
12月15日にチェーン停止、期限までの資産移行を要請
消費者向けイーサリアムL2「Abstract(アブストラクト)」の運営チームは2026年10月7日(日本時間)、12月15日にチェーンの稼働を停止すると発表しました。利用者には停止日までに資産をチェーン外へ移すよう求めており、期限までに移行されなかった資金にはアクセスできなくなると説明しています。
Abstractは、Pudgy Penguinsのブランド力と使いやすいウォレットを組み合わせ、一般消費者のWeb3利用を広げてきました。運営終了によって、利用者は資産の移動を、同チェーン上のプロジェクトは移転先やサービスの継続方針の検討を迫られます。新規利用者を迎え入れる段階から、既存利用者の退出とアプリの移行を支える段階へ移ることになります。
消費者との接点を生かした構想、流動性の確保に課題
開発を支援したIgloo Inc.は、NFTを起点とするブランド「Pudgy Penguins」の親会社です。同社は2024年7月、Founders Fund主導で1100万ドル超を調達し、傘下のCube Labsを通じてAbstractの開発を支援する計画を発表しました。Pudgy Penguinsが築いた消費者との接点を活用し、暗号資産に詳しくない層にも利用を広げる構想でした。
2025年1月27日に公開したメインネットでは、メールアドレスなどで利用を始められるAbstract Global Walletと、アプリや配信コンテンツを探せるPortalを用意しました。複数のアプリで共通のアカウントとウォレットを使える設計により、サービスごとに登録する負担を軽減しています。ローンチ時のルカ・ネッツCEOのインタビューでも、消費者の使いやすさや娯楽性が戦略の中心に置かれていました。
こうした参加のしやすさを重視する一方、運営側は、限定的なDeFiエコシステム、薄いオンチェーン流動性、機関投資家との接点の乏しさ、競合より限られた予算によって成長が停滞したと説明しています。過去12カ月にわたり成長策を模索したものの、独立したチェーンとして持続可能な運営への道筋を見いだせなかったとしています。消費者を呼び込む設計と、継続的な資金や取引を呼び込む基盤との間に隔たりが残ったと読み取れます。
利用実績とチェーン運営の収益を分けて見る必要
Abstractが公表した実績によると、処理したトランザクションは3億2500万件超、分散型取引所(DEX)の取引高は60億ドル超に達しました。Abstract Global Walletは400万件超が作成され、144を超えるアプリが展開されています。ネットワーク内の事業が生み出した収益も4000万ドルを超えたとしていますが、この数字はチェーン運営者自身の収益とは区別されます。
CoinDeskが10月7日に報じたDefiLlamaのデータでは、直近24時間のチェーン手数料は約3900ドル、アプリ収益は約3万9000ドルでした。一日分の数値から長期的な採算は判断できませんが、アプリの売上や取引手数料と、基盤側が受け取る処理手数料は異なる収入です。取引件数やアプリの収益が伸びても、チェーンの維持費を賄えるかは別に検証する必要があります。
実際に資金面を支えたIglooについて、ネッツ氏は過去18カ月にわたりAbstractへ資金を提供し、数千万ドル規模の損失が生じたと説明しています。Pudgy Penguins事業からの資金投入を続けることは正当化できなくなったとし、資金調達のための独自トークン発行やICOも見送りました。需要を生む仕組みに確信が持てない状態での発行はコミュニティの利益にならないと判断し、今後はPudgy Penguinsのブランド、NFT、関連トークン「PENGU」に注力する方針です。
BlastやPolygon zkEVMでも進む運営の見直し
Abstractに先立つ10月2日には、イーサリアムL2「Blast」も終了を発表しました。運営側はチェーン維持費が収益を上回り、経済的に持続可能な運営への道筋を見いだせないと説明しています。利用者には10月26日までに通常の画面から出金するよう求め、それ以降はイーサリアム上のブリッジコントラクトを直接操作する方式を案内しています。
Polygon Labsも2025年6月、技術的な課題や差別化の不足を理由にPolygon zkEVM Mainnet Betaの終了方針を公表し、Polygon PoSとAgglayerへ開発資源を集中すると説明しました。公式サイトによると、同ネットワークは2026年7月3日にブロック生成を終了しています。各チェーンの事情は異なりますが、これらの事例からは、技術や利用実績に加え、需要と収益に見合う運営体制を重視する動きがうかがえます。Abstractの撤退も、独立したチェーンを維持する経済的な根拠が問われた事例として位置付けられます。
資産移行とアプリの継続対応が今後の焦点
Abstractの利用者は、公式のMigration Hubまたはネイティブブリッジを通じて資産移行を進められます。運営チームは早めの対応を呼びかけるとともに、技術・エコシステム担当部門が各プロジェクトの他チェーン移行を支援する方針を示しました。偽サイトや運営を装ったダイレクトメッセージへの注意も促し、公式チャネルから移行先のリンクを確認するよう求めています。
資金の移動に加え、利用していたゲームやアプリの継続、保有アイテムやサービス内残高の扱いも、利用者にとって重要な確認事項となります。一般消費者の参加を促してきたAbstractでは、終了時にも分かりやすい手続きと案内が求められます。今後は、各プロジェクトが利用者の資産やサービス利用をどう引き継ぎ、12月15日までに移行対応を進めるかが焦点になります。
公式発表:Abstract公式X

コメント