
小口化投資から株式・債券・ファンドへ
韓国金融委員会は2026年9月4日、株式や債券、ファンドなどの金融商品をトークン証券として発行・流通させるための政策方針を公表しました。改正電子証券法が施行される2027年2月4日から、機関投資家向けの私募商品や非上場株式を起点に対象を段階的に広げます。
トークン証券は、ブロックチェーンなどの分散型台帳に権利情報を記録する証券の発行・管理形態です。株式や債券といった商品の法的な性質は変わらず、情報開示や業務認可、不公正取引規制などにも既存の資本市場法が適用されます。韓国で小口化投資を中心に進んできた制度整備が、幅広い金融商品を扱う資本市場インフラの構築へ進むことになります。
サンドボックスでの実証を経て法制化
韓国の小口化投資市場は、MUSICOWが2017年に始めた音源投資サービスを契機に形成されました。2019年から2024年にかけては、Kasa KoreaやLucentBlockなど計6事業者が金融規制サンドボックスに指定され、不動産、音源、貸付債権、航空機エンジンなどを小口化するサービスが試験的に認められました。
サンドボックスでは各事業者が発行した商品を自社の顧客間で売買する構造が中心で、サービスを開始した4事業者の2024年の取引額は合計約145億ウォンでした。投資家と流動性が複数のプラットフォームに分散していたため、幅広い発行者の商品を扱える共通市場の整備が制度化に向けた課題となっていました。
金融委員会は2023年2月、トークン証券を電子証券に続く新たな発行形態として受け入れる方針を示し、2026年1月には電子証券法と資本市場法の改正案が国会を通過しました。これにより、分散型台帳を法的効力のある証券口座簿として利用する根拠と、投資契約証券を証券会社が仲介する仕組みが整いました。今回公表された政策方針は、法制化から実際の市場運営へ移るため、対象商品や流通方法、事業者要件を具体化したものです。
既存システムと分散型台帳をつなぐ3段階構想
第1段階では、機関投資家向けの私募MMF(マネー・マーケット・ファンド)と私募社債、信託方式による非上場株式、公募型の小口化投資証券をトークン化します。その運用を通じて安定性や効率性、市場需要を検証し、第2段階で公募証券へインフラを拡充した後、第3段階ではステーブルコインなどを決済手段とするオンチェーン決済の実現を目指します。後半の移行時期は、技術開発やステーブルコイン法制の進展に応じて決まります。
非上場株式には、電子証券として発行された株式を韓国預託決済院または信託会社へ信託し、その受益権をトークン証券として発行する方式を採用します。議決権や配当、新株引受権、増減資などの株主権は既存の電子証券システムで管理し、分散型台帳では信託受益権を扱います。複雑な権利処理を既存システムに残すハイブリッド型とすることで、開発負担と導入時の運用リスクを抑える設計です。
制度を支える韓国預託決済院は2024年にシステムの機能分析へ着手し、2025年6月までにテスト環境を構築しました。証券会社4社、フィンテック企業3社、金融IT企業のコスコムを含む計8社との接続試験を経て、2026年4月から本番用プラットフォームの開発を進めています。2027年1月までに市場参加者との接続と運用シナリオの検証を終え、法施行に合わせて稼働させる計画です。
共通の流通市場と投資家保護を整備
金融委員会は2026年2月、小口化投資証券を多者間で売買する店頭取引所の予備認可をKDXとNXTの両コンソーシアムに与えました。事業者ごとに分かれていた取引を共通市場へ集約し、複数の発行者や商品を扱える環境を整える動きです。韓国フィンテック産業協会のトークン証券協議会も、法制化と流通事業者の予備認可を受け、市場が制度検討から実行の段階へ移りつつあるとの見方を示しています。
証券会社や店頭取引所は、取得済みの投資売買・仲介業の認可範囲内でトークン証券を扱えます。店頭取引所が取引を支援する際には金融監督院との事前協議が必要で、一般投資家の年間純購入額は取引所ごとに1億ウォンが上限となります。発行者が顧客口座を直接管理する「発行者口座管理機関」には、自己資本40億ウォンに加え、口座管理、内部統制、IT分野の専門人材などの要件を設けます。
商品面では、同じ種類の複数資産をまとめて一つの証券にする「プーリング」が条件付きで認められます。資産を束ねる目的と基準が明確で、不良資産を含まず、個別情報を区分して開示することなどが条件です。安定した法的関係や信用補完などの保護措置がある場合は将来売掛債権も対象となり、公募時の一般投資家1人当たりの申込上限には「3,000万ウォン」と「発行額の5%」のうち少ない金額が標準例として示されました。
公募証券とオンチェーン決済へ向けた工程
海外では、米BlackRockの米ドル建てトークン化ファンド「BUIDL」や香港政府のトークン化グリーンボンドなど、既存金融商品に分散型台帳を活用する事例が広がっています。韓国金融委員会もこうした動きを政策方針の背景に挙げており、国内市場を小口化投資中心の構造から、株式、債券、ファンドを含むデジタル資本市場へ発展させる構想です。
制度施行後の実用性を測るうえでは、既存の電子証券と比べて発行・管理コストをどこまで抑えられるか、投資家需要に合う商品を継続的に供給できるか、店頭市場に十分な流動性を集められるかが重要になります。機関投資家向け商品から導入する仕組みには、大規模な公募市場へ進む前に運用実績を積み、システムと市場の両面を検証する狙いがうかがえます。
金融委員会は9月末、対象証券の範囲や店頭取引所の取引上限、発行者口座管理機関の要件を盛り込んだ下位法令改正案を立法予告する予定です。韓国取引所による上場株式トークン化の実証や、トークン証券とステーブルコインの台帳を接続する相互運用技術の検討も進められます。法施行までに制度とシステムの両面を整えられるか、2027年2月以降の運用実績を公募証券やオンチェーン決済へどうつなげるかが、今後の市場拡大を見通すうえで重要になります。
公式発表:金融委員会(FSC)

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