
ステーブルコインとオンチェーン金融の実装が進展
今週のWeb3業界では、ステーブルコインやブロックチェーンを既存の金融・決済インフラへ組み込む動きが相次ぎました。MUFGなどは日本国債(JGB)のレポ取引をCanton Network上で処理する実証に乗り出し、香港では香港ドル連動型ステーブルコイン「HKDAP」が企業・機関向けの利用段階に入りました。
国際決済ではMoneyGramが暗号資産と現金を交換する「MoneyGram Ramps」をSolanaへ対応させ、170以上の国・地域につながる現金化網をマルチチェーンへ拡大しています。国内ではCoinTradeを運営するマーキュリーが、ステーブルコインの取扱いに必要な電子決済手段等取引業者の登録準備を進めています。本記事では、2026年8月9日から15日までに発表され、WEB3ーONで報道したニュースの中から注目の4件を振り返ります。

MUFG、JGBレポをCanton Networkで検証
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)など4社は8月13日、日本国債(JGB)を用いたレポ取引をブロックチェーン上で処理する実証に向け、Digital Asset Holdings、Progmatと協業すると発表しました。金融機関向けブロックチェーン「Canton Network」を活用し、JGBとデジタルマネーの同時決済やレポ取引に伴う処理の自動化を検証します。
実証では、JGBの振替国債としての法的性質を維持したまま、オンチェーン上の処理と既存の振替口座簿を連動させます。資金側にはトークン化預金やステーブルコインを想定し、JGBとのDvP(Delivery versus Payment)によってリアルタイムに近い決済を目指します。
レポ取引の処理にはSecured Financeのレンディングプロトコルを利用し、取引条件の合意から決済、担保管理、返済までのライフサイクルを連携させます。既存の国債市場そのものを置き換えるのではなく、現在流通しているJGBをオンチェーン金融へ接続する取り組みです。
海外では米国債を使ったオンチェーン取引が実取引へ移り始めており、日本でもメガバンクや証券会社、清算機関による検証が相次いでいます。今後は技術面だけでなく、参加金融機関を広げ、十分な取引量と流動性を確保できるかが焦点となります。

香港ドルステーブルコイン「HKDAP」が利用段階へ
香港のステーブルコイン発行体Anchorpoint Financial Limitedは8月12日、香港ドル連動型ステーブルコイン「HKDAP」のPhase 1をBeta Accessとして開始しました。認定ディストリビューターを通じて企業や機関、プロ投資家への提供を進め、クロスボーダー決済やRWA(現実資産)の決済・流通での利用を広げます。
HKDAPは1HKDAPを1香港ドルの額面価値とし、流通額を100%以上カバーする準備資産で裏付ける設計です。初期の認定ディストリビューターにはHashKey ExchangeとOSL Groupが参加し、HashKeyでは対象顧客との初回の発行・償還取引も完了しました。
香港では2025年8月にステーブルコインのライセンス制度が施行され、2026年4月にはAnchorpointとHSBCが最初の発行者ライセンスを取得しました。HKDAPの提供開始によって、市場の焦点は制度整備や技術検証から、実際に企業や金融事業者の需要を獲得できるかという段階へ移ります。
RWA市場でも、資産をトークン化するだけでなく、その売買代金までオンチェーンで処理する決済基盤の重要性が高まっています。HKDAPが香港ドル建ての国際決済やRWA取引で継続的に利用されるかが、今後の定着を左右します。

MoneyGram Ramps、Solanaへ対応
グローバル決済サービスを手掛けるMoneyGramは8月11日、暗号資産と現金を交換する「MoneyGram Ramps」をSolanaに対応させたと発表しました。Solana上のウォレットや取引所などに組み込むことで、25カ国以上で現金から暗号資産への入金、170以上の国・地域で暗号資産から現金への出金が可能になります。
MoneyGram Rampsは、ウォレットや金融サービスを運営する事業者が、現金とデジタル資産を交換する機能を自社サービスへ組み込むためのAPIです。これまではStellarを軸に提供されてきましたが、Solanaが2番目のネイティブ対応ブロックチェーンに加わりました。
従来、SolanaなどStellar以外のネットワークから利用する場合は、USDCをStellarへブリッジする方法が案内されていました。Solanaへの直接対応によって、この経路を簡略化し、Solana上のサービスからMoneyGramの現金入出金網へ接続しやすくなります。
MoneyGramは約50万の小売拠点を持ち、2026年には独自ステーブルコイン「MGUSD」の発表やSolanaのバリデーター参加も進めています。ブロックチェーン上で資金を移動するだけでなく、各国の法定通貨として実際に受け取れる環境を広げる動きが進んでいます。

CoinTrade、ステーブルコイン市場への参入準備
暗号資産販売所「CoinTrade」を運営するマーキュリーは、ステーブルコインの取扱いに向けて「電子決済手段等取引業者」の登録を目指しています。親会社のセレスが8月13日に公表した決算説明資料で、国内でのステーブルコイン普及を見据えて登録準備を進めていることを明らかにしました。
日本では一定のステーブルコインが資金決済法上の「電子決済手段」に位置付けられ、その売買や交換、仲介、管理などには電子決済手段等取引業の登録が必要です。金融庁が6月24日時点で公表している登録事業者はSBI VCトレードのみで、マーキュリーが登録を取得すれば国内2社目となります。
先行するSBI VCトレードはUSDCの一般向け取扱いに加えて、レンディングやRLUSD、円建てJPYSCなどへサービスを広げています。CoinTradeも暗号資産の販売だけでなく、ステーキングやレンディングなどの運用サービスを展開してきました。
国内のステーブルコイン市場では、利用可能な銘柄が増える一方、流通を担う登録事業者は限られています。マーキュリーが参入すれば、取扱銘柄だけでなく、運用機能や既存サービスとの連携などを含めた事業者間の競争が進むことになります。
Web3と既存金融の接続が次の段階へ
今週取り上げた4件からは、Web3の活用が新しい暗号資産やブロックチェーンを生み出す段階から、既存の金融資産や決済網へ接続する段階へ進んでいることが分かります。
MUFGはJGBという既存の大規模市場をオンチェーンの決済・担保管理へ接続し、香港では規制下のステーブルコインがRWAや国際決済で実際に利用される段階へ入りました。MoneyGramも世界各地の現金ネットワークをSolanaへ開放し、オンチェーン資産を現実の通貨へ変換する経路を広げています。
国内ではCoinTradeがステーブルコイン市場への参入準備を進めており、制度整備後の市場でサービス提供事業者の競争が始まる可能性があります。
共通しているのは、ブロックチェーン上で資産を発行したり移転したりできること自体ではなく、国債市場、銀行決済、現金ネットワーク、暗号資産取引サービスといった既存の仕組みの中でどこまで継続的に利用できるかが問われ始めている点です。今後は技術的な実現性に加えて、利用者や市場参加者を広げ、実際の取引量につなげられるかが重要になります。

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