
銀行の発行基盤と企業向け開発を組み合わせ
トークン化預金プラットフォームを提供するDCPと、ブロックチェーン領域の事業開発を手掛けるPacific Metaは2026年10月5日、トークン化預金の事業化を共同で支援するパートナーシップを締結したと発表しました。金融機関による発行から事業会社のシステム開発・導入までを支援し、企業間決済の自動化やデジタルアセットと連携したサービスの具体化を目指します。
DCPが持つ発行基盤、金融機関とのネットワーク、金融実務・規制対応の知見に、Pacific Metaグループの事業企画と開発・実装の技術力を組み合わせる協業です。両社は事業会社の活用ニーズを発掘し、案件の検討段階に応じてユースケースの設計から導入まで対応することで、実証実験から商用化に向けた支援プロジェクトを順次立ち上げる方針です。
企業間決済で課題となる取引データとの連携
DCPの基盤上で銀行が発行するトークン化預金「DCJPY」は、銀行預金をブロックチェーン上でトークンとして扱う仕組みです。1DCJPYを1円として発行し、法的には銀行預金として取り扱われます。企業や個人の取引を扱うビジネスゾーンと、銀行が金融機能を担うフィナンシャルゾーンを連携させ、サービスの利用や権利の移転など、設定した条件に応じた支払いの自動執行を可能にしています。
この仕組みを企業間決済に活用する際は、受発注や請求の情報を支払いにどう結び付けるかが重要になります。DCPが関わるインボイスチェーン分科会は、請求・支払業務では工程ごとにシステムが分断され、売掛金と入金額、買掛金と請求額の照合や差額の解消に人的作業が生じていると説明しています。取引データに基づく決済と、その結果を債権管理や会計に反映する処理をつなぐことが、こうした業務の効率化に関わります。
商用取引と実証を重ね、利用先の開拓へ
DCJPYの商用利用では、2024年8月に始まった環境価値の取引が先行事例となっています。GMOあおぞらネット銀行が発行するDCJPYを利用し、インターネットイニシアティブ(IIJ)が非化石証書などの環境価値をデジタルアセット化して、その対価を決済する取引を開始しました。DCPはこれを同基盤初の商用事例と位置付けており、資産の取引と銀行預金による決済を連携させる用途で実利用が進みました。
企業の既存業務との接続を探ったのが、2026年5月に公表された流通分野の実証です。ツルハホールディングスや花王グループカスタマーマーケティングなどが参加し、電子データ交換規格「流通BMS」を用いた受領・返品データに基づいてDCJPYで支払いを行い、債権管理システム向けの消込ファイルを生成しました。入金と売掛金を照合する「入金消込」までつなぐ試みで、支払い完了とファイル生成を確認したうえで、債権管理システムで消込ができることを机上で検証しています。
7月には、DCPとインフキュリオンが、カード決済、自治体などの給付金、目的別貯金の3領域で共同検討を始めると発表し、既存の決済プラットフォームとの接続を検討対象に据えました。この経緯からは、トークン化預金の利用を広げるため、商取引や既存サービスとの連携を進めてきた流れが読み取れます。Pacific Metaとの提携は、その流れに、幅広い事業会社とのネットワークと企画・開発の支援力を加える動きと捉えられます。
商用化を左右する既存システムと業務運用
金融分野の実証でも、実運用に向けた課題が具体化しています。SBI証券、大和証券、SBI新生銀行、BOOSTRY、大阪デジタルエクスチェンジ、当時のディーカレットDCPの6社は、2026年3月に実発行したデジタル社債とDCJPYを使い、証券の引き渡しと代金支払いを相互に条件付けるDVP決済を検証しました。4月に公表した結果では、想定した業務フローの実行を確認するとともに、データ連携や指図処理の自動化、既存システムとの接続、会計・資金管理・権限管理を含む運用整備を商用化に向けた課題に挙げています。
こうした既存の仕組みとの連携は、政策上も重視されています。金融庁は9月15日に公表した金融行政方針で、オンチェーン金融の社会実装と、既存の金融インフラを組み合わせた資金・証券決済の高度化を掲げました。利用者保護や金融システムの安定を確保しながら、官民の実証と対話を通じて技術・制度・監督上の課題を整理する方針です。
これらの実証結果を踏まえると、今後の焦点は、企業ごとに異なるシステムや承認手順に対応し、継続利用できる商用案件へつなげられるかにあります。導入企業にとっては、受発注から支払い、入金確認までのどの工程を連携させ、照合や転記の手作業をどこまで減らせるかが実用性を左右すると考えられます。両社の支援が具体的な業務負荷の軽減につながるかが、提携の成果を見極めるポイントになります。
公式発表:DCP

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