
円で購入し、元利金をウォレットで受け取る1年債
株式会社Startale Japanは2026年10月6日、日本円建てステーブルコイン「JPYSC」で利息と償還金を受け取れる個人投資家向けデジタル社債「ステーブルコイン普及債」の募集を開始したと発表しました。購入代金を日本円で払い込み、返済時にはウォレットでJPYSCを受け取る設計です。同社によると、日本円建て信託型ステーブルコインによる利払い・償還を行うデジタル社債として日本初で、2026年9月30日時点の同社調べに基づきます。
正式名称は「株式会社Startale Japan 第1回保証付デジタル社債」で、募集額は9,990万円、申込単位は1口10万円からです。年限は1年、利率は年5.00%の固定・税引前となり、11月10日まで募集した後、12月1日に発行する予定です。利払いは2027年6月1日と12月1日の2回で、満期となる同年12月1日には元本も償還し、利息・償還金ともに「Startale App」で受け取ります。
元本・利息・遅延損害金には、親会社のStartale Group Pte. Ltd.による支払保証が付されます。ただし、原則として中途解約・中途換金は制限され、満期までの保有を前提としています。投資家にとっては、利率に加え、発行体と保証会社の信用力、保有期間中の資金拘束、JPYSCで返済を受ける条件を合わせて確認する必要があります。
ポイントを組み合わせた社債から、元本返済のデジタル化へ
企業が個人に直接募集するデジタル社債には、国内でも先行事例があります。丸井グループは2022年6月、エポスカード会員向けに自己募集型デジタル社債を発行し、税引前年1%の利息を金銭0.3%とエポスポイント0.7%で支払う設計を採用しました。当初予定を上回る申込を受けて第2回債の追加発行も決定しており、顧客との接点を資金調達に生かした事例です。
こうした企業による活用は続いており、2026年8月にはトヨタファイナンスが、自己募集による公募型セキュリティトークン社債「TOYOTA Wallet つむぐボンド」の発行計画を公表しました。Startale Japanの取り組みも、企業と個人投資家を直接つなぐデジタル社債の流れに位置付けられますが、支払いには日本円連動の信託型ステーブルコインを用います。
丸井グループが利息の一部にポイントを取り入れたのに対し、本社債は利息と元本の双方をJPYSCで交付します。この比較から見える変化は、社債の権利管理に加え、投資家へ返す資金にもブロックチェーン上の決済手段を採用する点です。受領した資金をその後の送金や金融取引へつなげる構想を、社債の返済という具体的な用途から検証する取り組みといえます。
社債の権利管理とJPYSCの支払いを接続
発行・管理基盤には、申込や入出金管理、利払・償還金の計算、源泉徴収などを支援するオーナーシップの「OwnerShip Bond」を採用し、博報堂キースリーが商品企画やスキーム設計、コミュニケーション設計を支援しました。「あたらしい経済」の取材によると、社債はHyperledger Fabric上で発行され、JPYSCにはEthereumのERC-20規格が使われます。社債の権利管理と元利金の支払いを、それぞれ異なるブロックチェーンで担う構成です。
JPYSCはSBI新生信託銀行が発行する資金決済法上の第3号電子決済手段で、日本円と1対1で連動するよう設計されています。2026年6月24日にSBI VCトレードの口座内限定で先行提供が始まり、9月には裏付けとなる信託財産のうち10億円を短期国債で運用する取り組みが公表されました。発行・管理体制の整備が進むなか、Startale Japanは社債を通じ、個人投資家への支払いにJPYSCを活用する計画です。
制度整備と2027年の支払い実績が次の焦点
JPYSCの利用範囲を広げるうえでは、保有者の移転に伴う税務実務も関わります。金融庁は2027年度の税制改正要望で、信託型ステーブルコインに関する受益者別調書や信託の計算書の提出を不要とする措置を求めています。不特定多数の利用者間で頻繁に流通する決済手段の性質に合わせ、保有者情報の把握を前提とする手続きを見直す趣旨で、社債への活用と並行して、流通を支える制度整備も議論されています。
Startale Groupの渡辺創太CEOは、本社債の実証で得た知見を全国の事業者へ広げたいと説明し、CoinPostの会見・個別取材では、将来的な利払い頻度の増加とスマートコントラクトによる自動化の構想も示しました。その展開に向けた注目点は、2027年の利払い・償還で、社債管理からJPYSCの受領までが円滑に機能するかです。受領後の送金や次の投資につながる利用環境とともに、一連の運用で得られる知見が、他社でも採用しやすい資金調達の仕組みへ発展させるうえで重要になると考えられます。
公式発表:Startale

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