
海外ユーザーの残高を日本の店頭決済へ
暗号資産取引所などを運営するBinanceは2026年9月30日、アプリ内の決済機能「Binance Pay」を通じて、訪日外国人旅行者がPayPayの対象加盟店で暗号資産を使って支払えるようになったと発表しました。海外の決済サービスをつなぐネットワーク「HIVEX」を経由する連携で、旅行者は保有する暗号資産を支払いに充て、加盟店は売上代金を日本円で受け取ります。
対象は、Binance.comへの登録と本人確認を完了した、対応国・地域の訪日旅行者です。日本居住者は対象外となり、利用者はBinanceアプリで店舗のPayPayのQRコードを読み取るか、アプリに表示した支払いコードを店舗に提示して決済します。PayPayによると、Binance Payは100以上の国・地域で利用され、対象ユーザー数は2026年6月1日時点で約4,800万人に上ります。今回の対応によって、その海外ユーザーが日本で飲食や買い物、宿泊費などを支払う経路が加わりました。
支払いから店舗への入金までの仕組みについて、CointelegraphはBinanceへの確認に基づき、利用者が100種類以上の対応暗号資産で支払えると報じています。同報道によると、Binance Payは内部の精算に米ドル連動型ステーブルコイン「USDT」を利用し、HIVEXがPayPayと精算した後、PayPayが加盟店に日本円で支払います。利用者が選ぶ暗号資産と店舗の受取通貨を決済事業者が仲介し、海外のデジタル資産を国内の円建て商取引へつなぐ構造です。
店舗の会計を変えずに支払い手段を広げる
対象店舗は、HIVEXを契約し、利用者が店舗のコードを読み取るユーザースキャン方式か、店舗が利用者のコードを読み取るストアスキャン方式に対応するオフライン加盟店です。マネー限定加盟店やオンライン決済加盟店は対象から除かれますが、契約加盟店にはBinance Payへの対応が自動適用され、今回の追加に伴う手続きや費用負担はありません。店舗は既存の決済環境を使い、取引結果をPayPay for Businessで確認できます。
通常の決済システム利用料もPayPay決済と同率で、PayPayマイストア ライトプラン未契約の場合は1.98%、加盟店に紐づくすべての実店舗が対象プランに加入している場合は1.60%の優遇料率が適用されます。Binanceは利用者の決済時にガス代が発生しないと説明していますが、店舗側には従来の利用料が適用されるため、両者は区別する必要があります。店舗が円で売上を受け取り、既存の管理画面で取引を確認できる設計は、暗号資産による支払いを日常の会計業務へ取り込むうえで導入負担を抑える要素になります。
国内の資金移動から、海外旅行者の商取引へ
PayPayはこれまでもHIVEXやAlipay+を通じて海外の決済サービスと連携し、2026年6月にはベトナム、ウズベキスタン、パキスタンなどのサービスを追加して、連携先を17の国・地域で利用される35サービスへ広げたと発表しています。こうしたインバウンド対応に、暗号資産残高を支払い原資とするBinance Payが加わりました。Cointelegraphによると、BinanceはHIVEX経由でPayPay加盟店網に接続する初の暗号資産決済サービスだと説明しており、海外決済との連携が新たな利用者層へ広がる動きと捉えられます。
両社の協力は国内向けサービスで先行していました。PayPayは2025年10月にBinance Japanへの40%出資を公表し、同年11月にはPayPayマネーによる暗号資産の購入や、売却に伴う出金に対応しています。2026年4月には、取引に先立ってBinance Japanの口座へ日本円を即時入金できるサービスも加わりました。国内ユーザーの取引口座への資金移動を整えてきた経緯に対し、今回の連携では海外ユーザーの残高を日本の店舗で使えるようにし、協力の用途を商取引へ広げています。
Binance側にも、現地のQR決済網を利用する先行事例があります。2026年3月にはベトナムで、訪問中の対象旅行者がVietQRやMoMoの対応QRコードから暗号資産残高で支払える機能を発表し、7月にはアルゼンチン、ブラジル、フィリピン、ベトナムなど7カ国で、現地のQR決済基盤を利用した旅行者向け決済を提供していると説明しました。日本での展開も、各市場に普及した決済網へ接続し、普段のBinanceアプリを旅先で使えるようにする戦略の延長に位置付けられます。
接続先の広さを、旅行中の継続利用につなげられるか
観光庁によると、2025年の訪日外国人旅行消費額は9兆4,549億円で、宿泊費、買い物代、飲食費が全体の約85%を占めます。Binance Payが想定する用途はこの主要な支出と重なっており、海外ユーザーが保有する暗号資産を旅行中に使う機会につながります。提供開始に合わせ、Binanceは対象旅行者に期間限定の10%即時割引も案内し、店頭での利用を促しています。
今後の焦点は、割引による初回利用が、飲食や買い物での繰り返しの支払いへつながるかです。旅行者にとっては換算条件や操作の分かりやすさ、加盟店にとっては利用可能なサービスの案内や取引確認の円滑さが、定着を左右すると考えられます。決済網への接続によって支払い先を確保した次の段階では、旅行者がほかの決済手段と比較してBinance Payを選ぶ理由を持てるかが、日本市場での利用拡大を見極める焦点になります。
公式発表:Binance Japan

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