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金融庁、オンチェーン金融を実証から実装へ 証券決済短縮とアジア送金を推進

センチメンタルな岩狸

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サムネ


2026事務年度方針に社会実装を明記

金融庁は9月15日に公表した「2026事務年度金融行政方針」で、ブロックチェーン技術を基盤とする「オンチェーン金融」の社会実装を促す方針を示しました。個別の実証実験を支援してきた従来の取り組みを、既存の金融インフラと接続できる制度や監督体制の整備へ広げ、資金・証券決済の高度化につなげます。

対象となるのは暗号資産取引に限らず、ステーブルコイン、トークン化預金、デジタル証券、クロスボーダー送金など、金融取引を支える幅広い領域です。利用者保護と金融システムの安定を前提に、官民の実証や対話を通じて技術、法令、監督上の課題を整理し、商用サービスに移行できる金融基盤の構築を目指します。

こうした検討を横断的に進める場として、金融庁は「AI時代を見据えたオンチェーン金融フォーラム」を立ち上げます。既存の研究会とも連携し、資産のトークン化を見据えた証券決済の短縮化・高度化を市場関係者と検討する方針で、オンチェーン金融を成長政策と金融インフラ政策の双方に位置付けました。


5大金融グループが証券と資金の同時決済を検証

政策を実装につなげる基盤となるのが、金融庁が2025年11月にFinTech実証実験ハブ内に設けた「決済高度化プロジェクト(PIP)」です。クロスボーダー送金やセキュリティトークンのDVP決済を巡る国内外の動きを受け、ブロックチェーンや関連法令に詳しい担当者が事業者に伴走し、法令解釈やコンプライアンス、監督対応上の論点を整理する枠組みとして設置されました。

2026年2月には、野村證券、大和証券、みずほフィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループの取り組みが、PIPの2件目の支援案件に選ばれました。振替法上の有価証券について、ブロックチェーンを使った権利者の移転を適法かつ適切に遂行できるかを確かめるとともに、その取引とステーブルコインによる代金決済を実務上どのように連動させるかを検証します。

証券と資金を同時に受け渡すDVPがオンチェーン上で成立すれば、決済不履行リスクの抑制や照合作業の効率化につながる可能性があります。実験終了後には法令解釈や監督対応を含む検証結果が公表される予定であり、そこで示される整理は、後続サービスの設計や市場参加者の役割分担にも影響を与えそうです。


3メガバンクは2026年度中の実取引を計画

証券決済の検証と並行して、銀行側では決済手段の商用化に向けた準備が進んでいます。三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行は6月10日、3行が共同委託者となり、信託銀行などが受託者として発行するステーブルコインを使って、2026年度中に実商流での取引開始を目指すと発表しました。

3行は運用体制やシステム、ガバナンスを共同で検討する任意団体を設け、将来的には他の金融機関や関係事業者との連携も視野に入れます。証券会社を含む5大金融グループが証券と資金の連動を検証し、3メガバンクが実際の商取引で利用する決済手段を整備することで、技術の成立性、制度との整合性、継続運用の可否を一連の流れとして確かめる体制が整いつつあります。


海外でも中央銀行と金融大手が実取引へ

日本が社会実装に向けた制度整備を進める背景には、オンチェーン金融を銀行・証券市場の基幹インフラに組み込もうとする国際的な動きがあります。国際決済銀行(BIS)が主導する「Project Agorá」には、日本銀行を含む8中央銀行と40を超える民間金融機関が参加し、トークン化された中央銀行準備預金と商業銀行預金を共通基盤上で決済する仕組みを検証しています。

2026年7月には、円、ドル、ユーロ、ポンド、スイスフラン、韓国ウォンによる実価値取引が行われ、28の金融機関と中央銀行が計約80万スイスフラン相当を決済しました。取引開始から完了までの平均時間は約80秒で、処理速度に加えて、既存のRTGSや勘定系システムとの接続、法的な決済完了時点、マネーロンダリング対策など、商用化に欠かせない論点も検証対象となりました。

民間でも、米Circleが金融市場向けブロックチェーン「Arc」の公開メインネットを9月16日に立ち上げる計画を進め、BlackRock、DTCC、Mastercard、Visa、SBIグループ、住友商事などが初期バリデーターに加わっています。競争の軸は取引速度から、金融機関が継続的に利用できる共通基盤、十分な流動性、既存制度に沿った管理体制をどの陣営が確立するかへ移っています。


成長政策と市場監督を並行

オンチェーン金融の推進は、政府が7月21日に策定した「成長投資を促進するための金融戦略」を具体化する施策でもあります。同戦略は、ステーブルコインやトークン化預金などの決済手段を物流、商取引、金融サービスと結び付け、企業活動を支える金融インフラとして普及させる方向性を示しました。

もっとも、取引が金融機関や一般利用者に広がるほど、不公正取引、金融犯罪、サイバー攻撃、システム障害による影響も大きくなります。このため金融庁は、7月15日に成立した改正金融商品取引法・資金決済法を踏まえ、暗号資産の不公正取引規制や情報公表規制、違反時の課徴金制度に対応する監督指針を整備し、無登録業者への対応と自主規制機関の機能強化も進めます。

詐欺対策では、新規口座の開設直後に暗号資産をアンホステッド・ウォレットへ移転できないよう、一定の熟慮期間を設ける制度対応を進める方針です。オンチェーン金融を幅広く利用できるインフラへ発展させるには、本人確認や取引監視、秘密鍵管理、障害発生時の責任分担をサービス設計に組み込み、利便性の向上が利用者保護の後退につながらない仕組みを整える必要があります。


アジア送金と証券決済が実装の焦点

証券決済では、権利移転と資金決済を同期できれば、決済期間の短縮に加え、担保の機動的な利用や事務処理の効率化も期待できます。その効果を実際の市場で引き出すには、オンチェーン上の記録と法的な権利移転を一致させる時点を定め、決済に使うステーブルコインやトークン化預金の流動性を確保するとともに、システム障害時の処理方法をあらかじめ明確にすることが求められます。

クロスボーダー送金については、日本とアジアの官民政策対話を進め、2027年2~3月のJapan Fintech Weekに合わせて「アジア・デー2027」を開催します。送金時間や中継コストの削減を実現するには、各国で異なる本人確認、外為規制、データ管理、ステーブルコイン規制を接続し、国境を越えた取引で問題が生じた場合の責任関係を整理する必要があります。

今後は、オンチェーン金融フォーラムで示される制度設計、PIPによる証券・資金決済の検証結果、3メガバンクの実商流取引、改正法に対応する監督指針が焦点となります。実験環境で確認された技術を継続的な金融サービスへ移し、既存システムとの相互運用性や十分な取引量、障害時の利用者保護まで確立できるかが、日本のオンチェーン金融の競争力を左右することになります。


公式発表:金融庁

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