
USDTを日常決済へつなぐ仕組み
Ayanna Research Limitedは2026年8月11日、デジタル資産の管理とカード決済をつなぐサービス「MyPal」を紹介しました。MyPalはウォレット、カード、決済、送金を一つのアプリに集約し、保有するデジタル資産をオンラインショッピングや実店舗での支払いへつなぐ仕組みを提供しています。
アプリ内の「MyPal Wallet」では、米ドル連動型ステーブルコインのUSDTをTRC20とBEP20のネットワークから入金でき、必要額を米ドル建てのカード残高へ移して決済に利用します。利用者向けにはバーチャルカードとリアルカードを用意し、Visaの国際決済ネットワークを通じてオンライン決済、サブスクリプション、実店舗でのカード・タッチ決済、ATMでの現金引き出しに対応します。
オンライン決済では3D Secure(3DS)による本人認証を利用できるほか、カードや地域などの条件に応じてApple Pay、Google Wallet、PayPalへの登録にも対応します。ウォレットへの入金からカード管理、決済、送金までを同一アプリ内で完結させることで、デジタル資産を保有する段階から実際に利用するまでの操作をまとめています。
拡大するステーブルコインカード市場
MyPalが参入する周辺市場では、ステーブルコインと既存のカード決済網を組み合わせる動きが加速しています。Visaによると、ステーブルコイン連動カードの2025年の決済額は約52億ドルとなり、前年比319%増加しました。Visa全体の決済額に占める比率は約0.04%にとどまるものの、デジタル資産を実際の購買へ接続する手段として利用規模は拡大しています。
こうした流れを受け、VisaとStripe傘下のBridgeは2026年3月、ステーブルコイン連動Visaカードを同年末までに100カ国超へ拡大する計画を公表しました。発表時点では18カ国でカードを展開しており、Mastercardもステーブルコインと既存の決済インフラをつなぐ取り組みを進めています。
つまり、ステーブルコインの用途は保有や送金を中心とした段階から、既存のカード網を介して日常消費へ組み込む段階へ移りつつあります。MyPalもこの市場変化の中で、デジタル資産をVisa加盟店で利用するための選択肢として位置付けられます。
競争軸はカード発行から利用体験へ
一方、ステーブルコインをカード決済へ接続する仕組みそのものは、すでに複数の事業者が展開する領域です。そのため、今後は「カードを発行できるか」より、対応地域や対応資産、手数料、利用上限、入出金のしやすさ、返金時の対応といった実際の利用環境が競争力を左右する要素になっていきます。
ステーブルコインカードを巡る利用者の議論でも、資産の管理方法や法定通貨への変換タイミング、カード停止時の対応、返金やチャージバックなど、日常利用に直結する運用面への関心が強まっています。類似サービスが増えるほど、利用者の比較軸はカードの有無から、実際にどれだけ安定して使えるかという点へ移るとみられます。
MyPalはKYC・AMLへの対応に加え、ウォレットのセキュリティ対策、ユーザー情報の暗号化、プライバシー保護を掲げています。機能を一つのアプリへ集約する利便性に加え、こうした安全性や利用条件をどこまで明確かつ安定的に提供できるかが、サービス定着の重要な論点になります。
日本円チャージが普及の焦点に
MyPalは今後、日本円を含む法定通貨チャージ機能のアップグレードを準備しているほか、QRコード決済のテストやApple Payの決済機能強化を進めています。将来的には多通貨アカウントや加盟店・企業向け決済エコシステムの拡充も計画しており、日本市場を意識した機能拡張を段階的に進める方針です。
日本円から直接チャージできるようになれば、USDTを保有する利用者を中心とした現在の利用経路に、法定通貨から入る新たな導線が加わります。さらにQRコード決済や多通貨対応まで広がれば、暗号資産利用者向けカードという位置付けから、複数の決済手段を束ねるサービスへ発展する余地もあります。
世界ではステーブルコインと既存のカードネットワークを接続する競争がすでに始まっており、MyPalもその流れの中で日本市場への展開を模索しています。今後は日本円チャージなどの機能拡張に加え、コストや対応地域、サポートを含む実利用時の完成度をどこまで高められるかが、サービスの広がりを左右しそうです。
公式発表:MyPal PR TIMES

コメント