7票を得なければなりません。動議が可決されれば、最大30時間の討論と審議入り動議の採決を経て、最終草案が法案全体を差し替える修正案として提出されます。
米国では2025年、決済用ステーブルコインの発行者を規制するGENIUS法が成立しました。CLARITY法案はその次の段階として、トークンの発行・取引から取引所、ブローカー、カストディ、DeFiまでを含む市場全体の枠組みを整備するものです。州ごとに異なる送金業規制と、米証券取引委員会(SEC)と米商品先物取引委員会(CFTC)の管轄を巡る不確実性が残るなか、暗号資産を連邦規制の内側へ本格的に組み込めるかが問われています。
民主党の要請126項目を反映、利益相反規制が採決の鍵に
最終草案には、1年以上にわたる超党派協議を通じて、民主党側が求めた126項目の変更が反映されました。法案は、資金調達に伴う取引にはSECの開示規制を適用しつつ、一定の条件を満たすネットワークトークン自体は商品として扱う枠組みを設けます。デジタル商品取引所やブローカー、ディーラーには、CFTCへの登録に加えて顧客資産の分別管理、財務基盤の確保、情報開示などを求める方針です。
上院採決に向けた最大の政治的争点となったのが、政府関係者と暗号資産事業の利益相反を防ぐ倫理規定です。新たな草案は、連邦選出公職者や政府高官、連邦判事、その配偶者によるデジタル資産の発行・支援を制限し、発行事業者に重大な経済的権益を持つ場合には、資産の売却または適格なブラインド・トラストへの移管を求めます。違反時には取引で得た対価の20%または50万ドルのうち高い方を民事制裁金とし、司法省に加えて州司法長官にも一定の執行権限を与えます。
この規定は、民主党のルーベン・ガレゴ議員と共和党のトム・ティリス議員が示した案を基礎としています。AP通信によると、共和党側はドナルド・トランプ大統領が両議員の提案の約80%に同意したと説明しました。トランプ氏の暗号資産関連事業を巡る利益相反への懸念が超党派合意を阻んできたため、州司法長官を含む執行体制が十分だと民主党議員に評価されるかが、60票到達の鍵となります。
ステーブルコイン報酬巡り銀行と暗号資産業界が対立
倫理規定と並んで調整が難航しているのが、ステーブルコイン保有者に提供する利回りや報酬の扱いです。草案は、保有残高だけを理由とする利息や利回りを制限しつつ、決済、流動性提供、ステーキングなどの活動に連動する報酬には一定の余地を残しました。地方銀行からステーブルコインへ大規模な預金流出が起きていると財務長官が判断した場合には、報酬を追加制限できる時限的な権限も盛り込まれています。
米銀行協会と米独立コミュニティ銀行協会、全米77の州銀行協会は9月10日、残高や保有期間を基準に算出する報酬が事実上の預金金利として使われる可能性があるとして、上院に規制強化を求めました。銀行側は、資金がステーブルコインへ移れば、地方銀行が住宅、中小企業、農業向け融資に回す預金が減少する可能性があると主張しています。最終草案に加わった財務長官の介入権限はこうした懸念を踏まえた妥協策とみられますが、決済に伴う正当な報酬と預金金利に相当する利回りをどう区別するかという問題は残ります。
暗号資産業界では、Crypto Council for Innovation、Blockchain Association、The Digital Chamberの3団体が上院での審議を支持し、CFTCによる現物市場監督や全国共通の顧客保護制度が必要だと訴えてきました。法案が成立すれば、取引所やトークン発行事業者は登録先と開示義務を把握しやすくなると考えられるものの、実際の運用はSEC、CFTC、財務省による規則策定に左右されます。11月の中間選挙を前に議会日程が限られるなか、9月15日の採決は、長年続いた管轄論争を議会立法によって収束へ向かわせられるかを占う節目となります。
公式発表:LUMMIS

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