WEB3業界動向

JSCが「MIZUHIKI」に改称 ステーブルコイン決済と自治体給付へ事業拡大

サムネ


メインネット公開を機に、決済まで担う構想へ

ブロックチェーン基盤を開発するAltX Researchは2026年9月28日、「Japan Smart Chain(JSC)」を「MIZUHIKI: The Japan Chain」へ改称し、ステーブルコインの発行・決済インフラと決済代行サービス(PSP)を一体で展開すると発表しました。メインネットの公開に合わせ、複数の自治体で給付金基盤の実証も進めます。名称変更を機に、チェーンの開発から、その上で動く決済サービスまで事業領域を広げる方針です。

JSCは2024年11月、日本の規制やデータ管理を意識した、イーサリアム互換のレイヤー1として構想が公表されました。2025年8月にはテストネット「Kaigan」と、本人確認や規制対応を支援する「Mizuhikiスイート」のデモを公開しています。その後、KDDI、決済・収納代行を手がける電算システム、米GMO-Z.com Trust Companyなどとビジョンパートナー契約を結びました。従来は機能群に使っていた「MIZUHIKI」をチェーン全体の名称に採用した経緯からも、規制対応を事業の中心に据える姿勢が読み取れます。

新たな基盤について、同社は取引が1秒未満で確定し、利用料をステーブルコインで支払えると説明しています。KYC(本人確認)やAML(マネーロンダリング対策)に関わる機能も基盤に組み込み、発行体にはオンチェーン取引手数料の一部を還元する設計です。発行体にとっては、対応するチェーン上での流通量が収益にもつながる仕組みとなります。


発行が進む市場で、利用先と精算経路をつなぐ

日本では2023年6月に、法定通貨の価値と連動する一定のステーブルコインを「電子決済手段」として扱う制度が始まりました。その仲介などを国内で業として行う場合には、業務に応じて資金決済法や銀行法に基づく登録が必要です。ブロックチェーン上で通貨を発行・移転できても、利用者の確認から加盟店への精算までを商取引として運用するには、別の仕組みが求められます。

円建ての発行も具体化しています。SBI新生信託銀行は2026年6月、信託型ステーブルコイン「JPYSC」の先行提供を始め、同月末時点の発行価額は約100億円と公表しました。ただし、先行提供はSBI VCトレードの口座内に限定されています。発行規模と、外部の店舗やサービスで使える範囲は分けて見る必要があります。三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行も、3行が共同で進めるステーブルコインについて、2026年度中の実取引開始を目指しています。

こうした動きのなか、MIZUHIKIが狙うのは複数の通貨を受け入れ、支払いを円での精算につなぐ役割です。AltX Researchが示すPSPでは、顧客がホワイトリスト方式で認められたUSDC、USDT、JPYCなどで支払い、加盟店は月次で日本円を受け取ります。加盟店が決済代金をステーブルコインのまま保有せずに済む設計は、既存の経理業務への導入を考えるうえで重要です。


高額・越境決済で問われる使い勝手

同社は100万円以上の高額取引、越境購買、訪日外国人による消費を主な対象に挙げています。海外の顧客が高額の商品を購入する際には、カードの利用限度額や決済の否決、為替コストなどが障壁になり得ます。MIZUHIKIは、ステーブルコインによる支払いと加盟店への円での精算を組み合わせ、そうした取引を取り込もうとしています。

国内では2026年2月、デジタルガレージ、JCB、りそなホールディングス、マイナウォレットが、USDCとJPYCを使う実店舗決済を検証しました。店舗が最終的に円で売上を受け取るモデルを想定し、支払い画面から決済後の業務までを対象とした実証です。JPYCもTISと決済支援サービスへの組み込みを検討しています。MIZUHIKIは専用L1と規制対応機能、PSPを一体で構築する方針ですが、加盟店にとってはチェーンの性能に加え、支払いの受け付けから円の入金まで安定して運用できるかが導入の焦点になります。


飯塚市での採択、給付金基盤の実証へ

決済の用途は商取引に限りません。AltX Researchは、マイナンバーカードを用いてステーブルコインの給付金を受け取り、利用できる基盤も構想しています。福岡県飯塚市は2026年度の先端情報技術実証実験サポート事業で、同社の「マイナンバーカードおよびSCを活用した給付金基盤事業」を採択しました。同社は複数の自治体で実証を進め、年度内の概念実証完了を目指すとしています。

給付では、対象者の確認から受け取り、利用までを住民が使える形につなげる必要があります。飯塚市での取り組みは、本人確認を備えたチェーンという構想が行政の手続きにどこまで適合するかを確かめる機会になります。

MIZUHIKIは、発行体向けの基盤、店舗での支払い、自治体の給付という異なる用途を掲げました。今後は、自治体実証の結果に加え、対応する発行体や決済事業者、加盟店との接続がどこまで進むかが注目されます。メインネット上の仕組みを実際の円精算や給付業務へ結びつけられるかが、事業転換の成果を左右しそうです。


公式発表:AltX Research PR TIMES

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