規則を作るFIAの解析基盤を強化
国際自動車連盟(FIA)は10月28日、Amazon Web Services(AWS)とグローバルパートナーシップを締結したと発表した。AWSはFIAのAI、クラウドコンピューティング、機械学習、クラウドインフラの公式パートナーとなり、将来のF1技術規則の策定を支援する。既存の空力シミュレーションにAIによる予測を組み合わせ、規則案を効率よく比較する方法が検討されている。
FIAはAWSのAIツールを技術・エンジニアリング部門に取り入れ、安全性、性能、持続可能性を高める規則の開発に役立てる方針だ。提携には競技ライセンス管理のデジタル化や業務システムの整備も含まれるが、F1では、全チームが従う技術規則を設計・評価する側の能力強化が中心となる。
接近戦の改善を支えてきた空力シミュレーション
F1の空力規則は、車両の速さと、競り合う際の走りやすさに関わる。後続車が前方車両の生む乱れた気流を受けると、車体を路面に押し付けるダウンフォースが減り、コーナーで接近し続けることが難しくなる。この影響を抑えることが2022年型マシンの開発でも主要な課題となり、AWSの高性能計算基盤(HPC)を使った2台の車両による数値流体力学(CFD)解析が開発に貢献した。
今回の提携では、こうした解析の蓄積をAIに生かす方法が検討されている。FIAのF1担当副テクニカルディレクター、ドミニク・ハーロウは、過去のCFD結果を学習した「代理モデル」による工程短縮に言及した。車体形状と空力特性の関係から新たな形状の結果を推定できれば、ウイングやフロアの候補を幅広く比較し、有望な案の詳細な解析に時間を振り向けられる。計算の効率化を、規則案の選択肢の拡大につなげる狙いだ。
車体振動の教訓、検証する走行条件も重要に
規則開発では、比較する案の数とともに、どのような走行条件を調べるかも重要になる。2022年には車体が上下に振動する「ポーパシング」が安全上の問題となり、FIAは同年8月、2022・2023年の技術規則変更を承認した。2023年に向けた対策には、フロア端部の15ミリ引き上げや監視用センサーの追加などが含まれ、導入後に得た知見を車両の設計条件へ反映する対応が取られた。
ハーロウは、時間とともに変化する気流を扱う非定常シミュレーションの高度化により、こうした現象を実車で問題になる前に理解できる可能性を挙げている。AIによる候補の比較と詳細な物理解析を組み合わせ、車体姿勢や気流が変化する状況まで調べられれば、規則施行後の修正につながる問題を早期に把握する助けになると考えられる。
予測を実車の挙動と照合し、次世代規則へ
FIAは2026年の規則導入後も調整を続けている。同年6月には世界モータースポーツ評議会が、2027・2028年に向けた内燃機関の出力、燃料エネルギー流量、エネルギー回生システムの出力配分などの変更を承認した。2027年技術規則の初版にも2026年シーズンの知見が反映されており、実走データを踏まえた改善が進む。
ハーロウによると、2026年型マシンから得た知見を基に、将来の車両に向けた新たな空力構想の研究も始まっている。同氏は風洞試験、CFD、AIの結果を照合する考えを示した。今後の成果を見極めるうえでは、解析時間の短縮に加え、予測と実車の挙動の一致度が重要になる。検討できる案を増やしながら、その精度を実測で確かめる工程が、次世代規則の開発を支えることになる。
公式発表:FIA

コメント