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SBI、ステーブルコインで日韓金融を接続へ Canton基盤「Musubi」が狙う国際決済の再構築

センチメンタルな岩狸

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サムネ


SBIとNodeinfra、日韓向け機関決済網を構築

金融機関向けオンチェーン基盤を手掛けるSBI Digital Practiceは8月7日、韓国のデジタルアセットインフラ企業Nodeinfraと、日韓間のクロスボーダー決済ネットワーク構築に向けた基本合意書を締結しました。両社は「Musubi」プロジェクトを通じ、Canton Network上で円・ウォン・米ドル建てのステーブルコインやトークン化資産を扱う機関向け決済基盤の開発を進めます。

背景にあるのは、複数の銀行や通貨をまたぐ現在の国際決済が抱える構造的な非効率です。日韓間の取引でも米ドルを中間通貨として利用するケースがあり、送金や為替、決済が複数の金融機関を経由することで、処理時間やコストに加え、決済タイミングのずれに伴うリスクも生じます。Musubiは、異なる資産の受け渡しを連動させるPvP型の決済を取り入れ、こうした複雑な資金移動をオンチェーン上で再構成しようとする取り組みです。

その役割分担も明確です。SBI Digital Practiceは、法定通貨との交換や参加者のオンボーディングなど既存金融システムとの接続を担う「Gateway」を担当し、Nodeinfraは「Core」として、決済プロトコルやDamlスマートコントラクト、開発者向けSDKを構築します。既存の銀行システムを全面的に置き換えるのではなく、それぞれの金融機関が自社インフラを維持したまま、Canton Network上で取引と決済を連携させる設計です。


約15秒の決済設計、重要なのは速度より取引構造

Musubiの公式ドキュメントでは、初期の通貨回廊として日本円系ステーブルコイン「JPYSC0」と米ドル系ステーブルコイン「USDCx」が示されています。取引時には、マーケットメーカーが匿名化されたRFQ(見積もり依頼)に価格を提示し、参加者が条件を比較したうえで取引相手を選択します。その後、Core、送金側カストディアン、マーケットメーカー、受取側カストディアンが取引を確認し、エンドツーエンドで約15秒の決済を想定しています。

もっとも、金融業界にとって重要なのは15秒という数字そのものではありません。現在の国際決済では、銀行間口座、メッセージング、外国為替、資産移転が別々のシステム上で処理されることが多く、業務ごとに確認や照合が必要になります。Musubiは、参加機関が資産管理や顧客管理を自社で担ったまま、為替取引と資産移転を同一ネットワーク上で同期させることで、この分断を縮小することを目指しています。

さらに、ネットワーク自体は中央で資産を預かるカストディや中央カウンターパーティーを置かず、取引情報も必要な権限を持つ参加者に限定して共有する仕組みを採ります。この構造が実際の銀行業務と安定的に接続できれば、ステーブルコインを単に高速送金に使うモデルから、外国為替、資産保管、コンプライアンスを一体的に扱う機関向け決済インフラへ発展する余地があります。


JPYSCからCantonへ、SBIが進める金融インフラ戦略

Musubiを単独の実証として見ると、SBIグループが狙う全体像は見えにくくなります。SBI VCトレードは2026年3月に国内で暗号資産「Canton」の取り扱いを開始し、その後もCanton上で金融インフラを開発する企業への投資や、ネットワーク開発元Digital Assetへの追加出資を進めてきました。オンチェーン金融を支える基盤と、そこで流通する資産の双方に関与を広げている形です。

その流れをさらに押し進めたのが、6月24日に提供を開始した信託型円建てステーブルコイン「JPYSC」です。SBIはJPYSCの将来的な用途として、米ドル建てステーブルコインとの交換を通じたオンチェーン外国為替や、RWA・トークン化資産の決済を掲げており、円建てデジタルマネーの供給と機関向けブロックチェーン基盤への投資を並行して進めています。

こうした一連の動きを踏まえると、MusubiはSBIが進めてきた個別のデジタル資産事業を、金融機関同士のクロスボーダー決済へ接続する段階と位置付けられます。ステーブルコインを発行・流通させるだけの事業から、それを実際の為替や国際決済に組み込むインフラ事業へ広げられるかが、今後の焦点になります。


韓国でもCanton活用拡大、日韓を実証地域に

韓国でも、Canton Networkを金融市場に取り込む動きが進んでいます。2026年6月にはShinhan Financial Group傘下の金融会社がCanton Foundationとの協業に動き、KB Securitiesも分散型台帳技術を活用したトークン化分野でCanton関連企業との連携を進めました。Musubiの韓国側パートナーであるNodeinfraも、Cantonのバリデーター運用やDamlを使った開発経験を持っています。

このため、日韓を初期対象とした背景には、地理的な近さや貿易関係に加え、両国で金融資産のトークン化とステーブルコイン活用が同時に進み始めている環境もあるとみられます。韓国ウォン建てのデジタル資産が制度面と流動性の両面で整えば、円・ドル中心の初期構成から、円・ウォンを含む複数通貨間の決済へと広がる可能性があります。

こうした流れは日韓に限りません。世界の金融機関では、トークン化預金やステーブルコイン、トークン化国債などオンチェーン資産が増えるにつれ、異なる金融機関の間でそれらを安全に交換する「決済層」の重要性が高まっています。Musubiも、個別資産のデジタル化から金融インフラ全体の再設計へと競争軸が移りつつある中で出てきたプロジェクトといえます。


成否を左右する金融機関参加と流動性

技術面ではPvPや匿名RFQ、約15秒の決済設計が目を引きますが、商用化の成否を左右するのは、どれだけ多くの金融機関と取引参加者を巻き込めるかです。国際決済では、システム上で資産を移転できるだけでは足りず、本人確認、マネーロンダリング対策、カストディ、法定通貨との交換、マーケットメーカーによる流動性供給までが一体として機能する必要があります。

とりわけ円とウォンを直接結ぶ市場を形成するには、両通貨建てデジタル資産に十分な流動性が求められます。参加者が限られれば、決済処理が高速でも、為替スプレッドや取引可能額の面で既存市場に対抗しにくくなります。そのため今後は、どの銀行、カストディアン、マーケットメーカーが参加するのか、そしてどの程度の取引量を確保できるのかが、技術仕様以上に重要な論点となりそうです。

SBIは、円建てステーブルコインの提供、Canton関連企業への投資、暗号資産Cantonの国内展開を重ね、その延長線上で日韓クロスボーダー決済へと対象を広げました。Musubiが実取引を継続的に処理する段階まで進めば、ステーブルコインを「保有・流通するデジタル資産」から「金融機関同士をつなぐ決済手段」へ転換する事例となり、SBIのオンチェーン金融戦略にとっても重要な節目になる可能性があります。


公式発表:SBI

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