
ファンド運営の過程をオンチェーンに記録
AI・ブロックチェーン領域の事業開発を手掛けるPacific Metaは7月15日、ファンドの組成から運用情報の開示、報酬計算までをオンチェーン上で管理するプラットフォーム「Transparent Fund」のプロトタイプを開発したと発表しました。運用者が投資戦略や投資対象、報酬体系などを設定してファンドを立ち上げる一方、投資家はポジションや約定履歴、入出金、シェア価格の推移を確認できる仕組みを想定しているといいます。
株式や国債、不動産などをトークン化するRWAの取り組みが広がるなか、資産の発行後に行われる運用や報酬の算定は、運用会社が提供する報告書や管理システムに依存する部分が残っています。そのため、資産がブロックチェーン上で管理されていても、どのような経緯で売買され、事前に定めた運用方針が守られたのかを、投資家が取引単位で確認することは容易ではありません。同社は、資産そのもののトークン化にとどまらず、ファンド運営の記録と検証までをオンチェーンに移す基盤としてTransparent Fundを開発したと説明しています。
なお、公開されたプロトタイプは技術面と操作性を確認するための試作版であり、同社によると、実際の資金を受け入れた運用は対象に含まれていないといいます。また、画面に表示されるファンド名や運用者、残高、収益率などには、デモ用の架空データを使用していると説明しています。
投資対象と報酬条件をコードで管理
プロトタイプには、ファンドの検索・比較、運用状況の表示、投資対象の制限、報酬体系の設定、運用者向けダッシュボードなどが実装されています。同社によると、利用者はマーケットニュートラルやディレクショナル、レンディングといった運用戦略に加え、暗号資産、トークン化株式、トークン化国債、不動産ST、コモディティなどの投資対象を基準にファンドを絞り込めるということです。
また、運用者がファンドの作成時に投資可能な資産クラスを指定すると、対象外の資産に対する発注をスマートコントラクトや執行システムが受け付けない設計を採用しています。作成後には投資対象を追加できない構成とすることで、運用開始前に示した方針から外れるリスクを技術面から抑える考えです。
報酬体系については、成功報酬型、管理報酬型、2&20型、ハードルレート付きなどのテンプレートを用意し、設定後の条件変更を制限すると説明しています。さらに、成功報酬には過去の最高値を上回った利益を基準とするハイウォーターマーク方式を採用するほか、運用者に総資産の5%以上の保有を求める仕組みや、本人確認を終えたウォレットに参加を限定する機能も試作しました。各取引にはトランザクションハッシュを紐づけるため、投資家は画面上に表示された情報とブロックチェーン上の記録を照合できるとしています。
AI運用を含む共通基盤として実用化を検討
Pacific Metaは2026年3月、AIがブロックチェーン上で資産運用を実行する「AutoFund」を発表しています。同社はTransparent Fundについて、人間のファンドマネージャーに加え、AIエージェントが運用を担う場合にも利用できる共通基盤として位置付けており、AIが実行した取引や報酬計算を投資家が継続的に検証できる環境を構想しています。
もっとも、投資家から資金を集め、ファンド持分をトークンとして発行する事業には、金融商品取引法上の位置付けや必要な登録、投資勧誘、本人確認、資産管理などの整理が求められます。このため同社は、関連法令への適合や運営体制を確認したうえで事業化を判断するとしており、今後はアセットマネジメント会社や銀行、証券会社、信託銀行、暗号資産交換業者、法律事務所などとの共同検討を進める方針です。
RWAやAIを活用する運用手法が広がれば、運用主体がどの資産を保有し、どの条件で取引したのかに加えて、報酬がどのように算定されたのかを確認する仕組みも重要になります。Transparent Fundが実用段階へ進むためには、コードに組み込んだ運用ルールを国内の金融規制や顧客管理の実務と接続し、継続的なサービスとして運営できる体制へ落とし込めるかが焦点になりそうです。

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