
発行開始から約半年、専用アプリで一般申し込みへ
シンガポールに本社を置くSLASH VISION PTE. LTD.(以下、Slash Vision)は10月15日、スマートフォン向け「Slash App」の正式リリースに合わせ、米ドル連動型ステーブルコインUSDCを決済原資とする「Slash Card」の一般申し込みを開始したと発表しました。事前登録サイトは終了し、18歳以上の日本在住者は、iOS・Android対応のアプリでアカウント作成と本人確認を行い、カードを申し込めるようになりました。
同カードは2025年6月から事前申し込みを受け付け、2026年4月20日に発行を開始しました。4月の発表では8月をめどに一般向けの受け付けへ移行する計画を示していましたが、専用アプリの公開に合わせて事前登録制を終了しました。発行開始から約半年を経て、申し込み窓口の拡大と利用機能のアプリへの集約を進めた形です。
USDCを取得する環境から、買い物に使う環境へ
国内では、SBI VCトレードが2025年3月26日にUSDCの一般向け取り扱いを開始し、日本円で売買できるサービスを提供しました。Slash Cardの一般公開は、こうした取得手段の整備に続き、保有するUSDCを日常の支払いに使う機会を広げる動きと位置付けられます。
決済では、利用者がチャージしたUSDCを原資とし、国内外のVisa加盟店には日本円などの法定通貨で代金が支払われます。利用者自身が支払いのたびにUSDCを法定通貨へ交換する操作は不要で、店舗側も通常のカード取引と同様に代金を受け取ります。既存のVisa決済網を利用することで、ステーブルコインを直接受け付ける店舗に利用先を限らず、買い物に使える仕組みです。

資産管理とカード操作を集約、本人確認も拡充
Slash Appは、利用者自身が資産を管理するセルフカストディウォレットと、カードの申し込み・決済履歴の確認などの機能を統合しています。ステーブルコインの保管・送受金からUSDCのチャージ、カード管理までを同じアプリで扱う構成で、日本法人のSlash Vision Japanが開発・運営を担当します。
申し込み時の本人確認は、従来のマイナンバーカードに加えて運転免許証にも対応しました。これにより、マイナンバーカードを持たない人も申し込めるようになり、本人確認書類の面でも利用対象が広がりました。利用開始後の操作についても、顔認証・指紋認証によるログインを導入し、アプリ起動時などのパスワードやPINの入力を生体認証で代替できるようにしています。
発行・維持費用を設定、特典で継続利用を促す
カードは実店舗向けの物理カードと、オンライン決済向けのバーチャルカードを用意しています。公式サイトによると、発行費用は物理カードが通常70 USDC、バーチャルカードが20 USDCで、物理カードには期間限定で35 USDCとなるアプリ配信記念価格を設定しています。年会費はいずれも初年度無料、2年目以降は20 USDCです。USDCの対応ネットワークにはEthereumとSolanaを掲載し、Base、Arbitrum、HyperEVMなどを追加予定としています。
利用促進策としては、紹介された人がカードを発行して初回決済を完了すると、紹介者に1人当たり10ドル相当を付与する制度を導入しました。紹介者の当月カード利用額が500ドル以上の場合は、月10人を上限に1人当たり10ドル相当を追加する仕組みで、紹介先と紹介者双方の決済利用に報酬条件を結び付けています。
今後はVirtual・Normal・Premiumのカードランク制度を設け、サブスクリプションへの加入やレンディング額などに応じた特典も計画しています。Premiumでは最大1.5%のキャッシュバックを予定しており、同社は特典内容や還元率が変更される可能性があるとしています。
銀行連携で視野に入る、日本円から支払いまでの接続
日常決済への利用を広げるうえでは、USDCを取得してチャージするまでの使いやすさも重要になります。Slash Visionとみんなの銀行は2026年6月12日、ステーブルコイン決済ソリューションの共同開発に向けた基本合意を発表しました。みんなの銀行のBaaS基盤を活用し、Slash Appに日本円の入出金などの銀行機能を組み込む方針で、将来的には日本円とUSDCを交換する機能も構想しています。
一般公開で申し込みの入口が広がったことに続き、この銀行連携は、USDCをこれから取得する利用者への展開を考えるうえで注目されます。日本円の入金、USDCの取得、カード決済までの手順がどうつながり、どの程度の費用で利用できるようになるかが、サービスの使いやすさを左右しそうです。

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