
ステーブルコインの実用化と規制対応が同時に進展
今週のWeb3業界では、ステーブルコインを既存の決済・送金インフラへ組み込む動きが国内外で相次ぎました。Visaは国際送金ネットワーク「Visa Direct」にステーブルコイン送金と事前資金供給の仕組みを組み込み、Western Unionもステーブルコインで受け取った送金資金をVisa加盟店で利用できるカードサービスを開始しました。
国内では、ローソンの既存POSレジと日本円建てステーブルコイン「JPYC」を接続する実証が行われ、ステーブルコインを実店舗の日常決済へ組み込む取り組みが具体化しています。その一方、海外暗号資産取引所Bitgetは日本居住者向けサービスの段階的な終了を発表しました。
本記事では、2026年8月2日から8日までに発表された、Web3業界の注目ニュース4件を振り返ります。

Bitget、日本居住者向けサービスを段階的に終了
暗号資産取引所Bitgetは8月3日、日本の規制を遵守する取り組みの一環として、日本居住者向けサービスを段階的に終了すると発表しました。同日から新規アカウント登録を停止し、既存利用者についても11月以降、取引機能を順次制限します。
11月1日からは日本居住者と判定されたアカウントが決済専用モードへ移行し、新規ポジションの建玉や現物・先物取引、P2P取引、Earn、コピートレードなどが利用できなくなります。12月31日以降には、残っている未決済ポジションも強制決済の対象となる予定です。
金融庁はこれまでBitgetに対して無登録で日本居住者向けに暗号資産交換業を行っているとして警告を出しており、2025年には日本のアプリストアから同社アプリが削除されていました。今回、既存利用者の取引停止まで踏み込んだことで、日本の規制対応が海外取引所の事業運営そのものへ影響する段階に進んだことが分かります。
Bybitなどでも日本向けサービスを縮小する動きが進んでおり、海外取引所を利用する国内ユーザーにとっては、取扱銘柄や手数料だけでなく、日本での登録状況やサービス継続性を確認する重要性が高まっています。

ローソンの既存POSでJPYC決済を実証
HashPortは8月6日、ローソン、KDDIと連携し、ローソン高輪ゲートウェイシティ店で日本円建てステーブルコイン「JPYC」を利用した店頭決済の実証実験を実施したと発表しました。
利用者は「HashPort Wallet」に表示したバーコードをレジで提示し、ローソンの既存POSシステムを通じて支払いを行います。専用端末やステーブルコイン専用のQRコードを追加するのではなく、普段利用されている店舗決済の仕組みに接続した点が特徴です。
実証では、バーコード提示から2〜3秒程度で決済が完了し、レシートにも支払い方法として「ステーブルコイン」と表示されました。一方、ウォレット上で決済承認が必要になるなど、一般的なコード決済より操作が増える部分もあり、商用化に向けては操作性や返金、通信障害時の対応などを含む店舗運用全体の整備が必要になります。
ローソンでは8月17日にもネットスターズと連携し、USDC、USDT、JPYCを既存POSで利用する別方式の実証を予定しています。ステーブルコイン決済の検証は、単にブロックチェーン上で送金できるかではなく、既存の小売インフラへどこまで自然に組み込めるかを確認する段階へ進んでいます。

Western Union、送金後の資金をVisa決済へ接続
国際送金大手Western Unionは8月4日、ステーブルコイン決済インフラ企業Rainと提携し、デジタルウォレットとVisaカードを組み合わせた「Stablecard by Western Union」を開始しました。
利用者はWestern Unionからの送金を米ドル建てステーブルコイン「USDPT」で受け取り、その残高をVisa加盟店での買い物やオンライン決済、ATMでの現金引き出しに利用できます。サービスはアルゼンチン、コロンビア、メキシコ、フィリピンなどを含む37市場で開始され、2026年末までに60市場超への拡大が計画されています。
従来の国際送金では、受取人に資金が届いた時点で送金会社の役割はほぼ完了していました。Stablecardでは、送金後も米ドル建て資産として保有し、そのままVisaの決済網で使えるため、Western Unionは送金だけでなく、その後の資産保有や消費までサービス領域を広げることになります。
特に現地通貨のインフレや価格変動が大きい地域では、海外から受け取った資金をすぐ現地通貨へ交換せず、ドル建てで保有したい需要があります。世界的な送金網とVisaの加盟店網をステーブルコインで接続する今回の取り組みは、デジタル資産を日常的な金融サービスへ組み込む動きとして注目されます。

Visa Directにステーブルコイン送金網を統合
Visaは8月5日、リアルタイム送金ネットワーク「Visa Direct」でステーブルコインによる送金と事前資金供給に対応すると発表しました。デジタル資産インフラを手掛けるzerohashが基盤を提供し、利用企業は受取人へのステーブルコイン送金に加え、支払いに必要な資金をあらかじめ確保する「Merchant Prefunding」にもステーブルコインを活用できるようになります。
Visa Directは195以上の国・地域で180億以上の送金先につながるネットワークです。今回の連携では、新たな暗号資産専用の送金網を構築するのではなく、既存の国際送金インフラの内部にオンチェーンの資金移動を組み込む点が特徴となります。
企業にとってステーブルコインの利点は、送金速度だけではありません。24時間移転できる資産を事前資金供給に利用できれば、複数地域へあらかじめ資金を置いておく必要性を抑え、財務部門の流動性管理を効率化できる可能性があります。ステーブルコインを企業送金や資金管理の基盤として利用する流れがどこまで定着するかが、今後の焦点となります。
ステーブルコインは既存金融・決済網へ組み込む段階に
今週のニュースからは、ステーブルコインの競争軸が「発行できるか」「送金できるか」という段階から、既存の金融・決済インフラの中で実際に利用できるかへ移りつつあることが読み取れます。
Visaは国際送金と企業の資金管理、Western Unionは海外送金後の保有と消費、国内ではローソンがコンビニのPOS決済へステーブルコインを接続しました。いずれもブロックチェーンだけで新しい経済圏を構築するのではなく、既存の送金網、カードネットワーク、店舗POSと接続することで利用範囲を広げようとしています。
一方、Bitgetの日本向けサービス終了は、Web3サービスの普及において技術や利用者数だけでなく、各国の規制に対応できる事業体制が重要になっていることを示しました。
ステーブルコインの実用化が進むほど、金融機関や決済事業者、店舗など既存産業との接点は増えていきます。同時に、規制対応や利用者保護、返金・精算といった従来の金融サービスと同等の運用体制も求められます。今後は、新しい技術を導入したかどうかではなく、既存のサービスに違和感なく組み込み、継続的な利用へつなげられるかがWeb3事業の重要な競争軸になりそうです。

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