
無料のAI支援機能を対象ユーザーへ段階展開
暗号資産取引所を運営するBinanceは10月12日、利用者の経験や保有資産に合わせて市場情報を整理する「Binance AI」を正式に紹介し、対象ユーザーへの段階的な展開を発表しました。利用料金は無料で、Binanceアプリとウェブサイトを通じて提供されます。The Blockによると、世界の英語ユーザー向けに提供が広がり、他の言語への対応も順次進められています。
初心者には簡潔な説明や操作案内を、経験豊富な利用者には詳しい市場データや商品別の情報を表示する設計で、アプリでは最新版への更新を案内しています。製品担当バイスプレジデントのJeff Li氏は、市場が複雑化する一方、それを理解するツールは使いやすくなるべきだと説明しており、取引経験に応じて情報を読み解く負担を軽減する狙いがあります。
損益と値動きの背景を同じ画面で確認
中核となる「生成UI」は、利用者の関心や保有資産に応じて表示内容や配置を調整する仕組みです。前日の損益をまとめる「Yesterday’s PNL」は主要保有資産に関する出来事を併せて示し、「Top movers」は保有銘柄の24時間の値動きとAIによる分析を表示します。追跡対象の資産に変動があった際には音声アラートでも通知し、画面を見続けずに動きを把握できるよう支援します。
市場動向を文章や音声で伝える「Market brief」は4時間ごとに更新され、初めて開く商品ページなどでは「Smart tooltips」が内容や操作を説明します。表示するウィジェットは利用者自身でも変更できるため、AIによる個別最適化と、自分で必要な情報を選ぶ操作を組み合わせられます。損益、関連ニュース、商品説明を取引画面に集約する構成は、情報を探す手間を減らし、価格変動の背景を理解しやすくする取り組みと捉えられます。
約15万人の試用から先行提供、世界展開へ
Binanceは9月7日、本人確認済みの利用者を対象に、人数を限定したベータテストへの参加募集を発表しました。希望者が申し込み、選定された利用者に案内を送る方式で、The BlockはBinance広報担当者への取材に基づき、約15万人が試用したと報じています。その後、10月5日にニュージーランドの対象ユーザー向けに提供を開始し、世界へ順次広げる方針を示していました。
同日には、共同CEOのRichard Teng氏とJeff Li氏がAI製品群「Binance Intelligence」も紹介しています。市場情報の理解を支援するBinance AI、自然言語の指示から取引ワークフローを構築するBinance AI Pro、AIエージェントを市場データや取引機能へ接続する開発者向けのAgent OSで構成されます。10月12日の提供拡大は、この製品群のうち一般利用者向けの機能を広げる動きに当たります。
市場分析と操作の自動化、他社もAI活用を推進
利用者に合わせて市場情報を整理する取り組みは、他社にも見られます。AWSが公開したCrypto.comの導入事例では、生成AIを使って25以上の言語の暗号資産ニュースを収集・分析し、市場の強気・弱気といったセンチメントを把握する仕組みを紹介しています。取引経験やウォレット内の銘柄に合わせた情報提供も説明されており、利用者との関連性を重視した市場分析という点でBinance AIと共通しています。
一方、Coinbaseは2024年11月、AIエージェントに送金やトークン交換などのオンチェーン操作を行わせる開発基盤「AgentKit」を発表しました。これらの事例からは、市場情報の分析と、資産に関わる操作の自動化という二つの方向でAI活用が進んでいることが分かります。Binanceは両方を自社の製品群に取り込んでおり、Binance AIの展開は、取引所が利用者に提供する支援を情報の理解へ広げる動きとして位置付けられます。
AI Proの展開で問われる利便性と利用者の管理
次の展開となるAI Proについて、Binanceは10月5日時点で今後数週間での提供を予定していました。自然言語で作成したワークフローを模擬取引で試し、利用者の確認・承認を経て実行する設計で、設定した権限や予算、リスク上限の範囲内で、承認済みサブアカウントの資金を使うと説明しています。用途が情報収集から取引操作へ広がるにつれ、利用者が実行内容を理解し、管理できる仕組みの重要性も増すと考えられます。
また、BinanceはAIの出力に誤りや偏り、古い情報が含まれる可能性を示し、出力だけに依存した意思決定を避けるよう求めています。今後は対応言語の拡大とともに、情報の更新時点や参照先を確認しやすい設計が、継続的な利用を支える要素になりそうです。情報収集を効率化しながら、利用者自身が内容を確かめて判断できる環境をどう整えるかが注目されます。
公式発表:Binance

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