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金融庁、暗号資産の詐欺送金対策を強化 交換業者に入金・購入後の出庫制限を要請

センチメンタルな岩狸

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サムネ


急増する詐欺被害、送金段階での対策を強化

金融庁は2026年8月6日、警察庁と連名で、日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)に対し、暗号資産を利用した詐欺被害などの防止策を強化するよう要請しました。暗号資産交換業者には、法定通貨の入金後や暗号資産の購入後に一定期間、暗号資産の出庫を制限する措置をはじめ、出庫先アドレスの事前登録や取引モニタリングの高度化などが求められています。

背景には、SNSを入り口とした投資詐欺などで、暗号資産が被害金の移転手段として使われるケースの増加があります。警察庁によると、2025年のSNS型投資詐欺は9,523件、被害額は1,288億円に達し、このうち暗号資産送信型は2,177件、247.7億円を占めました。2026年に入ってからも被害は高水準で推移しており、1~5月のSNS型投資詐欺の被害額は700.4億円に上っています。

暗号資産は外部ウォレットへ移転された後もブロックチェーン上で追跡できる場合がある一方、交換業者が直接取引を停止できる範囲には限界があります。そのため、被害発覚後に資金を追う対応に加え、取引所から外部へ資産が移る直前の段階で不審な送金を検知し、流出を抑える仕組みの整備が重要になっています。


「購入直後の送金」に時間的な制限

金融庁が示した対策では、法定通貨を入金した後や暗号資産を購入した後、一定期間にわたって暗号資産の出庫を制限する措置が盛り込まれました。さらに、制限解除直後に多額または高頻度の出庫が行われる場合には取引背景を確認することも求めており、単純に一定時間を待たせる仕組みではなく、送金行動そのものを継続的に監視する運用を想定しています。

出庫先についても、あらかじめアドレスを登録する仕組みを導入し、新たなアドレスを追加した後には一定期間の出庫制限を設ける方針が示されました。これに顧客ごとの出庫限度額や、詐欺への関与が確認されたアドレスへの送金防止策を組み合わせることで、被害者が第三者の指示を受けて暗号資産を購入し、その直後に指定先へ送る流れに時間的な障壁を設ける狙いです。

加えて、顧客属性や口座の利用目的と一致しない取引、通常とは異なるアクセス環境などを監視し、不審な動きが確認された場合には取引の一時保留や本人確認、入出金停止、口座凍結につなげる態勢も求められています。重要な操作にはフィッシング耐性のある多要素認証を導入することも挙げられており、出庫制限と認証強化、取引監視を重ねることで、送金前の防御を厚くする考えです。


即時性との両立、交換業者の運用が焦点

一方、交換業者にとっては、犯罪利用を抑えるための制限と、暗号資産取引で重視されてきた資金移動の即時性をどう両立するかが課題になります。暗号資産市場は24時間取引されており、利用者が資産を別の取引所や自己管理型ウォレットへ短時間で移す場面もあるため、制限の対象を広げすぎれば正当な取引に影響が及ぶ可能性があります。

金融庁は各社に一律の待機時間を示すのではなく、事業内容やサービス、不正利用の発生状況などに応じて対策の方法や深度を判断するよう求めています。したがって実際の運用では、口座の利用期間、取引履歴、入出金額、アクセス環境、送金先といった複数の情報を組み合わせ、リスクの高い取引をどこまで精度高く抽出できるかが重要になります。

規制強化によって犯罪利用を抑えられる余地は広がるものの、正常な取引を過度に制限すれば、利用者の利便性低下や交換業者の運用コスト増加につながります。そのため、単に送金を遅らせる制度を導入するのではなく、不審な取引だけを迅速に検知し、必要な場面で制限をかける監視精度が、各社の対応力を左右することになりそうです。


個社監視から業界横断の情報共有へ

金融庁は、詐欺対策を各交換業者の内部監視だけに委ねるのではなく、業界横断で情報を共有する体制の整備も進めています。2026年7月24日には、暗号資産交換業者などが疑わしいアドレスやトランザクション情報、リスクカテゴリ、リスクスコア、検知理由などを共有した実証実験の結果を公表しました。

一つの事業者だけでは通常の取引に見える送金でも、他社が保有する情報と照合することで、同じアドレスへの資金集中や既知の不審アドレスとの関連が見える場合があります。8月6日の要請にも交換業者間の情報共有や警察との連携強化が盛り込まれており、不正利用対策は個別口座を監視する段階から、複数の事業者が資金の流れを横断的に捉える段階へ進みつつあります。

こうした動きは、暗号資産規制の重点が事業者登録や資産管理といった枠組みの整備から、実際の取引や送金行動を細かく監視する運用面へ移っていることも示しています。交換業者には取引サービスを提供する機能に加え、詐欺被害金が暗号資産に換えられ、外部へ流出する経路を早期に察知する役割が強く求められるようになっています。


「送った後」から「送る前」の対策へ

SNS型投資詐欺などでは、被害者自身が正規の交換業者で暗号資産を購入し、その後、詐欺グループが指定したアドレスへ自ら送金するケースがあります。この場合、第三者による不正ログインとは異なり、本人が通常の操作で取引しているため、認証強化だけでは異常を見抜きにくく、送金額や取引履歴、アクセス状況、出庫先などを複合的に分析する必要があります。

出庫制限は、こうした取引に一定の時間を設け、不審な送金を確認できる余地を広げる施策です。さらに、業界横断の情報共有が進めば、一社の取引履歴だけでは把握しにくかった不審な資金移動も、複数の情報を組み合わせることで早期に検知できる可能性があります。

暗号資産交換業者が詐欺資金の流出をどこまで送金前に食い止められるかは、今後の制度運用を評価するうえで重要な焦点になります。利用者保護を強めながら、暗号資産が持つ資金移動の柔軟性をどこまで維持できるか、各社の監視技術と実務態勢がこれまで以上に問われそうです。


公式発表:金融庁

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