
自身を巡る政治論争をトークン化
ジョー・バイデン前米大統領の次男であるハンター・バイデン氏は2026年9月7日、ミームコイン「LAPTOP($LAPTOP)」を9月9日に公開すると明らかにしました。米暗号資産取引所コインベースが開発したレイヤー2ブロックチェーン「Base」上で発行され、総供給量は10億枚です。
ハンター氏は7日、自身のノートパソコンを取り上げたニュース映像とともに「$LAPTOP」「September 9」とXへ投稿しました。トークン名は、2019年に米デラウェア州の修理店に残されたとされる同氏のノートパソコンに由来します。保存されていたとされるメールや画像などが2020年の米大統領選前に報じられ、父親のジョー・バイデン氏を巻き込む政治論争へ発展しました。
公式サイトは、LAPTOPを他者によって語られてきた自身の物語を取り戻すプロジェクトと位置づけています。過去の政治論争をトークン名に採用し、ドナルド・トランプ大統領の公式ミームコイン「TRUMP」を意識した配布と供給設計を組み込んだ構成です。
TRUMPで損失を出した利用者も対象
供給量のうち、初回と将来分を合わせた20%がエアドロップに割り当てられています。対象にはハンター氏のSubstack購読者、動画メディア「Channel 5」の購読者、TRUMPで損失を出した利用者などが含まれます。TRUMP損失者向けの具体的な対象と配布方法は、参加取引所が決める予定です。
SubstackとChannel 5の購読者は専用ページから申請でき、申請期間はローンチから30日間です。ただし、Channel 5を運営する映像ジャーナリストのアンドリュー・キャラハン氏は、ウォール・ストリート・ジャーナルに対し、自身と同メディアはLAPTOPの運営に関与していないと説明しています。購読者が配布対象に含まれることは、メディア側によるプロジェクトへの参加や支持を示すものではありません。
TRUMPは2025年1月17日、トランプ氏の2度目の大統領就任を目前に公開されました。価格は短期間で急騰し、時価総額が一時約150億ドルに達したものの、その後は大幅に下落しました。9月7日のThe Defiant報道時点では2.25ドルで取引され、最高値の73.43ドルを約97%下回っていました。
TRUMPの損失を利用者獲得につなげる設計
米上院銀行委員会の民主党側は8月、TRUMPを購入した約100万人が計38億1,000万ドルの損失を出したとの分析を示し、米証券取引委員会(SEC)に調査を要請しました。議員らは、トランプ氏側が約6億3,600万ドルを得たと指摘し、政治家と関係組織が収益を得る構造と、多数の購入者が損失を抱えた状況との隔たりを問題視しています。
LAPTOPは、このTRUMPを巡る損失を新たなトークンの利用者獲得に結び付けました。別の政治ミームコインで損失を出した層にトークンを配布することで、TRUMPへの失望や批判をLAPTOPへの関心に転換しようとする設計といえます。これまでの政治ミームコインは、発行に関わる人物の知名度や支持基盤を需要につなげる例が中心でした。LAPTOPは競合するトークンの損失者まで配布対象に含めたことで、政治ブランド間の対立を暗号資産の利用者獲得にも持ち込んでいます。
政治や市場の結果に応じて供給量を調整
公式サイトによると、供給量は創設者30%、エアドロップ20%、流動性10%、財団トレジャリー5%、慈善活動5%、予測イベント連動枠30%に配分されます。創設者分は6カ月間ロックされた後、24カ月かけて段階的に解除されます。予測イベント枠を含めた全体の解除期間は、トークン生成から36カ月です。
予測イベント枠は、政治、暗号資産、文化、LAPTOPの市場動向に関する30件の出来事と連動します。2028年の米大統領選で民主党候補が勝利する、ビットコインが最高値を更新する、LAPTOPの完全希薄化後評価額がTRUMPを上回る、といった条件が設定されています。条件が期限内に成立すれば該当分をバーンし、成立しなければ慈善団体へ寄付する仕組みです。
政治家の発言や選挙情勢が価格変動につながるミームコインは、これまでも存在しました。LAPTOPは将来の政治・市場イベントを供給量の減少や寄付に反映することで、その関係をトークン設計として明示しています。継続的に話題を生み出しやすい反面、需給が政治情勢や市場心理に強く影響される構造でもあります。
価値形成は実用性より話題性に依存
技術上の発行主体は、英領バージン諸島に設立されたPhoenix Veritas Ventures Ltdです。LAPTOPはBase上のERC-20トークンとして発行され、公式サイトにはコントラクトアドレスが掲載されています。スマートコントラクトはセキュリティ企業Hackenの監査を受け、確認された軽微な問題などは最終報告書の発行前に修正されたとしています。
LAPTOPには、企業の所有権や収益分配、議決権、商品・サービスの利用権は付与されません。公式ホワイトペーパーは、娯楽とコミュニティ参加を目的とするデジタルコレクティブルと位置づけ、事業収益や裏付け資産に基づく価値を持たないことを明記しています。価格形成はハンター氏の知名度、政治的な話題、コミュニティの関心、投機需要に大きく依存します。
米SEC企業金融局も2025年2月のスタッフ声明で、一般的なミームコインは市場需要と投機によって価値が形成され、利用機能が限定的か存在しない傾向にあるとの見解を示しました。同声明が想定するミームコインの取引は通常、連邦証券法上の証券取引に該当せず、購入者は同法による保護を受けないと説明しています。ただし、同声明に法的拘束力はなく、個別案件は取引の実態に基づいて判断されます。
正式公開前から模倣トークンの取引が過熱
正式版のローンチを前に、LAPTOPの名称を使った無関係なトークンも相次いで登場しました。The Defiantによると、9月7日の報道から約1時間以内に、Robinhood Chain、Solana、TON、BNB Chainで少なくとも14種類の模倣トークンが確認され、取引額は合計約690万ドルに達しました。
これらは正式版が採用するBase上のトークンではありません。暗号資産では第三者が同じ名称やティッカーを使ったトークンを容易に作成できるため、取引時にはネットワークと公式コントラクトアドレスの照合が欠かせません。発表直後から多額の取引が発生した状況は、LAPTOPへの関心の高さと、政治ニュースを起点とする投機の過熱を同時に示しています。
9月9日の公開後は、TRUMP損失者への配布基準と実際の受取状況に加え、初期流動性、保有の集中度、創設者分のロック状況が焦点になります。政治的な知名度による一時的な取引増加を継続的な市場形成につなげられるかは、エアドロップ後の保有者数や売買状況、予測イベントに基づくバーンの運用から見えてきそうです。

コメント