
金融規制の知見をステーブルコイン決済基盤へ
株式会社finojectは10月8日、AltX Research株式会社が開発を進めるステーブルコイン決済インフラ「MIZUHIKI: The Japan Chain」とビジョンパートナー契約を締結したと発表しました。金融規制対応やAML/CFT(マネーロンダリング・テロ資金供与対策)の知見を活用し、ステーブルコイン発行体や決済事業者が共通利用できるコンプライアンス基盤の高度化を目指します。
両社は、本人確認や取引モニタリング、トラベルルールへの対応などの設計を共同で検討します。協業の範囲は決済サービスの展開、自治体向けデジタル給付基盤の商用化、新規事業創出にも及び、finojectは国内外の金融・決済事業者との関係を通じて、加盟店や事業パートナーの開拓を支援する方針です。
メインネット稼働を経て、決済サービスの展開へ
MIZUHIKIは、旧名称「Japan Smart Chain」として開発されてきたイーサリアム互換のL1ブロックチェーンです。AltX Researchは2026年5月22日に名称変更を公表し、9月28日にはステーブルコイン決済インフラ事業への転換とメインネットの稼働を発表しました。ブロックチェーンと決済サービスを一体で提供する方針で、今回の提携は、その事業展開に金融規制とAML実務の専門知識を取り込む動きとなります。
同社が展開するPSP(決済サービスプロバイダー)は、利用者がステーブルコインで支払い、加盟店が日本円で売上代金を受け取る仕組みです。USDC、USDT、JPYCなどをホワイトリストで管理し、加盟店には月次で日本円を送金すると説明しています。100万円以上の高額取引や越境購買、訪日客の消費を主な用途に想定しており、加盟店が支払いに使われたステーブルコインを保有・管理する負担を抑える設計です。
こうした決済では、支払いの処理と並行して、本人確認や不正取引の監視を関係事業者の業務へ組み込む必要があります。AltX ResearchはMIZUHIKIの基盤側にKYCやAMLなどの機能を備えると説明しており、両社はその設計をさらに検討します。決済を担う技術と、事業者が対応すべき確認・監視業務をどう結び付けるかが、協業の中心となります。
2度のAML実証と共同センター構想が協業の背景に
finojectは、2025年2月から4月に日立製作所、NTT Digital、野村ホールディングスなどと連携し、デジタル資産取引のAML実証に参加しました。取引モニタリングにおける情報共有や分析の共同化を検証し、同社は実験設計と評価結果の分析を担当すると発表していました。続く2026年3月から5月には、金融庁の「FinTech実証実験ハブ」の支援案件として、第2回実証が行われています。
金融庁が7月24日に公表した結果では、疑わしいアドレスや取引情報、リスクスコアなどの共有によって、個社では把握しにくいリスクの兆候を業界横断で活用できる可能性が確認されました。一方、検知結果から取引制限や凍結などを判断する際には追加調査が必要となる場合があり、情報の正確性、権限管理、異議申立てへの対応なども課題として整理されています。検知機能の共同化と、各事業者の責任に基づく調査・判断をつなぐ運用体制が求められる結果でした。
これを受け、finojectは7月30日、日立製作所とAML共同センターの運営体制の具体化に向けた検討を始めると発表しました。モニタリングシステムに人的な調査・報告支援を組み合わせる構想で、同社は実証の企画・運営や規制面からの助言、参加事業者との調整などを担ってきたとしています。今回の提携では、こうした実証で得た知見をMIZUHIKI上のコンプライアンス設計に活用する方針です。
自治体給付や証券決済への展開も視野
決済サービスと並ぶ協業領域が、マイナンバーカードのみで給付金を受け取り、利用できる自治体向け基盤です。関連するPoCは複数自治体で採択済みで、両社は商用化に向けて自治体や地域金融機関を含む事業体制の構築を進めるとしています。また、金融機関や企業との接点を活用し、セキュリティトークンとステーブルコインを同時に受け渡すDvP決済や、法人間決済などの新規事業も検討します。
一連の経緯から見ると、今回の提携は、業界横断で検証してきたAMLの知見を、具体的な決済・給付サービスの設計へ活用する取り組みと捉えられます。用途ごとに関係事業者や確認すべき情報が異なるため、今後は共通基盤を各サービスの運用にどう組み込み、加盟店や自治体での利用につなげるかが注目されます。
公式発表:finoject PR TIMES

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