
2027年施行を再検討、損失の繰越控除も協議
韓国政府は11月5日、2027年1月に予定する暗号資産所得への課税を、2029年へ2年間延期する方針を表明しました。イ・ヒョンイル副首相兼財政経済相が政府ソウル庁舎で会見し、海外取引の課税情報の確保や制度の見直しに向け、国会と協議して進めると説明しました。施行時期の変更には法改正が必要で、成立すれば4度目の延期となります。
現行法では2027年1月1日以降の暗号資産の譲渡・貸し付けによる所得が対象となり、年間の損益を通算して250万ウォンを控除した残額に、地方所得税を含めて22%を課す設計です。政府は開始時期の変更と併せ、損失を翌年以降の利益から差し引ける3年間の繰越控除も導入する方針を示しており、施行後の税額計算にも関わる見直しとなります。
業界の延期要請を経て、施行直前に政策転換
暗号資産課税は2020年の所得税法改正で制度が設けられ、当初は2022年の施行を予定していました。その後、2023年、2025年、2027年へ順次延期され、前回の2024年の改正でも、利用者保護制度の点検や課税基盤の整備が理由に挙げられていました。
今回の発表に先立つ10月30日には、国内主要取引所やデジタル資産取引所共同協議体(DAXA)の関係者が与党との懇談会に出席し、延期を要請しました。業界側は、個人投資家が中心となる国内市場の構造や、制度変更が成長途上の産業に与える影響への懸念を伝えており、政府は施行まで約2カ月の段階で再延期へ動きました。
業界には準備時間の確保を歓迎する声がある一方、繰り返される先送りに対しては、税制の予測可能性や政策の一貫性を疑問視する指摘も出ています。過去の延期でも準備不足が理由とされてきた経緯から、追加の2年間で何を整えるかが、政府の説明を検証するうえで重要になります。
海外取引との情報格差、国内取引所の競争にも影響
政府が今回の延期理由として重視したのが、国内外の取引に対する課税の公平性です。OECDが策定した暗号資産報告枠組み「CARF」は、対象事業者から報告された取引情報などを、納税者の居住国・地域の税務当局と毎年交換する仕組みです。韓国政府は、米国との情報交換が2029年に始まることを踏まえ、海外取引を把握する体制を整える必要があると説明しました。
取引所側にとって、この情報格差は顧客の利用先にも関わります。現地報道では、国内外で課税情報の把握に差があれば、投資家が海外のサービスへ取引を移す可能性を懸念する業界関係者の声が伝えられています。政府が掲げる納税者間の公平性と、国内取引所が求める競争条件の整備が、延期を求める議論で重なった形です。
ただし、情報交換で得た記録を課税に使うには、取得価額や取引履歴を結び付ける実務も必要です。業界は、海外取引所や個人ウォレットから移された資産の取得価額の確認、取引情報の提出形式の統一、国税庁とのシステム連携を課題に挙げており、対応は国際的な情報交換と国内の記録整備の両方に及びます。
損失の繰越控除で、年をまたぐ税負担を調整へ
投資家への影響を考えるうえでは、損失の繰越控除が重要です。現行の制度設計は同じ年の損益を通算する一方、前年の損失を翌年の利益から差し引けないため、複数年の合計で損失が残っていても、利益が出た年には課税される場合があります。政府は、価格変動の大きい暗号資産について、年をまたぐ損益を税額に反映させる方針です。
会見で政府当局者は、2029年に生じた損失であれば2032年の利益まで控除できる想定を説明しました。制度を継続して運用し、繰り越せる期間を3年とする考えで、課税開始前に売却して確定した損失は対象から外すとしています。投資家にとっては、課税開始日とともに、どの損失をいつの利益から控除できるかが、実際の負担を左右する仕組みとなります。
詳細基準は2028年公表、取引所の対応期間が検証点に
財政経済部は、専門家や業界、関係省庁による官民合同ワーキンググループを設け、2027年上半期までに制度改善案をまとめる計画です。立法が必要な項目は同年の通常国会へ提出し、2028年上半期には詳細な課税基準を公表する方針を示しました。会見では、ステーブルコインや海外取引所の無期限先物など、多様化する取引の取り扱いも検討課題に挙がっています。
今後は、国会での延期案の審議に続き、基準の公表からシステム対応、利用者への周知までを予定どおり進められるかが検証点となります。取引所が詳細基準の確定を待っている状況を踏まえると、2028年の公表時期と内容は、2029年施行に向けた準備期間を実際に確保できるかを測る節目になります。
公式発表:韓国財政経済部

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