
トークン化株式の保有者に株主向け機能を提供
証券取引基盤を開発するアルパカの日本法人AlpacaJapanは2026年7月24日、金融インフラ企業Broadridge Financial Solutionsとの提携を通じ、トークン化株式を保有する投資家向けに議決権行使や開示情報の受領といった株主ガバナンス機能を提供すると発表しました。対応する証券会社を通じて商品を保有する投資家が対象となり、関連機能は対象となるトークン化株式へ順次組み込まれます。
アルパカのBroker APIとInstant Tokenization NetworkにBroadridgeのガバナンス基盤を統合することで、個人投資家は「ProxyVote.com」を通じて対象となる株主総会に参加できます。取締役の選任や役員報酬、企業買収などの重要事項について意思を示せるほか、投資家向け通知や規制上の開示資料を受け取り、保有状況に応じた議決権数を確認することも可能です。機関投資家については、既存の議決権管理や報告業務へトークン化株式を組み込める設計となっています。
売買の拡大に追いつかなかった株主権
トークン化株式を巡っては、ブロックチェーン上での発行や移転、長時間取引への対応が進む一方、保有者が原株と同じ権利を得られるとは限らない点が課題となってきました。アルパカはAnchored Finance、Dinari、Ondo Global Markets、xStocksなどにトークン化米国株式・ETFの裏付け資産を保管するサービスを提供しており、2025年12月には同分野で94%を超える市場シェアと4億8,000万ドル超の保管資産を公表しています。流通規模が広がるほど、誰にどの権利が帰属するのかを正確に管理する仕組みの重要性も高まります。
米証券取引委員会(SEC)企業金融局も2026年1月、第三者が証券をトークン化する方式について、原株を保管して権利を記録するカストディ型と、原株の値動きに連動する合成型に整理しました。商品構造によっては、トークン保有者が原株発行会社への議決権や法的請求権を持たず、第三者の破綻リスクにさらされる可能性もあります。取引画面上では株式のように見える商品であっても、投資家が受け取る権利は契約条件によって変わるため、売買機能と株主権を結びつける仕組みが市場の信頼性を支える要素となります。
証券保管とガバナンスを接続
両社の役割分担では、アルパカがトークン化米国株式やETFを裏付ける証券の保管と証券基盤を担い、Broadridgeが議決権行使、投資家向けコミュニケーション、開示資料の配信、議決権数の照合を提供します。複数のブロックチェーンや仲介事業者を経由して資産が流通する場合でも、原株側の記録と投資家に認められる権利を対応させることで、従来の証券市場に近い株主参加の環境を整える狙いです。
Broadridgeは2026年4月、従来の株式とトークン化された保有分を横断して議決権を管理できるオンチェーン・ガバナンス基盤を稼働させました。今回の提携は、すでに構築した権利管理機能を、アルパカが支える証券会社やデジタル資産サービスへ広げる取り組みとなります。トークン化市場の競争軸が、発行銘柄数や取引時間といった利便性から、開示、監査可能性、権利照合を含む運用品質へ移り始めていることを示す動きともいえます。
トークン化株式は運用体制を競う段階へ
投資家が実際に利用できる機能は、証券会社やプラットフォームの対応状況、対象商品、参加可能な株主総会、各商品の権利条件によって異なります。また、日本法人のAlpacaJapanは暗号資産とトークン化証券を取り扱っておらず、日本国内の同社口座に同機能が追加されるとの発表でもありません。利用時には、商品名や原株との連動性に加え、議決権や配当、情報受領に関する条件を確認する必要があります。
トークン化株式は、従来市場へのアクセスを広げる手段として注目を集めてきましたが、取引の利便性だけで金融商品としての信頼を確立することは難しいと考えられます。アルパカの保管網とBroadridgeの株主ガバナンス機能が接続されることで、発行後の権利管理まで含めた運用体制の整備が進みます。対象商品と参加事業者をどこまで拡大できるかが、トークン化米国株が実験的な商品から継続的に利用される投資市場へ成長するうえで注目されます。

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