
10月1日に提供開始、取引前後とトークン流通を監視
日立製作所は2026年10月5日、暗号資産やステーブルコインなどの取引に対応するマネーロンダリング対策(AML)サービス「Digital Asset AML Platform」の提供を、10月1日に開始したと発表しました。金融機関や暗号資産関連事業者などを対象に、取引前の相手先評価、取引後の継続監視、発行済みトークンの流通監視を提供します。2025年から進めてきた共同実証の成果を活用し、事業者間のリスク情報連携を各社の監視業務に取り入れる仕組みです。
取引前に相手先アドレスを確認する「オンライン即時評価」に対し、「事後モニタリング」では、新たな情報が追加された際に過去の取引のリスクを継続して確認します。「トークンモニタリング」は、ステーブルコインなどが発行後にどのようなウォレットへ流通しているかを把握する機能で、取引を扱う事業者と発行者のそれぞれの監視業務を支えます。対応するブロックチェーンやトークン、評価機能は、契約内容や提供条件によって異なります。
資金移動の複雑化に、事業者間の情報連携で対応
サービスの背景には、複数のウォレットや取引所、ブロックチェーンを経由する資金移動を、一社の情報から把握する難しさがあります。日立は、外部のブロックチェーン分析情報、制裁・犯罪関連情報、オンライン詐欺関連情報に、AI・機械学習による取引行動分析を組み合わせ、既知のリスク情報との照合では捉えにくい兆候を補完するとしています。
そこに利用事業者間で活用可能な情報を加え、一社が把握した兆候を他社の監視にも生かす構成です。共有対象として想定するのは、ウォレットアドレス、トランザクションハッシュ、リスクカテゴリ、検知理由などで、顧客の個人属性情報は対象から除外しています。各社が個別に収集する情報に業界内の知見を重ねることが、この共同監視の中心となります。
こうした監視の課題は国際的にも議論されています。金融活動作業部会(FATF)は2026年3月、ステーブルコインと、利用者が自ら秘密鍵を管理するウォレット間の取引について、不正利用リスクや対策を整理した報告書を公表しました。事業者を介さない移転も対策の論点となるなか、日立の発行後の流通監視は、発行者がトークンの移転に伴うリスクを継続して把握するための業務基盤と位置付けられます。
2回の実証を経て、共同検証から継続運用へ
日立は2025年2〜4月、デジタルアセット関連事業者など12社と第1回実証を実施しました。専用プラットフォーム上でAML関連情報を分析・共有し、各社の業務に活用する方法を検証したものです。日立が基盤と機能を提供し、Chainalysis Japanが分析データ、日本電気が監視高度化の技術、finojectが実証設計と評価結果の分析を担うなど、監視を行う事業者と技術提供者が連携しました。
続く第2回実証は、2026年3〜5月に金融庁「FinTech実証実験ハブ」の支援案件として、日立と金融機関・暗号資産関連事業者など17社が実施しました。あおぞら銀行、JPYC、GMOコイン、ビットバンク、楽天ウォレットなどが参加し、情報連携や3つの監視機能について実務への適用可能性を確認しています。日立は7月30日に実証成果と10月の提供予定を公表しており、今回の開始によって、共同検証で得た知見を各社が導入できるサービスへ移しました。
検知から調査へ、対応を支える体制整備が次の論点
実証では、リスクを検知した後の対応も課題として整理されました。金融庁の結果公表によると、疑わしい取引の届出や取引制限などを判断する際には、アラートに加えて、資金の流れや公開情報、関連アドレスの追加調査が必要となる場合があります。機械学習を使う場合も検知の根拠を把握できるようにし、各事業者が責任を持って対応を判断する必要があると助言しました。
この調査を適切に進めるには、共有情報の品質管理も欠かせません。実証参加者は、誤検知によって顧客の権利利益を不当に損なわないよう、データの正確性や最新性、訂正・削除手続き、アクセス制御、苦情・異議申し立てへの対応などを整備する必要性を確認しました。共同監視の実効性は、情報を広く活用することと、その情報を検証・更新できる運用を両立できるかに左右されると考えられます。
調査業務を支える構想として、finojectは7月30日、日立と連携した「AML共同センター」の運営体制の具体化に向けた検討を発表しています。資金フローや関連アドレスの調査、結果のレポート化、届出に必要な資料作成などを想定したものです。監視サービスの提供開始を受け、今後の注目点は、検知結果をこうした人的な調査支援へどうつなぎ、各社の対応負担と調査の質を改善していくかにあります。
公式発表:日立

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