
暗号資産とステーブルコインを課名に明記
金融機関の監督や金融制度の企画を担う金融庁は2026年8月5日、組織再編を同月7日に実施し、「暗号資産・ステーブルコイン課」を新設すると発表しました。新課は資産運用・保険監督局の下に置かれ、暗号資産モニタリング室、イノベーション推進室、デジタル決済企画室を所管します。
これまで暗号資産関連の業務を担ってきた「暗号資産・ブロックチェーン・イノベーション参事官室」は、再編後に課組織へ移行します。暗号資産の監督やモニタリング、デジタル金融に関する企画機能を専門課の下に配置することで、継続的に制度と市場の動向を扱う体制が明確になります。
金融庁は再編の背景として、資産運用立国に向けた政策の推進、金融分野におけるデジタル技術の進展、金融機関へのモニタリング高度化を挙げました。庁内全体に及ぶ再編の中でも、暗号資産とステーブルコインを正式な課名に盛り込んだ点は、Web3業界に関わる行政体制の変化として注目されます。
前年度から進んでいた専門課の設置
暗号資産を担当する課の新設は、2026年8月に突然浮上した構想ではありません。金融庁は2025年8月に公表した2026年度の機構・定員要求で、デジタル金融分野に対応する組織体制の強化を求めており、当初は「暗号資産・イノベーション課」の名称で専門課を設ける方針が報じられていました。
その後、2025年12月に公表された機構・定員案では、「暗号資産・ステーブルコイン課」の名称と2026年夏の組織再編方針が示されました。今回の発表は、前年から進められてきた組織整備が正式に実施段階へ入ったことを意味します。
名称に「ステーブルコイン」が加わった背景には、日本のデジタル資産政策が暗号資産交換業者の監督を中心とする段階から、決済や送金、トークン化された金融サービスまで視野に入れる段階へ広がったことがあります。課名の決定理由は公表されていないものの、ステーブルコインを独立した分野として明記したことは、行政上の重要性が高まっている状況を映したものとみられます。
制度整備から事業化へ進むステーブルコイン
日本では2023年6月、改正資金決済法の施行によって、法定通貨と価値が連動するステーブルコインが「電子決済手段」として制度化されました。制度導入後は、信託会社や銀行、暗号資産関連事業者が発行や決済利用に向けた実証を進めており、国内市場は法制度の整備から実際のサービス開発へ移りつつあります。
金融庁も制度面の更新を進めています。2025年に国会へ提出された資金決済法改正案には、信託型ステーブルコインの裏付け資産に関する運用の柔軟化に加え、暗号資産や電子決済手段の売買を仲介する事業者向けの登録制度が盛り込まれました。新しいサービスの参入を促しながら、利用者保護を確保するための枠組みを整える動きです。
暗号資産分野でも、交換業者の監督や顧客資産の管理、広告規制、仲介制度、税制、市場の公正性など複数の論点が並行して議論されています。制度と事業の範囲が広がる中、専門課の設置は、個別案件への対応を積み重ねる体制から、政策立案と監督を継続的に担う体制へ移る動きと捉えられます。
監督とイノベーションを同じ課で調整
暗号資産・ステーブルコイン課の下に、暗号資産モニタリング室とイノベーション推進室が置かれる構成からは、リスク管理と新規事業支援を同じ組織内で調整する方向性が読み取れます。市場の健全性や利用者保護を確保しながら、新たな技術やサービスをどのように制度へ取り込むかが、新課の主要な課題になりそうです。
一方、資金移動業や電子決済等代行業などを担当する資金決済課は、同じ資産運用・保険監督局の中に別の課として設けられます。暗号資産やステーブルコイン、電子決済、資金移動は相互に関係する領域であるため、新しいサービスの制度設計では、暗号資産・ステーブルコイン課と資金決済課の連携も欠かせません。
課への移行だけで規制や審査の運用が直ちに変化するとは限りませんが、担当部署と責任範囲が明確になれば、事業者が相談先を把握しやすくなり、制度改正や監督方針も継続的に検討しやすくなります。業界が期待するのは組織名の変更そのものではなく、新課が市場の実態に即したルールや行政対応をどこまで示せるかという点です。
Web3政策は組織整備から実行段階へ
暗号資産とステーブルコインが金融庁の正式な課名に入ったことで、デジタル資産は一時的な政策課題ではなく、継続的な制度企画と監督を必要とする行政分野として位置付けられました。前年の機構要求から続いてきた専門課の構想が実現し、日本のWeb3政策は組織を準備する段階から、その機能を実際に運用する段階へ進みます。
今後は、暗号資産交換業者への監督、ステーブルコイン制度の運用、新たな仲介制度への対応、利用者保護と事業者の参入促進をどのように両立するかが焦点になります。海外でデジタル資産を巡る制度整備と事業展開が加速する中、日本の制度が国内外の事業者にとって予測しやすいものになるかも重要です。
8月7日に始動する暗号資産・ステーブルコイン課には、監督を強化する役割と、技術革新を金融サービスへ取り込む役割の双方が求められます。専門組織の設置を実効性のある政策へつなげられるかが、日本のWeb3市場の競争力と成長の方向を左右しそうです。
公式発表:金融庁

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