
2027年前半の市場投入に向け新会社設立
Goldman Sachsや三菱UFJ銀行、Bank of America、Citi、UBSなど世界の金融機関21社は2026年9月1日、ステーブルコイン事業を支える新会社を同年後半に設立することで合意したと共同発表しました。新会社は世界各地で事業を展開し、米ドル建てステーブルコインを2027年前半に市場投入した後、ユーロを優先しながら他のG7通貨建てにも発行対象を広げる計画です。
利用分野には、法人間取引を含むホールセール市場、機関投資家向け取引、個人向けサービスが挙げられています。参加各社は、銀行水準のコンプライアンスやガバナンス、流通網、機関投資家向けリスク管理を組み合わせ、国際送金やデジタル資産の決済に利用できるデジタルマネー基盤を構築します。
参加機関は北米10社、欧州8社、東アジア、中東、アフリカ各1社で構成され、三菱UFJ銀行は東アジアから唯一加わりました。Fidelity InvestmentsやWisdomTreeなど銀行以外の企業も含まれており、銀行を中心とする21金融機関の国際的な共同構想と位置付けられます。
市場拡大と規制整備が銀行の参入を促す
ステーブルコイン市場は2026年5月時点で3,000億ドルを超え、TetherとCircleの2社が約9割を占めています。流通するステーブルコインの約98%は米ドル建てで、暗号資産取引の決済手段として成長した後、国際送金やトークン化資産を売買する際の決済にも用途を広げてきました。
こうした市場の拡大は、銀行に新たな収益機会をもたらす半面、送金や決済、預金といった従来業務にも影響を及ぼします。Wall Street Journalは、ステーブルコインによる事業侵食を懸念する銀行幹部が増え、銀行側の姿勢が防衛的な戦略へ移っていると報じました。21金融機関による共通基盤の構築には、暗号資産企業が先行する市場へ既存金融機関の顧客網と信用力を持ち込み、銀行ごとの個別対応によるサービスの分断を抑える狙いがあると考えられます。
米国では2025年7月に「GENIUS Act」が成立し、決済用ステーブルコインに100%の流動資産による裏付けや準備資産の月次開示などを求める連邦規制が設けられました。EUでもMiCAが2024年からステーブルコインを規制対象に含めており、発行を具体化しやすい制度環境が整いつつあります。新会社は両規制に適用範囲に応じて準拠する方針で、複数地域の法制度をまたいで同じデジタルマネーを流通させる体制づくりが事業の前提になります。
10行の検討から具体的な事業計画へ
構想の起点となったのは、2025年10月に10行が始めた共同検討です。Santander、Bank of America、Barclays、BNP Paribas、Citi、Deutsche Bank、Goldman Sachs、三菱UFJ銀行、TD Bank Group、UBSは当時、準備資産によって1対1で裏付けられたG7通貨建てデジタルマネーを、パブリックブロックチェーン上で発行できるかを探っていました。2025年の共同発表
9月1日に示された参加一覧ではBarclaysとBNP Paribasが外れ、Capital OneやWells Fargo、Crédit Agricole、BBVAなどが加わりました。参加数の拡大に伴って地域と業態が広がり、発行可能性を探る段階から、新会社の設立時期と商品の市場投入時期を定めた事業計画へ進んでいます。
銀行連合による同様の動きは欧州でも進行しています。欧州15カ国の37金融機関が参加する「Qivalis」は、MiCAに準拠したユーロ建てステーブルコインを2026年後半に投入する計画で、オランダ中央銀行に電子マネー機関としての認可を申請しています。BBVAとRabobankは双方の構想に名を連ねており、金融機関が通貨や地域の異なる複数の流通基盤を並行して確保しようとする動きも表れています。
三菱UFJ銀行は国内外で発行基盤を整備
三菱UFJ銀行は国際構想への参加と並行し、国内ではみずほ銀行、三井住友銀行とステーブルコインの共同発行に向けた協議を進めています。3行は2026年6月、各行を共同委託者、信託銀行などを受託者とする信託契約に基づき、2026年度中にステーブルコインを用いた実取引を始める方針を発表しました。
国内構想は、金融庁が2025年11月に「FinTech実証実験ハブ・決済高度化プロジェクト」の初案件として支援を決めた実証実験を引き継いでいます。3行と三菱商事、三菱UFJ信託銀行、Progmatが、複数の銀行グループによる共同発行を想定し、規制対応や実務運用を検証してきました。
三菱UFJ銀行は、国内で信託型スキームの発行実務とガバナンスを固めながら、海外では米ドル建てステーブルコインの共通基盤と国際的な流通網づくりに参加することになります。通貨や制度、参加者が異なる二つの取り組みが進めば、国内企業の決済から国際送金、デジタル資産取引までを視野に入れた事業展開につながる可能性があります。
21金融機関の顧客網を実需につなげられるか
ステーブルコイン決済には成長余地があるものの、法人間取引での利用規模はまだ限られています。ECBによると、クロスボーダーの法人間決済はステーブルコイン決済額の約6割を占める一方、世界の法人間決済全体に対する比率は約0.01%です。既存通貨との交換時に生じるコストもあり、ブロックチェーン上の送金速度だけで従来の銀行送金から利用者を移行させるのは容易ではありません。
銀行が発行に関わった事例でも、信用力が普及に直結しているとは言い切れません。Reutersによると、仏Société Générale傘下のデジタル資産部門が発行した米ドル建てステーブルコインの流通額は1,250万ドルにとどまっており、利用者や取引先を含む流通網の構築が欠かせないことを示しています。
新会社が普及を広げるには、準備資産と償還を管理する体制に加え、対応するブロックチェーンやウォレット、取引所、決済事業者との接続が必要です。ECBがホールセール分野の選択肢として挙げるトークン化預金との役割分担も含め、どの企業が、どの取引から利用を始めるかが事業の方向を左右します。21金融機関の顧客網を継続的な国際送金やデジタル資産決済に結び付けられるかによって、銀行連合型ステーブルコインが商用インフラとして定着する可能性も明確になっていきます。
公式発表:WELLS FARGO

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